第2話 夢の中

「……様、……嶺様、秋嶺様……」


 誰かが俺の名前を読んでいる。

 ここはどこだろうか? 俺は体をお越し周りを見渡した。

 暗いな……見渡す限り暗闇が続いていた。

 今一状況が読めない……俺は確か電車の中で睡魔に襲われ意識を失ったはずだ。

 とりあえず考えても仕方がないと思い、動き出そうとした時だった。


「秋嶺様、聞こえてますか? 聞こえていたらお返事を」


 さきほどと同じ声が聞こえた。

 俺は返事をするべきかどうか迷ったが、今の状況について聞くため返事をすることにした。


「ここはどこなんだ?」

 

 俺は暗闇の中どこにいるか分からない声の主に向かって話しかけた。


「聞こえてて良かった……。ここは秋嶺様の夢の中でございます」


 夢の中? 信じられん、こんな意識のはっきりした夢があるかと思い顔をつねった。

 痛い……とりあえず現実として受け入れる事として口を開いた。


「ここがどこだかは分からんが、電車では何が起きたんだ? それと秋華は無事なのか?」


 すると、俺の質問にそいつは答えた。


「とりあえず、時間もないので手短にご説明致します。私、レストと申します以後お見知りおきください。電車での一件は私が引き起こしましたが、詳しい話は後程。秋華様はご無事でございます」


 うーん? 今の状況についてまとめてみようか。

 電車の一件についてはレストといったか? まぁこいつがどうやってか引き起こしたんだろう。

 そして俺は目が覚めたら夢なのか現実なのかわからない暗闇に一人、声が聞こえ返事を返しレストと名乗った声だけの主と会話をして今に至ると。

 やばい、混乱してきた。

 そんな俺を余所にレストは話し出した。


「秋嶺様、向こうに着いたら必ず今から言う場所に向かってください」


 次から次へとなんなんだ? それに向こうとはなんだ? 他にも聞きたいことがあるし、分からないことが多い。


「ちょっと待ってくれ! なんでお前は電車でのあれを引き起こしたんだ? それに向こうとはなんだ? しっかり説明してくれ!」


 俺は混乱する頭の中、早口で言った。

 レストは直ぐにそれに続いて


「時間がないので後でご説明します。とりあえず、私の話を聞いてください」


 時間がない? 何を言っているんだこいつは、それに後っていつだよ。

 なんかイライラしてきたな。

 そんな俺を見てかレストは言った。


「では、一つだけ答えましょう。電車での事は私が魔法で車両を転移させ、貴殿方二人に催眠魔法をかけこちらへお連れしました」


 魔法? 転移? やばいもっと分からなくなった。現実にそんなものはない有り得ないぞ、嘘をつくならもっとましなものにしろよ。

 

 そうして、色んなことを考えていた時、追い討ちをかけるように彼女は言った。


「秋嶺様、貴方はこの夢が覚めたら見たことのない所にいるはずです。そこは見渡す限り草原が広がっているはずです、そこから南に向かっていくと森林が見えてくるでしょう。そこに入りすぐの所の祠を目指してください。それと起きたらすぐ近くにペンダントが2つあるはずなので、それをもって来てください」


 一気に説明を受けた俺の頭は限界だった、もうなにも考えたくない。

 これは夢の中らしいからきっと起きたらいつものように秋華が起きて! とか言って俺は体をお越し、なんだ夢落ちか見たいな感じになるはずだ、考えることをやめよう。


「どう……お気を……てく……い。絶対……来…………い」


 と、最後に何か彼女は喋っていたが気にせず、俺はまた睡魔に襲われその場に倒れた。


 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「……ちゃん、……兄ちゃん、お兄ちゃん、起きてよ!」


 秋華の声が聞こえた。

 ほれ見たことかやっぱり夢落ちではないかと思い体を起こした。


「おはよう、秋華もう朝御飯か?」


 などと言って彼女を見た、泣いていた。

 俺はすぐに何故? と思ったがそれはすぐにわかることになる、そうここは電車の車両の中であった。


「お兄ちゃ……死んじゃ……と思った……何回呼んで……起きないんだもん……」


 秋華は鼻をすすりながら掠れた声で言った。

 俺は、心配させてしまったなと彼女の頭を撫で、あの電車での出来事は夢では無かったのかと再確認し窓の外を見た。


 そこには見渡す限り草原が広がっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る