Act2.録音スタジオ Part3

 この事が評価されたのか、それともマネージャーの手腕か、はたまたギャラが安いからか、刹那は同じ新人の島村舞桜と隔週配信のWebラジオでパーソナリティーをする事になった。アイドル時代より明らかに『仕事』をしている。


「それでは『鬼霊戦記 夏休み福島聖地巡礼ツアー』の参加メンバーを紹介します。東雲智浩監督、宮本優風さん、沖田沙絢さん、島村舞桜ちゃん、ぎしキヒロさん、御堂刹那です。トークイベント『鬼霊戦記夏祭り』と『鬼霊戦記星見会』のみの参加も可能です。

 みなさん、福島でお会いしましょう!」


「参加できない方も、このラジオでツアーの模様を一部放送しますので、お楽しみに!」


「それでは、次回配信も必ず聞いてね! バイバ~イ」


 しばしの沈黙後、ディレクターからOKが出て収録は終わった。


「「お疲れ様でした!」」


 刹那と舞桜は同時に席を立ち、優風やスタッフに頭を下げた。新人なので、挨拶は最初にしっかりとしなければならない。そして後片付けも新人の大切な仕事だ。


「それじゃ、お先にぃ~」


「ユウ姉ェ、おつかれぇ~」


「お疲れ様で~す」


「うん、またねぇ~」


 優風は人気声優で、この後もスケジュールが詰まっている。


 一方、刹那のこの後の仕事は、叔母に頼まれた夕食のお使いだ。彼女は叔母の家に下宿しているので、自分の夕食の買い物でもある。


「舞桜ちゃん、このあとヒマ?」


「うん、今日はバイトないから」


 アイドル同様、声優も本業だけで食べていくのは難しい。優風ぐらい仕事があれば別だが、ほとんどがアルバイトで生計を立てている。


「よかったら、お茶しない?」


「いいねぇ、マックにする?」


「いや、もっとお金のかからないトコで……」

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