第12話 やんなるね、まったく
ゴブリンどもの死体が、トロールに吸い込まれていく。
土に染み込んでいた血も逆回転するかのように空中に浮かび上がり、トロールに向かう。
どこから湧いたかと思っていたが、俺が斬り伏せたゴブリンを生贄にした召喚、といったところか。
戦術も何もなく、殺されるための特攻を繰り返していたのは、こういうわけか。
まぁいい、何が出たところで倒さなければいけないことには変わりがない。
ゴブリンでは試し切りに物足りないと思っていた所だ。
もう一つ試したいこともあったし、ちょうどいい。
「ウゴァアアアアアアアアアアアア!!!!!」
ゴブリンどもを吸収し尽くしたトロールが、再度雄叫びをあげ突っ込んで来る。
一足で間合いを詰めると、振りかぶった棍棒を勢いよく振り下ろす。
巨体の割には速い……が、
「はっ!」
対応できないほどではない。
棍棒が俺に届く前に一気に踏み込み、左脇腹を横薙ぎに切り裂く。
胴あり一本! なんてな。
向こうの勢いも合わさって、結構深くまで入った。
アダマンタイト製のこのカタナでなければ、手首を痛めていたことだろう。
ふぅ、しかし。
もうちょっと期待していたんだが、それほどでもなかっ――
「ウグォアアアァ!!!!」
深手を追わせたはずのトロールの雄叫びが響く。
「っっ!」
慌てて振り向くと、切り裂かれた腹からダクダクと青い血を流しながら、右手に持った棍棒を振り下ろす所が見えた。
まさかあのダメージで動けるとは思わなかったが、さすがにノロい。
もともとのスピードですら余裕でかわせたのだ、不意をつかれたとはいえ、こんな攻撃を食らうわけがない。
ガグォオオオン!!
力任せの攻撃が地面を穿つ。
インパクトの瞬間に一瞬足を浮かせ振動を逃し、そのまま
「ふんっ!」
骨を断つわずかな手応えがあるものの、攻撃直後の腕が伸び切った所にきっちり関節を狙って斬ったのであっけなく斬り落とせた。
ズゥゥゥゥン……
現れた時と同じような大きな音をたてて、トロールが倒れる。
ふぅ、ゴブリンどもよりは手応えがあったとは言え、スキルと装備であっさりと終わってしまったな。
……しかし、ここまでの切れ味だとは……。
スキル作成スキルもそうだが、装備も十分チートだな……。
さて、あとは残ったゴブリンどもを一掃したら、終わりだな。
「ウグォアアアァ!!!!」
……は?
三度起こった咆哮に一瞬思考が停止する。
その『間』は戦いにおいて命とりとなる。
ドッゴォォォオオン!!!
「ぐっ!」
咄嗟に前へ飛んだが、振り回された棍棒がわずかに背に当たり、思いっきり当たりふっとばされてしまう。
おい、嘘だろ……。
なんとか起き上がって見たのは、切り落とされた右腕を切断面に押し付けている所だった。
ぐりぐり、とねじ込むようにしたかと思えば、その断面同士がボコボコと膨れ上がり……くっついた……!
『トロールってのはさー。
大体どのゲームでもやたら体力あるし、おまけに再生能力があって厄介なんだよなー』
唐突に蘇る、我が親友の言葉。
体力と再生能力……か。
よく見ると、最初に斬った腹もくっついているし……存分に試し切りしろ、ってか?
はぁ、やんなるね、まったく。
◇
「はっ!」
ザンッ!!
何度目かの斬撃がきれいに決まる。
が、その傷もしばらくしたら消えてなくなる。
体力があるとはいえ、あの巨体を維持し繰り返し再生を行っている以上、向こうも消耗はしている。
最初の頃のスピードはなくなってきた。
だが、それはこちらも同じだ。
いくら切れ味が落ちない武器を持っていて、普通には傷がつかない硬度の鎧を着ているとはいえ。
何度斬りつけても再生していく化け物を相手にして、消耗しないはずがない。
なにより初の実践なんだ。
精神的にもキツイ。
それにしても、まさかここまで再生能力がめんどくさいとは思わなかった。
ただ、その再生能力も、無尽蔵に無制限に回復するわけではないらしい。
ある程度大きなダメージを食らうたびに、周りで様子を伺っているゴブリンを吸収しているのだ。
再生するのにも
そして、今、最後のゴブリンが吸収された。
もうこれ以上『電池』はなくなったのだ。
さっき作った新しいスキル『二刀』で、存分に切り刻んでやろう。
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作成済みスキル
『二刀』熟練度0 消費SP5
:刀を二本同時に使うことへの理解が進み、扱いがうまくなっていくスキル
消費SPは一振りごとに1回分を消費する。連撃(振り下ろした反動を利用しての逆薙ぎ、など)は1回とカウント。
※上位スキルを使う場合は、下位スキルのSP消費は起こらない(熟練度は上がる)
二刀>カタナ>刃
ゃ ぱばだざがんわら✕✕✕✕✕さ✕あ
ゅ ぴびぢじぎ り みひ✕✕✕✕✕
ょ ✕ぶづずぐ るゆむふぬつすく✕
✕ ぺべでぜげ れ めへねてせけ✕
ー ぽぼどぞご をろよもほの✕そこお
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