第10話 おっさんの体操

 毎日暑い日が続いて倒れそうだ。

 いや、きっと倒れるね。

 だから今日は、もう仕事はしない。


 読みかけの本を開こうとしたら、おっさんがおやつを要求してきた。

 今日もおっさんは、俺の机の上でソファーに寝そべってくつろいでいる。


「なあ、けーくんの部屋にはテレビないのか?」

「見たいときは、リビングで見るからな」

「嫁の部屋にはあるのに。けーくんも買ってもらえよ」

「必要ない」

「ぐええー」


 変な声を出した後、おっさんは静かになった。

 だからと言ってどこかに消えるわけでもなく、机の上にいるんだが。静かになったので、おっさんは放っておくことにして、俺は本を読む!


 しばらくたって、ふと目の端に動くものが映った。

 おっさんが立ち上がって、ラジオ体操をしている。


 ほう。 

 体型のわりには機敏に動いてるな。

 第一が終わった。

 ……第二もするのかよ!

 音楽もないのによく覚えてるもんだ。


 !!

 ジャンプが高けえ!

 意外な特技を発見した。


 第二が終わった。

 第三はさすがに知らねえだろう。俺も知らん。


 おや、動き始めたな。

 第三を知ってるのか?

 

 ……

 

 こ、これは!

 ラヂオ体操第4じゃねえか!

 おっさん、すげえな。


「うぉ? けーくん、見てたのか。いや、最近ちょっと暑くて運動不足だからな。この部屋は涼しくて体操するにはいいぜ」


 おっさんの、意外な運動能力を知った夏。


(「ラヂオ体操第4」をご存じない方は、検索してみてね)

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