第2話 なるほど、ただの変質者か
「え、っと。
誰だか知らんが大丈夫か?
いきなり人の後ろに立つと危ないぞ?」
「あ、あなたは、どこぞのスナイパーですか!?」
よく見ると、なかなか美人な女だったようだ。
……が、ナンだあの格好。
どうみても水着(しかもだいぶきわどいビキニ)の上からスケスケのローブのようなものを羽織っていて――背中には大きめの羽!?
……あれは、生えてるのか?
いや、まさかな。
結論。
「突然声をかけてきたから蹴り飛ばしたが、相手は半裸の怪しいコスプレ女だったので問題なし、だな。
よし」
「『よし』じゃありませーん!!!
それになんですか『半裸のコスプレ女』って!?
私、神さまなんですよ!?!?」
思ったよりも元気よく立ち上がり喚き出したわけだが、
「……自称神を名乗る半裸のコスプレ女……なるほど、ただの変質者か。
トドメをさしておこう」
怪しさしか感じないので、ここで始末しておいた方が良さそうだ、と判断。
油断なく構えを取る。
「待って! 待って待って!!!!
あの、ほんと! ほんとだから! 私神さまだから!!!
ほら!!」
言うなり、目の前で羽を羽ばたかせて飛び上がった。
……おお。
「ただの変質者ではないということはわかった」
神さまかどうかはひとまず置いておくとして、とりあえず普通の状況ではないのは間違いないようだ。
「で、その自称神さまが出てきて、俺になんの用だ?」
そういえば『死ぬところだった』とか言っていた気がしなくもないが。
そりゃそうか。
あんだけ刺されたんだから、普通は死んでいてもおかしくない。
というか……じゃあ、なんで俺はこんなよくわからない所で元気そうにしてるんだ?」
「自称、じゃなくて、本当なんだけどなぁ……」
「ん? 何か?」
「なんでもないですっ!」
変なやつだ。
まぁいい。
「で、ほら、話を聞いてやるから話せ」
「あ、はい。
えっとですね。
薄々わかってらっしゃるとは思いますが、あなたはあと少しで死ぬ所でした。
原因は――」
めった刺しによる出血多量、もしくは臓器の損傷によるもの、あたりか。
「ええ、
あなたは生まれ育った環境によってその容姿と能力を手に入れましたが、逆にそのせいで周囲に受け入れられなかった、と言えるでしょう。
その結果が『アレ』です」
ふむ、なるほど。
言い得て妙、ではあるが、
「誰がそんなウマイことを言えと」
「あ、いえ、そんなつもりはないんですが……」
照れるな、褒めてないから。
「おほん。
それでですね。
我々神としても、そのあなたの力をみすみす失ってしまうのは惜しい、と思っているのです。
どうでしょう。
別の世界で、その力を存分に発揮してみませんか?」
「『別の世界』??」
「そうです。
単純に言ってしまえば――死に瀕している世界を救ってみませんか?」
我が友人どのによると、中高生に人気の小説ジャンルに『異世界転生・転移モノ』というのがあるらしい。
何かのきっかけで死んだ主人公が、今まで暮らしていた世界とは別の世界に行って大活躍する話、なんだとか。
大抵は転生と同時に
確かに、物語ならばそういうのもありだろう。
うだつの上がらない主人公が一念発起して新たな人生を謳歌する、というのは娯楽としては正しい。
ハーレムは男のロマンだし、ちょっとエッチなのも中高生男子の大好物だ。
だが。
「何が狙いだ?」
そんなうまい話が世の中あってたまるか。
絶対裏がある。
「『狙い』ですか?
ああ、世界を救うために何をするか、ということですかね?」
「違う。
我が友人によると、お約束の異世界転生・転移モノではこのあと
で、魔王とやらを倒せ、という。
そういう話なんだと予想するが」
「『お約束』というのは知りませんが、よくわかりましたね。
あなたを向かわせようとしている世界では、50年ぶりに復活した魔王によって魔物が跳梁跋扈する世界となっています。
その地に住むあらゆる生物が手に手を取って反撃をしかけていますが、はっきりいって状況は芳しくありません。
いくつかある神の力のうち一つをあなたに授けますので、それ力を使い、勇者として魔王を倒し世界を救ってほしいのです」
「いや、だからそういう台本通りの話じゃなくてな。
『魔王を倒す』
世界を救うなんて曖昧な話、後から『魔王を倒すだけでは足りないので』とか言ってあれやこれや雑用をさせまくられるんじゃないか?
そもそも、一つだけ神の力を授けた程度で倒せる魔王なら自称神であるあんたがやればパッと終わるんじゃないか?」
「わ、私が――『神』が出ていって救ってしまっては、世界の均衡が崩れてしまうのです。
『自分たちの力で切り開く』ということが、大事なんですっ!!!」
俺のツッコミに必死で反論を返してくるが。
怪しすぎる。
これはやはり、何か裏があると見て間違いない。
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