第21話
──そこは控えめに言っても混沌だった。
何十人もの人々が土で作られているであろう輪で拘束されており、その横では拓哉が何も無い空間に向かって数え切れないほどの氷弾を連射し、弾幕を形成している。その表情は苦悶。拘束されている人々の目には光が無く、虚ろ。
「はぁっ、はあっ、はあっ……智哉さんや……どういう状況?」
「とりあえずっ……そこに拘束してある奴らにとっとと触れッ!」
「はあっ、何が何だか分からんが了解ッ!」
生気がない彼らに触れていくと聞き慣れた音と共に光の破片が舞い散る。拘束も同時に解けてしまうが、並列思考のできる智哉がカバーしてくれる。……急がないとまずいな。
「──拓也っ、あと何人だっ!?そろそろフォローが限界なんだがッ!」
「あと5、6人!フォローはもういい。そっちに専念してくれっ!」
「全員分の拘束解いたらこっから離れろ!いいなっ!?」
「了解!逃げるんだよォっ!」
──切羽詰まった声音と肌を焼く感覚が俺の足を動かす。逃げろ、逃げろッ!この雰囲気は、この感覚は──
「──よし、あいつがいるとこれは使えないからな。発動『気象魔法』」
──瞬間、竜巻が発生した。気温が出鱈目なものになり、ヒョウが降り出す。住宅街の一部が凍結し、ガラスが融解し──混沌が顕現する。
「……難しいな。だが感覚は掴んだ。逃がさないぞ。マヌケ共。」
──混沌が消え、正常に戻った世界。遠くから見ても容易に分かる程のそれはただならぬものだと理解させられる。
智哉が作り出したのは氷の……槍?ともかくその『何か』は煌々と光り輝き、夜の帳を引き裂いている。
風がそれに収束し、竜巻で銃身が作られる。全長は見えるだけでも数メートル。プラズマとなった空気がバチバチと音をたてている。
──何だ?何をする気だ?ここから先に見えるのは何も無い丘だが……
「──『滅槍』」
光の軌跡を残し、夜空を駆ける一条の光。夜を切り裂きながら丘に着弾したそれは──
──丘を蒸発させた。あったはずのそれは光に飲み込まれ、跡形もなく消え去った。残ったものは地平線のみ。全ての存在を許さない圧倒的な暴力が全てを飲み込んだ。
「……えーっと、え?どゆこと?マジで意味がわかんね──って拓哉ッ!」
天変地異を起こしたからだろうか。智哉はそのままくずおれ、地面に倒れ込む。
──何があったのか、そして何をしていたか。後でしっかりと問い詰めないとな。
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