第9話
今日は土曜日だ。何をしようか。適当に図書館とかにいこうかな?いくら姉の部屋にたくさん本があるとはいえ流石に限りがある。図書館の本を読んで時間をつぶすのもありだな。よし。
「お母さん、今から図書館言ってくるよ。」
「で、出掛けるの?」
「うん。いい本探しにいきたいなぁって。」
「じゃあお母さんも一緒に行くわ。」
「一人でいいよ。場所も分かるし。」
「今日は休日でしょ?休日は家族で過ごすものなの。」
「えぇぇ。」
「それに一人で歩いてたら危ないでしょ?」
「え、いや、そんなことないよ。だって、」
!!そうだ、俺が一人で帰ってきていることと剣道を始めようとしていることをまだ言っていない!どうしよう。これ、言っていいのか?それよりさきに今の言い訳を考えなくては。
「だって?」
「いや、その、俺もう8歳だし。流石に大丈夫だよ。」
「あのね、つむくん。一人でできることでもできるだけ沢山の人でやるっていうのは大事なことなの。」
響く言葉だ。なるほど。俺はちゃんと自覚していなかった。父親と同じ原因で死にかけてとても心配をかけてしまったことを。この交渉は俺の負けだ。
「そっか。じゃあ図書館に行きたいから一緒に来て下さい。」
「え?ふふ。よかったわ。ちゃんと聞き分けのいい子に育ってくれて。」
じゃあ親子でお出かけでもするか。
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ここが図書館か。いい本あるかなー。ん?あれは科戸ちゃん?死ぬ前の俺だったら絶対に会いになんていかないけど今の俺は違う。積極的に会いに行こう。
「ちょっとクラスの人がいたから会いに行ってくるよ。」
「わかったわ。12時までにはフロントに帰ってきてね。」
「はーい。」
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「ちわっす。」
「あ、縫結くん。」
「科戸ちゃんも面白そうな本を探しに来たの?それとももう借りる本決めてるの?」
「えっとね。ハリータッパー冷蔵庫の秘宝とドレンシャンの2巻を借りに来たの。」
「へぇ。あの本1000ページぐらいあるよね。読んでて疲れない?」
「確かに読み終わったら疲れるけど楽しいからね。最高だよ。」
楽しそうな顔というのはよほど憎い相手じゃない限り見ていて自然に顔が綻んでしまう。
「ふふふ。いいね。読書はとてもいい趣味だね。」
「そうなんだよ~。ふふふふふ。」
いつもとは結構違う感じだな。
「あ、じゃあさ、科戸ちゃんのオススメの本教えてよ。」
「いいよー。あっちにいこー。」
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「へぇ。科戸ちゃんって本当に本がすきなんだね。」
どうやら科戸ちゃんは最低でも500ページを超えるような本が好きなようだ。
「本はいいよねぇ。私もいつか書きたいなぁ。」
それはやめといた方がいいと思う。個人の自由とは言っても黒歴史を作ろうとしている奴を止めるなという方が難しい話だ。今は止めれないけれど。
「いいんじゃないかな。応援するよ。」
「書けたら最初に見せてあげるよー」
タノシミダナー。あ、そうだ。今何時だ?12時5分だ!やべぇ!
「ごめん。お母さんといま来てるから。じゃあね。」
「え、うん。バイバイ。」
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母親がちょっと遅れているのを期待したが甘い考えだったようだ。
「ごめん。遅れちゃった。」
「こーら。約束は守らなきゃだめよ。」
なんだか年上の彼女みたいだ。顔も口調も結構怖いけど。
「もう今日はいいの?なにか借りに来たんじゃないの?」
「え、あぁ。この本。この本借りていくよ。」
「なにその本?炊き込みご飯のレシピ?」
「うん。給食で炊き込みご飯食べて美味しかったから自分でも作りたいなぁって。」
美味しかったというよりなにか引っかかる感じだったというのが理由である。
「そうなの?料理をするのはいいけれど一人で火とか包丁とかは使っちゃだめよ。」
「わかった。」
「じゃあ今から炊き込みご飯の材料を買いに行こうか。」
「うん。」
親と買い物かぁ。普通何か懐かしいものがあったりするのかと思ったがなにもないな。
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ここは最寄りのスーパー。なかなか安い値段で色々買える。レシピをみて買う材料を考える。
「まずはごぼうね。」
「その次に人参かな。」
「あれ?つむくんってこんにゃく食べれたっけ?」
「食べれるよ?食べられないのはおねえちゃんじゃない?」
「え、じゃあきのこは?」
「え?どうだろう?あまり食べたくないかな?」
「じゃあやめとこうか。」
「うん。」
「それじゃあつむくん、こんにゃく取ってきて。」
「わかった。いってくるね。」
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こんにゃくこんにゃく。えっとここらへんか。
!!
