第3話
「さーって、ここからどうするかねえ…」
色々といざこざがあり、テンプレの如く少量の金を持たされて追放された俺氏。現在城下町の喧騒から逃れて思考を落ち着かせる為に裏路地らしき場所の入り口で壁にもたれている。
「所持金は…金貨10枚。確か10万円くらいか。」
この世界の貨幣価値は 金貨=1万円 銀貨=千円 銅貨=100円 ぐらいの価値となっているらしい。(昨日前の転移者が残したであろう本を見たから間違いない…はず。)
どうせ殺すんだったら最後くらいいい夢を見させてからどん底にたたき落そうという魂胆なんだろう。まじで性根が腐ってやがるな。
おそらく
「うーむ…このままシナリオ通りに退場してやるのも癪だしなあ。……待てよ?確証はないけど確かこの辺ってでかい渓谷があったよな。そこで身投げしちゃうか?」
異世界に来ても身投げをするとか頭がトチ狂ってるやつしかやらないだろうけどこれしか相手さんの予定を潰せそうな方法が思い浮かばない。
死んだふりってのも考えたけれどそもそも血液とか無いし生肉ってのも無理があるから却下せざるを得ない。
国外逃亡はただの延命処置に他ならないし…
「とりあえず腹ごしらえするかな。最終的に身投げするかもしれないだけだし、生き残るのは無理っぽいしなあ。…ほんとは身投げしないのが一番だけど…そうは問屋が卸さないっぽいし。」
こうして俺は今日の夜にくるであろう死に怯えながらも最期を楽しむために町へ繰り出すのだった。
──けれど、ここで俺は気づいておくべきだった。
これまで追放者が殺されているなら、確実に
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時間は進んで真夜中、月明かりの下で俺はのんびりと歩いていた。
左を向くとシャレにならないレベルで深い渓谷がある。昼の間に川が流れていることは確認できたがそれ以外は特に何もなかった。
右手には日中にいた街の外壁が少し見える以外は真っ平らな草原。何人もの人に踏まれて出来た街道がいい味を出している。変な生き物もいないし、正直ここで眠ってしまいたいぐらいである。…寝たら間違いなく死ぬから嫌だけども。
…さて、いいかげん現実を見ようか。
後ろには数人のメイドさんが足音を立てずに歩いてきている。正直真面目に怖い。全員無表情ってのもあるかもしんねえけどさ。
なるべく意識しないように歩くこと数分、しびれを切らしたのかメイドさんの一人が俺に話しかけてきた。
「…いい加減諦めたらどうです?」
「いやー、生憎まだ死にたくないんだよねー。流石にあんたらも人殺しをするのは精神的にきつい「そんなことはありません。」速答ですかそうですか。」
彼女らの手にはナイフ。微妙に血液っぽいものが付着しているのは単に恐怖を与えるためだろうけれど…生憎俺はそういうものに拒否反応を起こしたりはしないんだよなあ。
メイドさんがナイフを構える。
「それでは…死んでいただけ「お断りだっ!」」
さあ、昨日に続いて身投げしますかっ!
右手に見える渓谷を見て一瞬躊躇うものの、恐怖を強引にねじ伏せてその身を投げ出す。視界の端にはのぞき込むメイドさんが移る。その表情は驚愕に染まっている。
そらそうだ。これまで泣きながら許しを請う奴とかはごまんといただろうが笑いながら自殺する奴なんて初めてだもんなっ!
一瞬の浮遊感の後、忘れたくても忘れられない自分の身が落ちていく感覚。
すぐに来るであろう衝撃に恐怖を抱きながら目を瞑って──
バァァァァァン!
<異能『奇跡』が発動しました。>
途切れ行く意識の中、無機質な声が脳内に響いた…気がした。
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──君は世界を救う気があるかい?
……なんだ?何を言ってる?
──だから世界を救わないかと聞いているんだ。君にはその資格がある。
……ふざけるな。そんな面倒なことをする気はない。
──『神』が関わっていたとしても?
……っつ!?詳しく聞かせてもらおうか。
──君の、君たちの家族を全て崩壊させた『神』がこの世界にも関わっているんだよ。君がどうにかしてくれないと後数年後に世界は滅ぶだろうね。
……そうか、あのクソ野郎がこっちにも関わっているのか。だったらやってやるよ。
あの日のツケを払わせてやる。
──君ならそういうと思ったよ。…でももう限界だ。後は…まか…せ……
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