第12話
「……さて被告人、てめえの罪を数えろ。」
「ちょっと待て唐突すぎるよなっ!?」
スタンピードという体で知らされているどっかからの侵略から一週間、借りてる宿屋で俺は無事無罪となった智也の胸ぐらを掴んで脅迫をした。
「いや待て、確かに操られてたとはいえ俺は街を滅ぼそうとした。だからって──」
「違うぞ?」
「…………え?じゃあ何?」
「俺が言いたいのはそんな事じゃなくてだな、あのケモ耳美少女を氷漬けにしただけでなく挙句の果てにはお持ち帰りしようとした事だこのボケナスがッ!」
「理不尽ッ!」
感情のままに右ストレートを腹に放つと、智也はそのまま崩れ落ちた。
全く、世界の至宝を傷つけるとは神であろうと許されぬ事だと言うのに……
「ぐぉぉ……1つ質問なんだがあの娘はどこ行ったんだ?」
「それがわからん。丁度お前が裁判にかけられてた時から姿が見えぬ。……つーかあの娘証人になってたろうが。まさかそのまま「見失いましたー」なんて言わないよなぁ?えぇ?」
「いやほんとあの、異世界から召喚されて『勇者』っていう響きでめっちゃ油断してましたすいません許してください何でもしますから……」
「ん?今なんでもするって」
「言ってねえよ!?」
ひとまず気持ちはスッとしたので、智也を解放する為にベッドに放る。そのまま智也はベッドに座った。
「まぁ姿が見えないからってそう焦ることでもねえか。あの娘世界で数人のSランクだし。……んでだ、こっからお前はどうするんだ?」
「どうするって?」
「生活をどうしていくかって聞いてんだよ。お前確か無一文だろ?奴隷にでもなるのか?」
この問を投げかけた瞬間、智也は目にも止まらぬ程に流麗な動きで床に五体投地をし、懇願した。
「そんな訳ないじゃないですかやだー。……すいませんゴミ虫の分際でおこがましいですがお金貸してください本当にお願いします。」
「ふむ……おーけー許そう。ありがたく受け取りたまへ。」
「ああっ、ありがてぇ!……感謝っ!圧倒的感謝っ!」
持っていた腰巾着から一部を分けて床に置くと、智也はハエトリグサに迫るばかりの速度で金を回収した。
「んじゃあな。そろそろ俺は依頼を受けなければなら」
「やはり依頼か。俺も同行しよう。」
「片本院!じゃねえよ。え?真面目についてくる系男子?」
「勿論。魔法使いが一人で依頼達成出来るわけねえじゃん。」
「いやお前ノーモーションで数十個の氷出してたし竜巻で街ひとつ覆ってたやん。それでもそれを言うか。」
「本音を言うと寂しいっす。俺おみゃーさんみたいにメンタルクソ強く無いんだわ。」
「おっそうか。仕方ない、ついてくるがいい。」
「マジかさては仏だなおめー。」
とりあえずやる事は終わったので荷物を持って部屋を出ると──
「随分と遅かったね。何してたの?」
あの日のケモ耳美少女がいた。
絹の如く真っ白な髪の毛、肩が出された巫女セーラー服、黒色のホットパンツと黒ニーソが作り出す絶対領域が酷く眩しい。ニーハイブーツと言うのもまた良きもの。極めつけは頭にあるピコピコと揺れている狐耳とフリフリと揺れているモフモフそうな尻尾。映える真紅の目は爛々と楽しそうに輝いている。
「ふっ……この世界には天使がいたのか……我が生涯に悔いなし……」
「拓哉あああっ!?」
「ちょっと!?」
世界の宝を目撃した俺の意識は遥か彼方へと消し飛んでいくのだった……
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視点変更『片本 智也』
拓也が満足したような笑みを浮かべ、そのまま俺に向かって倒れてきた。
……なるほど、そういやこいつ
とりあえず文化部だった俺の貧弱な筋力で何とかゆっくり床に寝かせ、そのまま全力で顔をビンタする。
パアアアッン!
……やっべこれまでで一番いいビンタの音かも。拓哉はまだ起きない。何度か執拗に左頬をビンタしてやると、流石に痛みであいつは目を覚ました。
「智也っ!お前は何執拗に左頬ビンタしてくれてんのっ!?痛いよ!?」
「……お前が唐突に倒れたのが悪い。確かに──えっと、あー、名前聞いてなかったわ。ごめん、教えてくれるかな?」
「リンネよ。」
「ありがと。リンネさんというお前の性癖どストライクの娘がいたからって倒れるのはおかしいと思うんだわ。」
「おかしくは無いな。何故ならケモ耳っ娘と言うのは──(中略)──そしてそれに加えてロリという世界の至宝であるが故に──」
「ああすまん拓哉、そろそろこの娘の羞恥心の限界を超えるから止めてやれ。」
ちらりと先程まで拓哉に褒めちぎられていたリンネさんは耳をピコピコ、顔は熟れた林檎のように真っ赤に染まり、尻尾は音が出る程のスピードでブンブンと振られている。……顔のにやけを何とか抑えようとしてるのがまた可愛い。なるほど、何となく拓哉がロリコンな理由がわかった気がする。
「……そう言えばリンネさんや。当たり前のように溶け込んでたけど、なんであなたはここにいるのかな?」
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