第3話 見事なマッチポンプだ
本日、夜にもう1話公開予定です!
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そもそも、万が一こいつが本物の神さまだっていうなら、俺ら人間と同じ価値観なんて持ってないだろう。
ほぼ死にかけの人間を連れてきて助けてやる、って餌をちらつかせて面倒事を押し付けよう、ということか。
あのまま死なずに俺がここに(しかも無傷で)連れてこられているのが良い証拠だ。
……便利なコマ、って所が妥当なセンか。
ちっ、うちのクソオヤジどものこと思い出してしまったじゃないか……。
だが、そう考えるともらえる
雑用をさせるにしても一つじゃ達成出来ない場合だって想定できる。
それとも、よほど強力なスキルでももらえるんだろうか。
……いや、そんなに強力な力を与えるんだったら、神が出ようが出まいが『世界の均衡』とやらは崩れるだろう。
……待てよ?
それ以前に神が出ていかない理由からして、取ってつけた感満載だ。
魔王が出てきている時点ですでに『世界の均衡』は崩れているようなものだし、むしろ神が介入する大義名分としてコレほどぴったりなものはないんじゃないか?
転移者を送り込んだ時点で『自分たちの力で切り開く』でいいのか? という疑問もある。
以上を踏まえて矛盾のないよう自称神側に都合よく考えるとすれば……
転移者1人では倒せないくらいの|絶妙な«・・・»スキルを与え、そこに住む人間たちと力を合わせることでどうにか魔王を撃退させる。
単独では倒せない、ってことで均衡は崩れないと言えなくはないだろうし、共に手を取り合って戦ったことで自らの手で切り開いた、とも言える。
……なんだこの穴だらけの戦略は。
絶妙なスキルってなんだよ……偶然に頼り切った推理小説じゃあるまいし。
とすると、こいつの本当の狙いはなんだ?
裏に何がある??
転移者を送り込むことで、一体こいつらは何を得することがあるんだ……??
「……そうか! わかったぞ!
魔王を倒したら今度は俺が次の魔王とされて『討伐対象』とされるんだろう!?
魔王がいなければそれを倒す勇者も必要なくなるし、導くための神も不要になってしまう。
だからこそ
魔王の復活が『50年ぶり』というやたら短いターンなのもなるほど納得だ。
一つしか能力を授けないのだって、強力な力を与えすぎては魔王になった時に倒せなくなるからな。
なかなかうまいこと出来ているじゃないか。
普通だったら『不幸にして失われようとしている若い才能を別の世界で輝かせてみませんか?』なんて言えば二つ返事だろうし」
『光ある所に闇がある』とはよく言うが、裏を返せば『光があるためには闇が必要』ということでもある。
『魔王現れし時、神の使い(=勇者)が現れて世界を救うだろう』
なんて感じの伝承でも作っておけばより完璧だ。
神の威光はびっかびかで衰えない。
見事なマッチポンプだ。
「ああ、だからそんな痴女みたいな格好してるのか。
それっぽい理屈に加えて、半裸のエロい格好した女神さんに上目遣いかなんかで頼まれたら……まぁ断れないわな」
「ち、痴女!?!?
ちがいますううううう!!!! そんなんじゃないんですーーー!!!!
本当に、本当にただ世界を救って欲しいだけなんだもんーーー!!!」
反論出来ないと見るや、泣き落としが始まった。
そういうのは俺には通じないっての。
「泣き落とししようったってその手には乗らない。
俺は魔王を倒すのも、魔王になって倒されるのもゴメンだ。
悪いけど他をあたってくれ」
「そんなんじゃないもんーーーー!!!
びええええええええええええええええええええええええ」
……ちょ、これ、ガチ泣きか?!
いやいや、仮にこいつが本物の神さまだってんなら、こんなことでガチ泣きするなよ……。
これまでみんな素直にいう事聞いてたから対応に困ってる、のか……?
「あ、あの、な?」
「びええええええええええええええええええええええええええ」
うん、これ、だめなやつだ。
スーパーで駄々をこねているガキんちょよりタチ悪いんじゃないか?
◇
「…………だ…………の……起きて……」
ん……?
いかん、どうやら寝てしまっていたようだ。
……なんだこの白い空間は……??
……ああそうか、思い出した……夢ならよかったんだが……。
「あ、あの……起きました……??」
声に顔を向けると、自称神の泣き虫駄々っ子痴女がいた。
「……泣きやんだのか?」
「あ、はい、その、すみませんでした……」
まだ目は赤いが、とりあえずは落ち着いたようだな。
しかし、ここは時間の流れが全くわからんな。
「どのくらい寝てたんだろう」
「ばっちり8時間です……」
「そりゃ目覚めもスッキリしているわけだ」
「まさか、私が泣いているのを放って寝るとは思いませんでしたが……」
「ガン泣きしているのは放っておくに限るからな」
「……そうですか。
なんとなく、あなたという人がわかりました」
「それはよかった」
こっちもなんとなくわかったよ。
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