第7話 ドライアドは親友に会いたい。
放課後の教室に、少し空いた窓の隙間から吹いた春風がセフィさんの若葉色の髪を静かに揺らす。
「へぇ……私はドライアド。今あなたの首をこのツルで締め潰す事くらい容易いのよ?」
そう言うセフィさんは身に纏うツルを俺の首に悪戯に絡ませる。
けれど、ここで引けない想いがある。願いたい、幸せがある。
「殺るなら殺れ。俺は絶対にシェアナを売るような真似はしない。文字通り、死んでもな」
そう呟く俺はまっすぐとセフィさんに目を向けた。
「……本気なのね」
ポツリと呟いたセフィさんは「ふぅ」と人はため息をついた。
「ま、合格ね」
「…………………は?」
その言葉と同時に俺の首に巻かれたツルは消滅した。
「試したのよ。あなたがシェアナに仇なす存在か否かをね……」
「なっ……はっ、えっ?」
混乱する俺に、セフィさんは不敵に笑う。
「改めて、私はドライアドのセフィ。シェアナの親友よ」
***
「シェアナ〜!!」
「セフィ!」
セフィとシェアナは本当に親友らしく、シェアナは多少困惑しているが、セフィとの再会は嬉しいようで笑っていた。
「どうして!? なんでセフィがいるの?」
「もちろん、シェアナに会うために決まってるじゃない!」
こいつマジか。
シェアナに会うためだけに異世界という途方もなく遠い場所から来たなんて……同士かよ。
「セフィさん、もう夜遅いし飯食ってくか?シェアナと積もる話もあるだろ」
「そうね、頂こうかしら。あと、セフィでいいわ」
「りょーかい、セフィ」
そんなやりとりをして、俺は制服から部屋着に着替え、キッチンへと向かった。
***
「ほら、出来たぞ。今日は春らしく筍の混ぜ込みご飯と鰆の塩焼き、ほうれん草の胡麻和えだ」
「うわぁ……!」
「ま、まあまあ美味しそうね」
セフィは半精霊という部類の種族らしく、日光さえ浴びていれば食事はいらないのだとか。
「それじゃ」
「「「いただきます(イタダキマス)」」」
「ん〜!!」
相変わらずシェアナは美味そうに食べてくれるので作る側としても嬉しい。
「……っ!」
セフィは無言で筍御飯をかき込んでいた。
そして、あっという間に茶碗の中が空になる。
「……おかわりいる?」
そう尋ねると、セフィは無言で頷いた。
***
「は〜、久しぶりの食事だったけど美味しかったわ」
「でしょ!? でしょ!? ソータのご飯は世界一なんだから!」
リビングでそんな話をしながら昔話をするセフィとシェアナ。
俺は洗い物が終わり、風呂を沸かす。時刻は21時を指していた。
「セフィ、どうする? 泊まってくか?」
「セフィ! 泊まってく!?」
明らかにシェアナが嬉しそうな顔をする。こんな顔されては……
「……お世話になろうかしらね」
こいつ、俺と似てるな。
そう思った瞬間だった。
ぴー、と湯が沸いた音がする。
「シェアナ、セフィ、先風呂入っていいぞ」
「一番風呂ー!」
そう言ってシェアナは風呂場へ駆け出していった。
「……? セフィは行かないのか?」
そこで立ち尽くすセフィに問いかけた。
「颯太、あなたが思っているよりシェアナは異世界(むこう)でも現実世界(こちら)でも希少な存在よ。絶対に守り通しなさい」
セフィは俺の目をまっすぐ見据え、そう語った。
「あぁ、命に代えても」
その言葉に答えるように、俺はそう答えた。
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