Act20.沙絢のマンション Part3

「この中に千尋の髪が入っている。オレの血と混ぜ合わせて、芦屋って芸能記者が呪文を唱えて魔術だか呪術だかをやった。そしたら、千尋がオレの前に現れた。今度はオレから離れていくことはないと思った。千尋を自分だけの物にしたかったんだ……」


 小袋から視線を優風に移す。


「ゴメン……オレはこんな救いようのないクズなんだ。最低だろ?

 お前に愛想を尽かされても、文句は言えない」


 優風の頬を涙が伝う。


「ホンット、最低のクズだよッ。

 でもね、悔しいけど、アタシはそんなアンタが好きなんだよ!

 ホント、サイッテ―だよッ!」


 グスッと大きな音を立てて、優風は鼻をすすった。


「仕方ないから、アタシが先生に代わってアンタの面倒を見てやるよッ。

 だから、アタシだけの物になれよ、毅博」


「ありがとう……優風……」


 小岸は崩れるように膝をつき、優風にすがって泣き出した。


 刹那は二人の邪魔にならないよう、東雲に近づいた。


「シナリオの件ですが、監督の前で、先生がシナリオを書いたんですか?」


「いいや、いつも通り、データが送られてきただけだよ。ただ、内容は鮎瀬が書いた物で間違いないと思う」


「そうですか……」


 何かが引っかかるが、早く千尋を呪縛から解き放とう。


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