「えっと?あとは豆腐と納豆か。」
あいつは赤島 奉!!どうやら普通に買い物をしているようだが・・・どうしたものか。今俺が話しかけても花芽李ちゃんの意思を無視することになるだろう。ここは観察をすることにしよう。
「これがいつもの豆腐か。ちょっと高いなぁ。」
どうやら親に買いに行かされているようだ。花芽李ちゃんの言っていた家族でのトラブルが原因ではないというのはこれで証明されたな。
「う~ん。」
・・・こんな平和なことで悩める彼女はなぜいじめなんてしたんだろう?これ以上情報を集めるのは無理っぽいしここんところは退散だな。
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母親を探したらすでにレジの近くにいた。で、こんにゃくをわたすと、
「あれ?これにしたの?」
「え、あぁ。これがおいしそうに見えたから。」
噓だ。赤島 奉に見つからないように素早く無難に選んだだけである。もっと安いやつがあったような気もする。でもまぁいっか。差額の数十円なんかより高い情報を得たというだけの話だ。うん。納得しよう。
「そうね、じゃあこれで今日は炊き込みご飯を作りましょうか。」
「うん。」
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自宅に帰ってきた。スゥーーハーー。なんか疲れたな。こっから母親は料理をしなければならないというのはなかなかすごい話だ。素直に尊敬できる。できるだけ楽をさせないとな。
「さぁつむくん。まずは手を洗ってきてね。」
「はーい」
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炊き込みご飯といえばささがきごぼうである。これのやり方は何故か体がというか魂がというか、まぁなんにせよ覚えている。
「つむくんそれ凄い上手だね。」
母親も感心している。まぁ、(恐らく)自炊してたしね。ある程度の料理はできるのだ。
「これで終わりっと。」
「はやーい。もしかしたらつむくん、料理の才能あるかも。」
「それはないよ。」
慣れてるだけ、と一瞬言いかけた。あぶねぇ。流石に中身が違うと思われることはないはずだが不信感を抱く理由には十分だ。十分気を付けないとな。
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材料も切り終わり、調味料も入れたから後は待つだけである。どういう感じになるのか楽しみだ。じゃあその間に土日の宿題を終わらせるか。
「ねぇつむくん。」
「なに?」
「今日会っていたクラスメイトってどんな子?」
え?そういうのって聞くものなのか?俺はそういうこと聞かれたことがないような気がする。死ぬ前の親が聞くような親じゃなかっただけで普通は聞くのかな?まぁやましいことはないからいいけど。
「科戸 成実っていう子だよ。」
「科戸ちゃん?」
「う、うん。」
知っているのかな?
「その子と仲いいの?」
「いやまぁ席が隣でたまに話したり助けてもらったりするぐらいかな?」
「そう、ならよかったわ。」
なんだったんだ?この母親はちょいちょい過保護なところが出てくるなぁ。まぁそれも愛の一つなのだろうか?
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ふぅ。いくら簡単とは言えども単純に書かなければいけない文字が多いから面倒で時間がかる。
ピーピー
お?できたのかな。開けてみよう。
パカ
おおお。いい感じじゃないか。
「あら?出来たの?」
「うん。」
「見せて見せてー。いい感じじゃなーい。」
「食べよう。」
「そうね。晩御飯にはちょっと早いけど食べましょうか」
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「おいしい。」
「うん。おいしいくできてるわ。」
早速食べてみたのだが・・・おいしいけどなんか違うっていう感じだ。なんでだろう?すごい違うという感じではないんだけどなぁ。なんだろうなぁ。記憶に引っかかる味から遠のいた感じだ。ていうかなんで給食の炊き込みご飯の味が引っかかったんだろう?不思議だ。
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食事も終わり、風呂も入り、歯も磨いて、寝る準備もできた。さぁ寝よう。いい夢見れるかな~
・
・
・
竹林からこぼれた雨が滴り落ちる 瞬間 一閃 投擲武器を木刀で弾く
「お見事です。」
「・・・いやまだだ。まだあの方には届かない。」
「はぁ。・・・いい加減やめませんか。その呼び方は。あくまでも同級生ですよ。」
「私ごときがあの方の名を呼ぶなどおこがましい話だ。」
「\\\\様・・・」
「いいから修行の続きをするぞ。」
「はい・・・」
雨が滴り身を濡らす 何が為に刃を研ぐ
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