第3話 違いが分かるおっさん

 『チョモランマの天然水』はペットボトルで売られている普通の水のくせに、1本380円もする。


「おおー!このソファー、良いじゃねえか」


 ドール用のソファーにだらしなく寝そべって、おっさんが言った。

 手にはプラスチックのミニチュアワイングラスを持ってるんだが……。


「けーくん、早く! 早く水をくれよ」

「いや、どうやってそのグラスにつごうかなって思って」

「ああ、小せえからな。ペットボトルの蓋の方についでくれればいいぞ」


 ん?

 ああ、すくうのか。

 雰囲気ぶち壊しだが、本人が良いならまあ。


「んめえ!」

「いや、普通の水だろ?」

「分かってねえなあ。だからケーは子どもなんだよ」

「なんだと」

「ダバダーダーダー、ダバダーダバダー」

「……古いよ」

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