第3話 転校生が来るらしい。

今日から新学期が始まるーーーー。


トントン、と靴を履きながら俺は見送るシェアナに話しかける。


「俺、学校行ってくるけどピンポン鳴っても無視でいいから」


シェアナは少し寂しそうに薄紅藤色の髪をくるくると弄る。


「じゃあ、いってきます」


そうつぶやいた瞬間に、服の袖が引っ張られる。


「シェアナ?」


「早く、帰ってきてね」


そんな事を上目遣いで言ってくるもんだから、俺は心の中で「もちろんですっ!」と敬礼をした。


そんなシェアナの頭を撫でる。


「今日はシェアナの好きな卵焼き作ってやるから、待ってて。直ぐ帰る」


そう言うと、シェアナは若干機嫌を取り戻したようで、口を尖らせながらも無言でコクリ、と頷いた。


「それじゃ、いってきます」


「いってらっしゃい、ソータ」


そう言って俺は家を出た。




***




俺の通う石見高校は異世界留学者の受け入れを行なっている数少ない高校の一つだ。

故に、学校には少なからず異世界からの留学生がいる。

異世界といっても、殆どが人間。異世界で言うならヒューマンだ。ヒューマン以外の種族もいるにはいるが、ヒューマンに比べたら圧倒的に少ない。具体例を挙げるならドワーフや獣人と言われる人種、エルフなんかもいる。


「よっ、颯太。また同じクラスだな」


クラス発表の名簿に目を通していると、後ろから話しかけられた。


「祐介、お前も一緒か」


「お前も?」


「お前も」と言ったフレーズを疑問に思い、祐介が俺に問いかける。


「じゃーん、俺も一緒でーす!」


そう言って影から出てきたのは俺のもう一人の友人である由伸だ。


吉村祐介、鈴木由伸、そして俺、山崎颯太がいつものメンバーだ。


「さて、かったるい始業式に向かいますかね」


祐介がそう言って、俺たちも始業式が行われる体育館へと向かった。




***




「えー、本日より新学期が始まる訳ですが、えー、我が校の生徒である自覚を持つと共に、えー、しっかりと勉学を、えー」


えー、えー、うるさい校長の話を聞きながら祐介があくびをする。


「そういえば今日異世界(むこう)から留学生がくるらしいぜ」


「へぇ」


「なんだよ颯太、興味ないのか?」


「別に」


「俺は興味ある!」


ヒソヒソと3人で話す留学生の話。

ちなみに俺がシェアナと同棲しているのは内緒だ。


「えー、オホン! ここで異世界からの留学生を紹介したいと思います」


おおぉ! と体育館中がどよめく。

校長の話など誰も覚えていないのでは? と言うくらいざわざわし始めた。


その中でも皆エルフを期待していた。

やはりエルフは男女ともに美しい容姿というイメージがついているのだろう。


「えー、静かに。それでは留学生のセフィさん、壇上へお願いします」


校長がそう言うと、ステージ脇から出てきたのは一人の女性。

その女性の周りには木のツルの様なものが纏われており、容姿、佇まい、雰囲気全てが気品に満ちている様だった。


「ご紹介に預かりました、私、ドライアドのセフィと申します。どうぞ、よろしくお願いしますね」


そう言って笑いかけるセフィさんと一瞬目があった気がした。


「おいっ、颯太! 今!俺! 目があったぞ!」


「俺も俺も!」


祐介と由伸バカ二人がそう言って俺の肩を揺らす。


きっと気のせいだな。


俺はそう思うことにした。







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