第5話 メドゥーサちゃんは学校に行きたい。②

「シェ、シェアナ……一緒の学校に行きたいってお前……」


「ずっと思ってた、ソータ学校行っちゃうと、ワタシ寂しい」


そう言ってくれるのはありがたいが、シェアナを学校に連れて行くとなるとそれなりの問題がある。


まず、シェアナは魔族と言うことだ。

異世界(むこう)では、魔族は悪とみなされていて差別の対象になると聞く。

それに今の時代、異世界からでも手続きを踏めばこっちの世界に来ることもできる。メドゥーサの魔眼や髪を手に入れたいと思う輩もいるかもしれない。


つまり、危険が多すぎるのだ。


けれどーーーー。


「シェアナ、学校にはヒューマンが少なからずいる。それに外にはシェアナの目や髪を狙う輩もいるかもしれない。それでも行きたいか?」


俺は真剣な眼差しで問う。

個人的にはシェアナが学校に行きたいと言う気持ちを尊重したい。が、それ以上にシェアナを失いたくない。


「うん、ワタシ、学校に行く。それで、イッパイ勉強して、ソータの役に立ちたい」


すると、シェアナは突然言語の指輪を外した。

《言語の指輪》というのは、異世界の言葉を日本語に変換する異世界と現実世界合同で開発した魔道具だ。


すぅ、と少し息を吸い込んで、シェアナは語り出す。


「ワ、ワタシはシェアナ、デス。ヨロしク、オネガイしマス」


お世辞でも上手いとは言えない片言の日本語。けれど、異世界出身者で、日本語を語れるのはどれだけいるだろう。

ましてや、教育をほとんど受けてこなかったシェアナはこのワンフレーズ習得するだけでもどれほど大変だっただろう。


「スキナ食べモノは、タマゴやき、ダケド、ソータ、のツクルモノはナンデモスキ、オイシイ」


そう言い終わると、シェアナは指輪をはめ直した。


「どう……だった? ちゃんと伝わった?」


そう問いかけてくるシェアナの努力、気持ちを考えるとどうしようもなく、胸が熱くなった。

そして気がついたら、シェアナを抱きしめていた。


「そ、ソータ?」


「バッチリだ……」


不思議と、目頭が熱くなる。

異世界(むこう)で迫害され、命を狙われ続けたシェアナ。そんな思いをして、辛いはずなのに、勇気を振り絞って一歩を踏み出そうとしている。


「学校、一緒に頑張ろうな」


俺がそう言ってシェアナの頭を撫でる。

するとシェアナは気持ちよさそうにして、


「うん!」


そう言って、今度は俺にハグをした。







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