第19話

視点変更『影山 竜樹』


「……それでは今から会議を始めます。」

「ぱちぱちー。……橘は何処にい──」

「私はここにいますが?」

「ヒィっ!?……気配探知にも全く引っかからなかったんだが……いい加減足音消すのやめろよ。それに、まだセーラー服着てるのか。」

「えぇ、この服が最も気慣れているからね。……まぁ、これはメイドさん達に作ってもらった物だけども。」

「へぇ。」


円卓に座っているのは数人。メンバーは全員が黒いローブを羽織り、黒いフードで顔を隠している。

司会をしているメイドさんは機械のように無表情で、光を失った目で周囲を見回し──告げる。


「本日の議題ですが……我々がとり逃した『無能』がこことは別の国で発見されたそうです。」


……ふぅん。あの異物が見つかったのか。クラスメイトの中でも浮きに浮いていたあいつと唯一仲が良かったが……何でメイドさん達はあれに執着するのだろうか。全く分からないが……まぁいいだろ。

国への害となるのであれば、排除するのが俺達の役目だ。


「──えぇ、では『無能』の始末は橘さん、貴方達へ一任します。それでは次の議題ですが──」


おっと、回想をしていたら別の議題に移ってしまっていたか。いい加減この癖は治さないとな。

──一時間後、会議が終わった俺達は早々に解散しようとするが……何で橘は荷物を持ってるいるんだ?しかも認識阻害が付与された黒ローブまでも着用して……


「どこへ行こうというのかね。」

「……『無能』の処理に行くのよ。というか影山、貴方も一緒に行くのよ。聞いてなかった?」

「そこだけな。……少し待ってろ。とりあえず準備してくるわ。」

「四十秒で支度しなさい。」

「それは無理っ!せめて10分待って!」

「……はぁ、3分は待ってあげるわ。」

「ごめんよっ!発動、『影渡り』ッ!」


近くにあった机の影に潜り、自分の部屋にワープする。

乱雑に散らかった俺の部屋から旅用の物を入れていく。ローブに、杖に……ああもうっ!とりあえず全部突っ込んじまうか!いやでもそうすると重い……


──荷物を持ち再び影を渡ろうとした瞬間、扉が開かれて橘が入ってくる。


「時間よ、随分と遅いじゃない。」

「お前の準備が早すぎるんだよっ!……まぁいい、行こう。」

「えぇ、さっさとケリをつけないとね。」

「そうだな。小説でもこういうとり逃した奴は大体とんでもない脅威になるからな。……発動、『認識阻害』『無音化』」


黒いモヤが俺達を包み、消えて無くなる。

──さぁ、さっさと殺してしまおうか。さっさとやる事やって眠らなければな。

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