Act15.阿武隈川 Part1

 翌朝、御堂永遠は刹那たちとツアー参加者と共にくまがわほとりを散策していた。『鬼霊戦記 福島巡礼ツアー』は二日目も曇りのまま始まった。


 阿武隈川は、福島県から宮城県に向けて流れ、東北では北上川に次ぐ長さの川だ。


 永遠は周囲の気配を探ったが特に異常は無い。ただ、験力を使うので、普通は見えないモノが視えてしまう。


 験力の訓練を開始して一週間が過ぎた頃から、いないはずの人やモノが視え始めた。それまでも、何かの気配を感じる事はよくあったが、気のせいで済ませられるレベルだった。


 それが一月後になると、常に視えるようになってしまった。さらに訓練を重ね、験力を多少制御できるようになると、視えなくすることも可能になった。


 ただし、まだ大ざっぱなコントロールしか出来ないので、少しでも験力を使うと視えてしまう。そして、視えるモノには慣れない。


「永遠ちゃん、やっぱり、お姉ちゃんに憧れて声優になるの?」


「その衣装、暑くない?」


 ツアー参加者が話しかけてきた。この散策は、監督と声優に直接話せるというのがウリだ。人気の高い優風と小岸は常に人だかりが出来ている。


「あ、あの、その、せ、声優になるかは、まだわからないって言うか、決まっていません……

 着物は、わたし、暑さに強いので平気です……」


 永遠は娑羯羅のコスプレをさせられていた。なぜなら、島村舞桜の穴を埋めるため、急ごしらえのピンチヒッターに仕立てられたからだ。


 舞桜自身は、現在ホテルで休んでいる。

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