第20話
視点変更『神凪 拓也』
夜の帳がおり、閑散とした街の中。月を見上げ──友人が言う。
「……拓也。今ふと思ったんだがな。」
「どうした?お前分の借金は全部払ってあるぞ。」
「ちげぇよっ!……まぁいい、話を戻そう。この旅の最終目標が『神を殺す』だよな?」
「そうだな。まぁ私怨でやろうとするだけだし放っておいたらこの世界死ぬしな。」
「サラっととんでもない事が聞こえた気がするが後としよう。……世界各地の教会潰しまくれば神が降りてくるんじゃねえか?」
「唐突なテロ宣言っ!?相変わらず発想がぶっ飛んでるなぁお前……」
「おいおい、テロとは人聞きの悪い。俺はちょっと魔法の練習をしてそれがうっかり暴発してしまって偶然そこにあった教会が消滅するだけだぞ?」
「それすなわち『故意的に教会消滅させた』って言うのと同じだからな?……やるなよ?」
「ちぇっ……そこまで批判するなら何か他の案があるんだろ?言ってみろよ。」
「勇者殲滅。」
「なんとも物騒な四字熟語だなっ!?ぜってえさせねえし……そもそも勇者は一人だけだろ?一人に対して『殲滅』はおかしいからな?」
「……そうじゃん。よく考えたら勇者って一人だ……け……?じゃあなんであのノドグロ姫様は俺達のことを『勇者方』って言ったんだ?」
「隙あらばボケるそのプロ根性好きだよ。……多分あれだろ。「勇者様方(全員が勇者とは言ってない)」だろ。」
「なるほど、それなら辻褄が合う。……つーかお前が『全知』使えば分かっただろうが。」
「それじゃあ面白くない。全てネタバレした状態でやるゲームはつまらないだろ?そういう事さ。……さ、着いたぞ。」
「もうか。早いな。」
目の前に見えるのは先日もお世話になった図書館。二階建てで、内装は白を基調としているのが特徴なんだが……所々赤い。何故?
「智哉さんや……ものっそい赤くない?」
「そうだな。お前は昨日白いって言ってたのに赤いな。」
「さてはあれじゃね?殺人事件。」
「探ってみる。発動『全知』……おおぅ。客惨殺されてんじゃねえか。」
「ふぁっ……犯人は?」
「……確か『影山 竜樹』と『橘 月華』だな。わりと真面目なキャラだった印象があるが……ッ!」
智哉は瞬時に魔法陣を展開。光球が輝き、視界を奪う。その間にガラスを捩じ切るような音が部屋全体に広がる。
──終わった……のか?
先程とはうってかわって静寂に包まれた状況。恐る恐る目を開けると、酷い有様だった。
俺達を守るかのように何かでドームが作られており、そこからいくつかの槍らしきものが生えている。が、そのいくつかは切断されており、滑らかな切り口が見える。
「……えーっと、智哉さん?何があったのか短く教えてくれるかな?」
「何処かにいたであろう影山と橘に襲撃食らった。影山の祝福である『影に潜む者』で俺の影から不意打ちされかけたが、影を消して槍で迎撃──した所で橘に槍を斬られた。」
「……全く分からなかった。これがヤムチャ視点ってやつか。」
「ボケるのはいいから解除するぞ。……さっさとリンネさんと合流しないとな。流石に探知し続けるってのは精神的にも魔力的にも非常にキツい。」
「そうじゃん。完全に忘れてたがあの人今何処にいるんだよ。」
「用事があるとか言っていなくなった。……ふーん。もう終わったようだな。」
「……そういやそれ使えばプライバシー完全無視出来るじゃん。こっわ。」
「変に覗くことはしないさ。おし、行くぞー。」
「ああ、智哉様ッ!」
共に駆け出し、血塗れの図書館を出る。やはり外は静寂に包まれており、それすらも不気味に感じられる。
──ああ、何だか楽しくなってきたッ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます