第2話 おっさん専用グラス

 おっさん用のグラスを買おうと、郊外の大型スーパーに出掛けた。

 おっさんのサイズは、人のだいだい12分の1くらい。おもちゃ屋になんかあるだろう。

 テーブルセットなんかも買っとくか。

 真剣にドール用のミニチュアを選んでいると、嫁が呆れてため息をつく。


「真希はもうそのセットは持ってるわよ」

「そ、そうか。いや、真希とお揃いのものを部屋に飾ろうかと」

「あなた……、何かおかしいわね」


 この歳になって人形遊びなの?……って。

 ちゃうわ!

 とはいえ、頭がおかしいと思われても嫌なので、おっさんのことはまだ内緒だ。


「デスクの棚ががらんとしてるから飾ろうと思ってな」

「ふーん」


 一言そう言うと、嫁はいくつかミニチュアの家具と食器を追加した。


「真希と喧嘩しないで分けるのよ」

「せんわ!」


 真希は俺と嫁さんの間に生まれた、かわいいかわいい一人娘だ。

 まだ5年生なんだが、最近急に口数が減ってきた。出かけようと誘ってもついてこない。

 反抗期か?反抗期なのか?


 そうか、真希とお揃いか。

 それも悪くないな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る