第5話 俺が望む神の力は

今週木曜日あたりにもう1回更新できると思います!

来週からは、週1更新になります。


----------------------------------------------------------------------------------

「それで?

 あんたが欲しい神の力チートスキルって何なのよ?

 決まってるからあんな1文を追加させたんでしょう?」

「あ、ああ、そうだな…」


 ヤバイ、何も考えていなかった。

 こいつの裏を暴くためのカマかけのつもりだったのが、すんなり通ってしまったからな……。

 ……よし、あれでいくか。

 もしコレが通れば本当に裏がない可能性が出てくるし、試金石としてはいいだろう。

「俺が望む神の力チートスキルは――『スキルを作るスキル』だ」


「……なにその、

 『願いを一つ叶えてやろう』→『じゃあ、願いを100個にして!』

 みたいな答え。

 え、なに?

 『疑り深い慎重派』じゃなくて、ただ文句つけまくったらなんでも言うことを聞いてくれると思ってるクレーマーだったっての?」

「あー待て待て、そうじゃないそうじゃ」

「じゃあなんだってのよ?」

 ……どうでもいいがこいつ、最初の態度はどこいったんだ?

 まぁ、これが“素”だってことなんだろうけど。

「契約をした以上はな、ちゃんと討伐をしてやろうとは思うわけだ。

 その上で『何が必要か』って考えたわけなんだが……」

「わけだけど?」

「結論としては、全くわからん」

「はぁ??」

 まぁそうだよなぁ、そういう顔になるよなぁ。

「アホを見るような目で見るんじゃない」

「ような、じゃなくて、そのものよ。

 クレーマーじゃなくてただのアホだったのかと頭を抱えたい気分」

 ほんっと口が悪いなこいつ。


「ふぅ、浅はかだな、自称女神」

「自称じゃないっ!」

「あのな、今の状況を整理してみろ。

 俺はお前の頼みで、生まれも育ちもしていない異世界へ飛ばされて、その世界に生きる者たちが必死こいても倒せなさそうな、どんな生き物かもわからない魔王とやらを倒しに行かないといけないわけだ」

「それで?」

「ということはな?

 俺には、その『異世界の情報』も『魔王の情報』も一切ないんだよ」

「……だからなに?」

 腕組みして、指をトントン足をパタパタさせながら煽るのはやめれ。

 お前のほうがよほどクレーマーじゃないか。


「つまり。

 何の情報もないのに、何が必要かなんてわかるわけがないだろう?」

「……一理あるわね」

「だから、必要に応じて必要なスキルを用意するために、その場で新しいスキルを作る必要があるんだよ」

 こんなに1文で『必要』と言ったのは初めてだな。


「それで、『スキルを作るスキル』ね……。

 ふーむ……どうしたもんかなぁ……」

 なんて、よくこの短時間で適当な理由をでっち上げられたものだ。

 我ながらどうかと思うし、通らないだろう。

 ほら、『そんな馬鹿なことできるわけないでしょう?』って言ってみろ!


「しょうがないわね。

 契約してしまったし、というかそもそもそういうルールだし」

 は? まじか!?

「ただ、ちょっと制限をかけるわ」

 なるほど、そういう手で来たか。

「制限ね。

 結局そうやって俺の思い通りにはさせないってハラ――」

「違うわよ。

 一応念のため聞いておくけど、いつ使うかもわからないスキルを1京個以上作りたい、とかそういうんじゃないわよね?」

「一体どこの安○院さんだよ」

「なら……ああ、そうね。

 とりあえず体験してみなさい。

 なぜ制限をかけようとしているかがわかるから」

 は? なにをいって……


!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?


 なん……だ、これは……

 自称女神の言葉が終わるや否や、俺の頭に膨大な量の情報が流れ込んできた。

 情報というのは、あまりに大量に流れてくるとタダの暴力でしかない、ということがよくわかる。

 言葉、映像、音、匂い、触感……ありとあらゆる情報が、頭を、体を、駆け巡る。

 何も考えられない、いや、考えているのかもしれないが自分が認識できない……。

 一瞬にして『自分』が押し流されていく――


「っ!!!!

 はぁはぁはぁ……」

 尋常じゃない頭痛が襲ってくる。

 息が切れ、体に力が働かない。

 よく見ると全身汗でびっしょりだった。


「どう? わかったでしょ?

 言っておくけど今の1秒も経ってないからね?」

 なん、だと……!?

「スキルを作るってのはね、ありとあらゆる情報を分析・処理して創造するってことなの。

 本来、神にしかできないことをしようとする以上、同じレベルの情報処理が必要になるわけ。

 だから制限をかけるの。

 人間の器で使えるように。

 わかった?」

 先程の後遺症で声を出すどころじゃなくなった俺は、ただ頷くしかなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る