第2話 人違い
「誰がストーカー? 」
「貴方しか居ないですの。」
「誰の?」
「きーちゃんのに決まってます」
「きーちゃんて誰?」
「・・・・?」
「?」
一向に噛み合う未来の見えない男たちの会話に
「ひ、ひーちゃん。な、なんかこの人様子が違うよ?」
先ほどきーちゃんと呼ばれた女の子が、おどおどしながら突っ込んできた。
なるほどこの子は何かの撮影会みたいなのをしていたのか。男は凄く断片的な現在だけ把握した。しかし、冷静さを失っているカメラ少女はそれにも意を介さず追及を進める。
「そんな訳ありませんの!! どうせこのなよなよしい男も、きーちゃんのえっちぃコスプレ目当てに決まってますの! 言い逃れしようったって、私の目は誤魔化せませんの!」
「え、えっちぃとか言わないで欲しいな」
「いや、確かにえっちぃけど」
ついつい男は答える。何度も言うがこの男はバカなのだ
「それ見たことですの!! きーちゃんのえっちぃお胸とクビレに吸い寄せられてきた、汚ならしい蜜蜂ですの!! こんなにも、可愛くてえっちぃきーちゃんは私が守りますの!!」
「いや、こんなえっちぃ子本当に知らないんですけど」
「それはそれで不敬罪にあたりますの!!こんなにもかわいくてえっちぃきーちゃんを知らずに、このえっちぃ撮影を見ていたとしたらそれこそ万死に値しますの!」
「えっちぃえっちぃ言わないでぇ」
きーちゃんと呼ばれている女の子が涙目で狼狽えていた。いや、けど確かにこの子凄い格好をしている。さっきまで多少派手とか言っていたが彼女が身に着けていた水着はなかなか際どいものであった。ひーちゃんと呼ばれる子の言葉を借りるならスゴくえっちぃ格好だ。
「ひーちゃん。この人やっぱり様子がちが」
「あ、またきーちゃんをそんな目で見てますの。獣臭い目で生きーちゃんをそんな見ないでくださいませんの?」
しかし、さすがの男もせっかく人がいない所を求めて、わざわざ遠出してきたにも関わらず、こんな不名誉な絡まれ方をさえれ、そろそろイラッと来た。しかし、ここで同じ程度に立つのも大人気がない。男は極めて冷静に
「獣臭い目ってなんですの?」
「・・・・バカにしてますの?」
「そんなことはありませんの。何か思い当たる節でもありますの?」
「うっ!」
この男非常にみみっちぃ、この特徴的なしゃべり方を真似するかつ彼女が自分でこのしゃべり方が変わっていることを突っ込めないと踏んだ上でこの返しである。みみっちぃ! あまりにもみみっちぃ!!!
「・・・ですの」
「?」
「警察ですの!! こうなったら実力行使ですの。もし仮に無実であったとしても社会的ダメージを受ければいいですの!!公権力の恐ろしさをあなたみたいな不届き者には身に染みて思い知ればいいですの!!」
対してこの少女、やり方が汚い。非常に汚い。最悪自分が怒られたとしてもたかが知れてると踏んでのこの発言。汚い!マジで汚い!!
「やればいい!しかし仮に無実であったときの事を覚えておけ!!名誉毀損で訴えてやるからな」
バカである
「ふん!その強がりいつまで続きますかね」
声が震えている。引くに引けなくなっているのである!バカである!!
「さあ!警察でも何でも呼べばいい!!」
「謝るなら今のうちですの!!」
「謝るかバカ野郎」
「誰がバカですの!」
「お前だバカ」
「許しませんの、絶対許しません!!」
そう言って男の目の前の女の子が携帯を振り上げたとき
「やめなさーーーーーーーーーーーい!!!」
涙声の叫びが付近にこだました。
「きーちゃん。ど、どうして、そうやって、け、喧嘩するかな」
涙声というのは撤回。涙声というかめっちゃ泣いていた。
「い、いや、ひーちゃん違いますの。」
「何がちがうの? わ、私、途中できーちゃんに勘違いじゃないかな?って聞いたよ?」
「それは、、、、この男がきーちゃんのこと嫌らしい目で」
「わ、私の話ちゃんと聞いてくれないひーちゃん嫌い」
「ッグハッ」
きーちゃんが言葉により肉体的ダメージを受けていた。いや、嫌いって言われて吐血するとかドン引きだわ。そのままひーちゃんの方に這いずる
「きーちゃん、嘘だよね?」
当のきーちゃんはプイッと顔を背けた。
「きーちゃん?」
もう顔面崩壊レベルでグズグズと涙を流し始めたひーちゃんにそれでもドン引きだった男はもう大変である。気持ち悪いとかそういうレベルの話ではなかった
「ちゃ、ちゃんと謝って。そしたら許す」
「すいませんでした」
「うわぁ」
謝ってと言われて2秒後に、それはそれは美しい土下座をしていた。引きすぎてこれ以上は無いと思っていたがまだ引く要素があったとは。てか海岸で女の子土下座してるのを上から見てる男って絵面がヤバすぎる。
「いや、わかった。分かったから顔あげて。き、きーちゃんだっけ? 別にもう怒ってないから許してあげて? 見てるこっちが居たたまれない。」
「ゆ、許すよひーちゃん」
「寛大なお心実に感謝しますの。」
そういいながら顔を上げるひーちゃん。その顔はにっこり笑っていたがその後ろにマジで許さねえという雰囲気がだだ漏れだった。
「ひーちゃん。まだ怒ってる? 嘘ついた?」
「お、怒ってませんの。本当ですの」
「ま、まだ嘘つくの?」
涙を流し続けるひーちゃん。男は少し同情をした。
「きーちゃん。あの本当にもう怒ってないから。謝ってもらって。許したって言った時点で本心がどうとか本当に気にしてないから。本当に許してあげて?」
「ん、許す」
ふんすっ!という声が聞こえてきそうポーズでひーちゃんを許すきーちゃんであった。するとそれに対して今度はマジ感謝マイメンのオーラを全開にするひーちゃん。
「神ですの?」
「ストーカーからえらい格上げだな」
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