Act2.録音スタジオ Part1

「「ウェブラジオ、りようせんぃ~!」」


 せつは向かいに座るとタイトルコールをハモらせた。


「みなさん、こんにちは! 娑羯羅しやがら役のどうせつですッ」


「みなさん、こんにちは! 役のしまむらですッ」


「この番組は、アニメ『りようせん』の宣伝の記録、略して『宣記』です」


「それでは早速ですが、今日はいきなりゲストを紹介します」


「『鬼霊戦記』、ほう役のみやもとさんで~す!」


「どーもー、お久しぶりです!」


 今度は隣に座っている優風が元気よく声を張った。


「いらっしゃい、ユウ姉ェ! 最終回のアフレコ以来だね」


「四ヶ月ぶりくらい? アニメの放送も六月で終わっているしね」


 刹那と舞桜にとって優風は面倒見のいい姉貴分だ。


「いや~、いよいよ近づいて来たわぁ。このラジオが配信される頃には、あたしたち、一緒にイっちゃうよ~」


「せっちゃん、子供が聞いてるかも知れないんだよ、ナニ口走ってるのッ?」


「アタシは、そんなコト言う子に育てた覚えはない!」


「ちがうッ、そういう意味じゃなくて……」


「はいはい、『福島聖地巡礼ツアー』に参加している、でしょ?」


「そう、あたしが言っているのはそれよ!」


 アニメなどの舞台となった場所を訪れる事を「聖地巡礼」と呼ぶ。『鬼霊戦記』の前半は福島県郡山市を舞台としており、そこを巡るイベントが一ヶ月後の八月に控えている。


「舞桜ちゃんは郡山市出身だから、ツアーで巡る場所は知っているの?」


「うん、ほとんど行ってるかな」


「アタシもお祖母ちゃんが郡山にいるから、いくつかは見てるよ」


「二人ともいいなぁ、あたしは初めて。食べ物は何がおいしいの?」


「よくお土産に買ってるのは、かしわの『薄皮まんじゅう』か三万石さんまんごくの『ままどおる』だね」


「郡山はスイーツがおいしんだって! ワタシがお勧めなのは、三万石なら『フルーツロールボックス』、柏屋は『ゴマ大福』だべ」


「うん、最後ナマったわね」


「やっぱ出身者はチョイスが違うね。アタシ、食べた事あるかなぁ? あと、よしだやのどら焼き?」


「あぁ、それもウンっめぇなぁ。ワタシはフレッシュフルーツ押しだ」


「どら焼きにフルーツ? ってか、フルーツ好きだね」


「オレはブレね。他にもマンゴーとか、夏季限定のイチゴヨーグルトなんかもあンだ」


「あンだよ」


「なんか、あたし、今、凄くマイノリティになっている」


「まぁ、せっちゃんだけ敵側だからね」


 優風は主人公の鳳羅須、舞桜はヒロインの光奈、そして刹那は敵対勢力の主要キャラ娑羯羅を演じていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る