第4話 メドゥーサちゃんは学校に行きたい。①

「今日は卵焼きを作るから和食の方が良いよな」


ブツブツとそんなことを呟きながら行きつけのスーパーで買い物をする。

エブリデイロープライスを売り文句にしているだけのことはあり、卵1パック50円の大特価だ。


シェアナが来たばかりの頃は食文化の違いに戸惑っていたが、すぐに慣れたようで、今では卵焼きがお気に入りだ。


献立を考えながら買い物カートを走らせているとちょうど海産物に目が止まる。


「ホッケか」


そこには『ホッケ二匹350円!!』と書かれていた。


久しくホッケを食べていなかった上、ホッケはちょうど春から夏にかけて旬だ。


俺はホッケを手に取りカートに入れる。

となれば付け合わせだ。


俺は大根、人参、豚肉、玉ねぎ等を買い物カートに入れ、スーパーを後にした。




***




「ただいまー……ってうおっ!」


玄関のドアを開けた瞬間にシェアナが飛びついてくる。これが異世界スキンシップ……!


「お帰りソータ!」


そんなシェアナの頭をポンポンと撫でる。


「靴脱ぐから離してくれ」


「うん」


少ししょんぼりするシェアナ。


「ほら、お前の好きな卵焼きを作るから、な?」


そう言うとシェアナは嬉しそうにピョンピョンと跳ねて機嫌を取り戻したようだ。


そして、1時間ほど経ってーーーー。


「今日はホッケのちゃんちゃん焼きと豚汁。それと卵焼き。シェアナのはいつも通り甘めだ」


卵焼きがあるのが嬉しいのか、シェアナはぴょんぴょん飛んで喜ぶ。


「ちゃんちゃん?」


「ちゃんちゃん焼きって言うのは北海道の郷土料理で野菜と魚を味噌で和えたもんだ」


「? ふーん」


おそらく分かっていないのだろうが頷くシェアナ。


「それじゃ」


「「いただきます(イタダキマス)」」


二人で手を合わせ、いただきますの挨拶をする。


「ん〜!!」


シェアナは大好物は先に食べるタイプで、口に運んだ卵焼きを頬張ると足をバタバタさせて興奮する。


その次に口に運ぶのは豚汁。これもシェアナのお気に入りだ。

豚汁の中には大根、人参、玉ねぎ、豚肉の他に里芋、レンコン。シェアナの要望で油揚げも入っている。


「ソータ……」


そんな時、シェアナが困ったような声を上げる。


「ん、あぁ、そうか」


ホッケだ。

シェアナは魚は好きだが、まだ経験が浅く、骨を取ったりするのはまだ苦手らしい。


「ほれ」


俺はシェアナのホッケを身と骨に分ける。


「これもつけてみ」


そう言って俺が手渡したのは大根おろし。


「これなに?」


「大根おろしって言ってこうやって食べる」


そう言うと俺は大根おろしに醤油を少しばかり垂らすとホッケと一緒に口に運ぶ。


すると、シェアナも俺の真似をして醤油を垂らし、ホッケと一緒に口に運ぶ。


「っ!!」


革命が起こったのか、シェアナは両手で頰を抑え、ニンマリする。


「ソータ」


「ん?」


「おいしーねぇ!」


そんなことを言って笑うもんだから1日の疲れも吹っ飛ぶってもんだ。


俺はそんなシェアナに笑って「そうだな」と返した。


「あ、そうだソータ!」


何かを思い出したように、シェアナが言う。



「ワタシ、ソータとおんなじ学校に行きたい!」



「ぶっ」


俺は盛大に豚汁を吹き出した。

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