最終章

第一部

第1話

意志と奇跡が連綿と紡がれて作り上げられた人類の英知は遂に本物の腕と見分けがつかないレベルの義手を作り上げた。

機械によるエックス線を用いた精密検査でもしない限り、『それ』が義手かどうかなんてわかることはない。それだけでなく、その腕は人一人ひとりに合わせて作られるため元の腕と遜色なく動かすことができる。


だが、そのような世紀の大発明が世界に知らされることはなかった。

──この腕を作った張本人が突如失踪したからだ。多くの人々とともに。

失踪した原因は不明。インターネット上ではまことしやかにさまざまな説が議論されている。

この出来事はあまりにも不可解な点が多いため一時期は世間を騒がせたが、『人の噂も七十五日』ということわざの通りにすぐに人々は興味をなくしていった。


故にこそ人々は気にも留めなかった。

集団失踪事件の当日、同じ場所で一人の男子高校生が自殺したことに・・・

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俺こと『神凪 拓哉』やその他の生徒、総勢41名は突如拉致された。

あたりを見回すとローマ法王のような法衣を纏った爺さんが数人、大量の甲冑が純白の壁に沿うように並んでいる。ひときわ高い場所にはとんでもなく高価そうな玉座がひとつあり、髭を伸ばした王様のような人物がふんぞり返っている。その隣にはアイドルも裸足で逃げ出すほどにの美人が立っていた。


ほんの少しウェーブのかかった金髪、たぶん俺たちよりも低い身長、胸は…少し残念だけど俺としては好みの部類に入るな。…そんな美人さんが俺たちに言ってきた。


「よくぞいらっしゃいました、われらが勇者様方。」


…なんとなく察しがついてたけれどこれで確信した。

ぜってえ碌なことにならないやつだ…


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風呂に入ってから、俺は一人ひとり割り当てられた部屋に入った。

中にはベッドとランプ、丸テーブルがあった。…本棚とかはないんだな。


「はあああああ…つっかれたああ。」


インターネットが通じないため特段やることのない俺はすぐさまベッドに身を投げ出した。…やっぱ書庫にでも行って本くらい借りるか。


唐突に拉致されて「世界を救え」なんて言われても情報も力も資金も…何もかもが足りない。そんな中オタクやおつむの弱いクソ陽キャが脊髄反射で「世界を救う」なんて言いやがって本当に大変だった。…わが友がまともで助かった。


…そんなことを考えながら少し歩くと迷った。夜だから使用人もほとんどいないのがあだとなってしまった。

ひんやりとした壁に手を当てながらランプによってほんの少しだけ明るい廊下を歩いていくと名前は忘れたが姫さんが部屋に入っていくのが見えた。

…よし、なんかヤバい雰囲気がしなくもないけど書庫までの道聞くか。


「ええ、あとはあの──」


姫さんが入った扉をノックしようとした瞬間、中から姫さんの声が聞こえてきた。

…盗み聞きはしたくないけれど信用ができないし、情報はたくさんあるほうが後々ことを有利に進められることが多い。まあ『好奇心は猫を殺す』という諺もあるが…物事を有利に運びたいなら多少のリスクは負わないとな。


「明日儀式を行った後選別をします。…ええ、その時に万が一『無能』がいた場合は多少の金だけを持たせたのち…お願いしますね。…何故、ですか?ふふふ、『出来損ない』は選ばれた者の中にはいらないのですよ。それに我が国が『勇者召喚』をしたことは決して他国に知られてはなりませんから。」


わーお、予想通りとはいえ内面真っ黒ジャマイカ。よし、とっとと書庫の場所だけ聞いていりそうな本の内容詰め込んどくか。これまでテストは一夜漬けで乗り切ってきたんだ。いけるいける。


「あのー、夜分遅くにすいません。」


ノックをして少し待つとメイドの人が出てきた。…なるほど、この人が姫さんの話し相手か。確かに今の時間帯に姫さんがここにいるのは矛盾が生じるもんな。


「なんでしょうか。」

「じつは書庫に行こうと思ったのはいいんですが迷ってしまって。道案内してくれませんか?」

「わかりました、付いてきてきください。」

「ありがとうございます。」


なぜか足音がしないメイドさんに付いていくとすぐに書庫にたどりついた。…うん、人を頼るって大事だな。


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書庫から戻った俺はすぐさま暗記にとりかかった。…文字が何故か読めるのは驚いたけれど『異世界だから』ってことで思考を放棄した。


こうして、なんやかんや異世界に連れてこられた俺たちの一日は終わっていくのだった。

















<異能『奇跡』が解放されました。『■■■』が解放されました。>

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