Act15.阿武隈川 Part3

 高尾がツアー会社に舞桜の体調不良による遅刻を謝罪し、早紀が彼女の代わりとして娑羯羅のコスプレをした永遠の参加を提案した。


 当然、担当の太田はいい顔をしなかったが、この手のトラブルは付き物だ。むしろ、都合よく刹那の妹が来たことに戸惑いつつも、早紀の提案を受けて入れた。


 そして、永遠は阿武隈川の辺を『鬼霊戦記福島巡礼ツアー』参加者に囲まれて、散策している。


「それじゃあさ、声優以外だったら何になるの? ブレーブだとやっぱアイドル? お姉さんに気を使って言えないの?」


「ブレーブには、やっぱりお姉ちゃんのコネで入ったの?」


 さらに突っ込んだ質問を、ニヤニヤしながら男たちはする。余計な事を言わず、上手くはぐらさなければならない。


「あの……」


「将来は、愛するお姉ちゃんのお嫁さんになります!

 それにブレーブには、大手のスカウトを断って仕方なく所属しています。大好きなお姉ちゃんがいるからですッ!」


 刹那が、自分を囲んでいたファンを振り切って割り込んできた。


 突然の登場に、永遠を質問攻めにしていた男たちも戸惑う。


「あ、そうっスか……」


 母鳥よろしく、永遠の前に立ちはだかる刹那に為す術なく、彼らは離れていった。


「姉さん、ごめんなさい」


「何の準備もしてないのに良くやってるわ。あたしの初参加のイベントのビデオを観たら、自分が天才だって気づくわよ」


 励ますように微笑む。


「で、なにか感じた?」


 永遠だけに聞こえる声で聞く。


「特に変わったモノは感じません」


「叔父さんが完全に浄化したんじゃない?」


 永遠は首を振った。


「残念ですけど、呪詛を解くまでは終わりません」


 これは昨日叔父から、しつこく注意された。鮎瀬千尋が現れなくとも油断するな、呪詛を解かない限り彼女は現れ続けると。


 現れて何をするのか、結果がわかってからでは遅いのだろう。


 刹那はガッカリしたように溜息を吐いた。


「ハァ、そう簡単にはいかないわよね。まぁ、鮎瀬先生は永遠を狙うことはないから、まずはタチの悪い客から身を守らないとね」


「はい……」


「あの~、刹那ちゃん、永遠ちゃん、郡山で何か美味しいモノ食べた?」


 別のツアー参加者が話しかけてきた、刹那が笑顔で答える。


永遠も笑顔を作って好きな食べ物を言った。

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