第11話
「──あー、暇ぞ。まじでやれることが無い。」
日本のどっかにある病室で、俺は一人寂しくとにかく暇な時間を過ごしていた。
こうなった原因は数日前のキャンプだ。
とある理由から智也の家に居候させてもらっている俺はキャンプに誘われた。
居候の身でノリよく行けるわけがないので俺は謹んでお断りしたのだが……
次の瞬間には何時の間にかロープでぐるぐる巻きにされて車に連行されていた。
抜け出そうとしたものの医者の息子である智也は俺が身動きできないように関節をロープで固定していたため、まったくと言っても良いほどに動くことができなかった。
車内で智也が土下座するなどひと悶着あったものの、その時まではまだ楽しい時間だった。
数時間後、キャンプ地に着いた俺たち一行はテントを設営してそのまま自由時間になった。
智也たちは都会で見ることができない澄んだ川で魚釣り、俺は近場で智也から貸してもらった図鑑を利用して食べられそうな山菜とか茸とかを探していた。
しばらく近場をうろうろしていると、俺は一体のクマを見つけた。
初めて生で見るクマに興奮していた俺は、あろうことかそのままクマに触ろうとしたのだ。
──今考えるととんでもなく馬鹿な行為をしていたと思う。反省はしているし後悔もしている。
けれども俺はそのままクマを撫でようとして──
腕を噛み千切られた。それは見事に。恐怖とパニックで叫んだ俺は、そのまま痛みによって気絶した。
起きてから聞いた話では智也の父さんがクマを素手でのした後、俺の傷を止血してそのまま俺の病院に搬送されたとか。3メーター近いクマを素手でのすとかどんなバケモンだよ……
結論から言うと、ものすごく怒られた。しばしば小説で見かける「烈火のごとく」とはまさにこのことを言うんだなーって思うレベルで怒られた後、めっちゃ励まされた。
そんなこんなで数日が経過したが、起きてから未だに智也の顔を見ていない。
俺を叱ったり励ましたりしてくれた智也の母さんが言うには
「あの子なら何だか鬼気迫る表情で家に戻ったわよ?」
とのこと。
なんどか電話を掛けてはみたが全くと言っていいほどに反応がない。
「いったい何をしてるんだk──」
「拓哉ッッッッ!!!!」
「うおああああっ!?」
寂しさを紛らわすため独り言を呟いた瞬間に、個室のドアが思いっきり開かれた。
嵐のような来訪者に視線を向けると、目の下にとてつもなく大きなクマができていた。漫画でしか見たことないような濃さだな。
「拓哉ッッ!」
「うるせえ傷に響く少し落ち着け!」
「ぐっ!?」
俺のもとに駆け込んできたため、とりあえず脳天に一発チョップを叩きこむ。よし、ひとまずは落ち着いたな。
「……んで?なんかあったのか?例えばあのキチガイどもが正常にでもなったとか。」
「はあっ、違うぞ。はあっ、腕が完成した。」
息を切らしながらも俺の質問に答えた智也は肩にかけてるカバンから一本の右腕を取り出す。……え?
「えーっと、一つ聞いてもいいかな。……これ本物の腕じゃねえの?」
「違うぞ。義手だ。」
「いや見た目が完全にマジもんの腕じゃん!吐け!誰の腕引きちぎってき──」
「話を聞けっ!」
「ぐおっ!?」
カバンから出されたリアル腕(?)で発狂していると智也からお返しと言わんばかりに思いっきり叩かれた。こいつっ!さっきの一撃を根にもってやがる!
「いいか?これは義手だ。極限まで本物に似せた義手だ。」
智也からそれを奪い取って断面を見てみると、確かになんかよくわからんものが芸術品並みに複雑多重に組まれていた。何のための部品だよそれ……
「拓哉、右腕だせ。」
「え?なにゆえ?」
「早く。」
「ういっす。」
殺意のようなものを全身から迸らせ始めた智也の要求に従って腕を出すと、騒がしさの大元であるそれを思いっきりはめ込まれた。
思いっきり押し付けられたそれは俺の肌や治りかけの傷口と癒着し、完全に同化した。余りの痛みからそのまま右腕で掴みかかろうとして──違和感。
「え?どゆこと?え?え?あのー智也さん?これどういうこと?」
一寸の狂いもなく自在に右腕を動かすと、智也は神妙な表情で答える。
「──わからん。自分で作っといてなんだが全く仕組みがわからん。」
「おい作者。」
「──一つだけわかってることがある。少なくともそれは世紀の大発明ということだ。しかもそれは……」
謎を残しながら、拓哉は突っ伏すように寝落ちした。俺は智也が何を言おうとしているのかとてつもなく気になりながらも、動作確認という名目で智也をベッドに寝かせ、そのままトイレに向かうのだった。
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