第17話
──目が覚めると、そこは白い天井だった。
「知らない天井だ。……なんてな。」
痛む身体を無理矢理動かし視界に入ったのは見知った黒髪の少年だった。ベッドに顔だけ突っ伏して寝ているらしい。
「……ねっむ。というか今って何日の何時だ?時計が無いって不便だなぁおい。」
「……ん、拓哉?」
「おうおはよう。俺は常に拓哉さんだよ。」
「おぉ、ようやく起きたか。待ちくたびれたぞ。」
寝ぼけ眼を擦りながら上体を起こした彼はいつも通り飄々とした態度で俺に話しかける。目の下には何時かも見たような──けれどそれよりかは薄いクマがある。
──心配かけちまったなぁ。これからは少し命をかけるのは自重せねば。
「1つ質問、今って何日の何時だ?」
「お前が運ばれてから三日後、時刻は……午後7時だな。」
「わーお、結構寝てたんだな。」
「そうだな。俺がポーション作れたからよかったものの……作れなかったらあの子はどうするつもりだったんだか……」
「知らね。……そういえば俺のケガってどんな感じだった?少し気になるんじゃが……」
「肋骨が数本折れていて、内臓がいくつかやられてた。それに加えて骨盤も複雑骨折していたかな。なんでお前生きてるんだ…?普通あそこまで重症だったら良くても寝たきり生活になるはずなんだが……」
「んなもん俺が知るかってんだ。まぁ生きてるんだし良いだろ。」
「相変わらずだなぁまったく。」
「話は飛躍するがあの子はどこにいるんだ?少しは見舞いに来てくれてもいいと思っているが……」
「知るか。寝る直前にいたのは覚えてるがそこからの足取りは全くわからん。」
「お、おう。……とりあえず軽く運動するか。流石に三日も寝てたら身体がなまる。」
「えぇ……お前さ。今の状況分かってるのか?いくらポーションで無理矢理治療したとはいえ不完全なんだぞ?それなのに動くとか馬鹿じゃねえの?」
「馬鹿とか今更だろ。悪いが俺はお利口さんに生きるつもりは無いんだ。己の意志を貫くからこそ自分の人生に価値が生まれるんだぞ?」
「……はぁ、そういやそうだったわな。わかったわかった。この部屋出て右の階段降りれば庭の方に出るから散歩でもなんでもしてこい。」
「悪い悪いっ。なるべく早く戻るよ。じゃあの。」
「おう。」
多少だが痛む身体を不格好ながらも動かし、俺は外に出る。……まぁ外に出る理由は運動だけじゃないがな。まぁそれを伝える必要は無いだろう。
———————————————————————
夜の帳が降りた街を歩く事数分、俺はこの街の図書館に到着した。
──そう、この世界には図書館があるのだっ!恐らく俺達より前の日本人?が建てさせたのだろう。物の道理をよく分かってると個人的には思っている。
情報は力だからな。貰える情報は貰っておいた方がいい。あいつに色々聞いてもいいんだが……あいつの事も考えてやらないといけないと思いこちらに来た。
一応営業時間は確認してあるため、ドアを開けて目当ての本を探す。
俺が探している本は神話関係と勇者と魔王の関係性についてだ。
以前から気になってはいたのだが如何せん調べる時間が少なくて……ようやくまとまった時間が取れた(無理やりぶんどった)ために見ることが出来る。
──数分後、俺が探したのは1冊の絵本。正直すっごい薄い。それ以外は余りにも分厚いため、見るのは後になると予想したため、この本を選んだ。
──数十分かけて呼んだ本の内容は至極単純なものだった。
神が世界を作ったが、外宇宙の悪神である『クロ』が世界を壊そうとした。それを止める為に勇者というシステムを作り、魔王となっていた『クロ』を倒してめでたしめでたしというお話だ。
……ふーむ。何か違和感を感じる気もしなくはないがそろそろ戻らないと不味いかな。
そう思った俺は痛む体を動かし、本を戻してからゆっくりと病室に戻るのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます