第5話学校に行こう
ジューというフライパンで何かを焼く音で目が覚める。一瞬もう一回寝ようかと思ったが、チン、というパンが焼き終わった合図で起きることにした。
「おはよう。今日はいい天気だから、洗濯物外に干していくから帰ったら入れてね。」
「う、う~ん。わかった~。」
制服に着替えてパンの上に目玉焼きをのっけて食べる。あれ?パンを食べるのって2,3年ぶりぐらいかも?俺はご飯派なのだ。モグモグ。ウ!
「こらこら、ゆっくり食べなさい。」
そう言って俺の背中をさする。こういうちょっとしたスキンシップ一つ一つに愛を感じていた。
色々な感覚で夢ではなかったことを確認し、安心する。家族っていいなと思った。あと、寝て記憶の整理がついたのか、色々引き出せたのだ。まず一つ目。この家族は今三人家族で父親は6年前に亡くなっているらしい。そして俺には姉がいて、今は高校二年生で進学校の寮に入っている。次帰ってくるのは夏休みらしい。眼鏡をかけているらしいが容姿はあんまり思い出せない。仲は良かったっぽいけど、途中でちょっとぎこちなくなってしまったような?ここら辺の記憶は会わないと思い出せない気がする。母親は働いているようだ。帰宇時間も昨日が早かっただけで普通は6時から7時ぐらいに帰ってくるようだ。
あと、俺は小学2年生で片道約500メートルぐらいの所にある小学校に通っていて、幼馴染の
ピンポーン
「ぬーいー学校行くわよー」
「ほら、つむくん。かえしちゃんが来てくれたわよ。行きなさい。」
・・・・幼馴染の名前は真艫
まとも
楓詩
かえし
。ちょっと目がきつい感じだが、顔は整っていて可愛いというより美人という感じだ。性格は目とは違って優しい子らしい。どうやら物心がつく前からの付き合いらしい。隣の部屋に住んでいるようだ。まぁ、こんなもんかな?続きはまた後で思い出すことにしてと。
俺はパンをスープで飲み込んでランドセルを持って家を出た。
「おばさーん。いってきまーす。」
「いってらっしゃーい」
楓詩は扉を閉めるとどうやら雰囲気の変化に驚いたようで、
「おはよう。ちょっといい顔になったんじゃないの?おばさんも元気になってたしなんかいいことあった?教えてよ。」
、といった。そうか。俺は昨日まで完全無気力状態だったのか。その間、約三か月もの間こいつは俺のことをずっと支えてきてくれたのだ。なるほど、目元のきつさなんて全く気にならない優しさである。俺は心の底から感謝したいと思った。
「今までありがとう。俺こっから元気取り戻して頑張るから。」
心配かけまいと思って言った発言だったのだが、
「あんたはもう十分頑張ってるんだからそんなに気張らなくていいの。」
と言って俺を抱きしめた。・・・・・こんなことできる小学二年生なんているのだろうか。感動した。が、泣くわけにはいかない。
「ありがとう。ありがとう。」
そっと離れて学校へ歩くことにした。一緒にあるいていたが何も話せなかった。お互いあんなことをいっていたが、やっぱり恥ずかしい。あまりに恥ずかしい出来事だが、これはきっといい思い出になるだろう。そうこうしているうちに学校には着いた。
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楓詩とは違うクラスだから、教室の前で別れて、「なんかあったらいいなさいよー」といった。
うるっときてしまった。あの子はどれだけ人の涙腺を刺激したら気が済むのだろうか。しかし泣くわけにはいかないので、グッとこらえて教室に入った。
すると、
「よう。元気か。」
っと声をかけてきたやつがいた。こんなあいさつ陰キャの俺からすれば月より遠い世界だが、今は白南風 縫結なのだ。礼儀をもって
「おう、元気だぜ」
と返した。そうすると、驚かれてしまった。もしかしたら、無気力状態の俺は挨拶もできないぐらい衰弱していたのだろうか?(俺は元気でもこういう挨拶はできなかったのだが。)
そして、俺の隣の席の奴も俺を見て驚いていた。誰だ?今さっきの奴はわかる。たまにある協力して何かをしなければいけないときや、何かで近くにいるときに話したりするぐらいの奴だ。二人組を作らされるあれ(通称陰キャ殺しBY俺)はこいつと組んでいるようだ。えっと・・・名前は・・・そう、田中 大地だ!こいつはわかる。でも、こいつは誰だ?俺は二年生になってからの一ヶ月はずっと無気力状態だ。無気力状態の頃のことは思い出せないため、恐らく田中 大地は一年生のときからの知人なのだろう。ということで、学年が上がりクラスのメンバーが変わって初めてあったということだろうか。まぁ、色々深読みしているがめちゃめちゃ無気力だった隣の奴がいきなり挨拶を返すようになったら驚くものか。
おっと、もうあと五分でチャイムが鳴るのか。急がなければ。
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チャイムが鳴って十五分ぐらい本を読む時間があった。静かになったとき、至近距離からのチラ、チラという視線を感じ、視線の方に向くと本を読むふりをしながら俺を見ていた。そんな彼女の第一印象は、ふっくらだろうか。これぐらいの歳の子供の印象はがりがりかふっくらという二択ぐらいしかないと思う。こいつはいい感じのふっくらタイプだ。とても柔らかそうで、抱きしめてみたいと思う。ただ、本人の弱々しさの影響か、とても犯罪的な興奮に自らの欲望の恐ろしさを感じる。じっと見ているとそんな気分になってしまう、そんな容姿だ。が、流石に見すぎたようで、
「な、なにかな?」
といって照れて本で顔を隠してしまった。「ふっくらしててかわいいね。ぐへへへ。」なんて言ったら泣いてしまうだろうか。まぁ俺は犯罪者にはなりたくないから言わないし、今のご時世セクハラは許されないものだからな。
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本を読む時間が終わるチャイムが鳴った。すると、一人の男が入ってきた。どうやら今思い出せないということは今年入ってきた先生だと思われる。そして、
「はーい。朝の会をやってください。」
と言った。すると、俺の前の席の2人が立った。ということは明日は俺とこのふっくらロリの番か。それにしても朝の会ねぇ。司会をすることになれるためなのかどうかはわからないが、そんな能力1部の人間が持っていればいいと思うのだがなぁ。
「出欠をとります。先生お願いします。」
お!これは全員の名前を呼ぶタイプだろうか。ありがたい。よく聞いておこう。
「安藤 大輔」 「はい」
・
・
・
・
「しなと なみ」 「ハイ」
よし、この隣のふっくらロリはしなと なみというようだ。どんな漢字を書くのかはチラ見したらいいかな。おっと、こいつの次は俺か。
「白南風 縫結」 「はい」
少し動揺した目をこちらに向けている。が、それはほんの一拍ですぐに次の名前をよんだ。
「瀬川 ・・・・
・
・
・
・
「吉田 舞」 「はい」
「はい、全員ちゃんと来れていますね。先生は嬉しいです。これを毎日続けてください。じゃあ、日直さん朝の会のつづきをお願いします。」
覚えていた名前はこの中で三分の一ぐらいだ。それで、頼りになりそうなやつは最初の田中だけだろうか?まぁ、これから名前をちゃんと覚えて人間関係をどうにかしていくしかない。陰キャの俺には難しいかもしれないが、これは白南風 縫結とその周りの人たちに対する最低限俺がやらなければいけないことなのだ。
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キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン
まず一時間目の数学、違う。算数の授業を受けた感想だが、つまらないの一言である。馬鹿にしてんのか?というレベルの授業スピードである。まぁ8歳だしね。そんなもんだよね。でもなぁ、これ、こっから4年間は小学生なんだろう?大丈夫か?授業中なんか違うことしてみるか?席は後ろの方だ。こっそり何かを持ち込んでもっと違うことの勉強をするのもありなんじゃないだろうか。とくに英語だ。俺は英語がほとんどできなかった。どっからやるべきかはわからないが、英語をどうにかしておいて損はないだろう。とても面倒でつらいことだがこの意味もない話を永遠に聞かされるよりかはましだ。この土日でどうにか手に入れておこう。
さぁ、次は国語かぁ。もうそろそろ休み時間も終わるし教科書をだしとくことにしよう。
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グエアーーーーーーーーーーーーーーーー
IQとろけるーーーーーーー
辛い。辛すぎる。まさかここまで国語の授業が苦しいものだとは思わなかった。もうあまりに辛すぎてふっくらロリこと科戸
しなと
ちゃん(この授業でよかったのはプリント学習だから漢字がわかったことだけだな。)から、いろいろな情報をコソコソ紙に書いて教えてもらうことにしていた。やべぇ。こんな授業を受けてたら頭がトロトロになってしまう。もう切り替えよう。よし。次の授業はなんだ?あっ体育か。周りの奴らがなにか取り出していると思ったら体操服だったのか。俺も体操服を~
「白南風、今日はどうするんだ?元気になったら参加してみたらどうだ?」
うわ、びっくりした。誰かと思ったら担任か。膝を曲げて椅子に座っている俺と目線を合わせて話している。親身といえば親身な対応だが威圧感があるというとらえかたも出来る。だがここは普通にとらえて話すか。
「あっはい。今日から参加します。」
「そうか、良かったよ。お前が元気になってくれて。それにしても何があったんだ?好きな子でもできたのか。」
こてこてなセリフだ。まぁ、この年頃なら好きな奴がいてもいなくても焦った感じで否定するものだが・・・まぁそんな演技まではしなくていいかな。
「そんなことないですよ。疲れがとれたんですよ。」
「そうか。先生もすごい疲れてるからどうやったら疲れが取れるかあとで教えてくれ。」
そう言ってセンセイは全員に
「ほらさっさと男子はグラウンドいけよー!誰か遅れたら全員グラウンド走らすからなー」
という連帯責任の精神を植え付ける定番のセリフを言った。本当にこいつはこてこてのイイセンセイだな。
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女子は教室で、男子は体育館の更衣室で着替えるらしく、着替え終わった頃に女子がチラホラ体育館に入ってきた。体操服は生足がしっかり見えるなかなかない機会だ。まぁ、小学生の足にはそんなに色気はないけれど・・・
「ほらほら、背の順に並べよー」
え、背の順?俺はどこ?グエ!
「おい、お前はこっち。」
服を引っ張って俺の場所を教えてくれた。今の俺は純粋に感謝できるのだが、当時の俺はこういうことをする奴があまり好きではなかった。むしろ嫌いだったかもしれない。まぁそれは当時の話だ。今の俺は
「ありがとう。」
と小声で言うことにした。
「ん」
と返された。なんだろう。やはり俺は無気力状態の3ヶ月で浮いた奴になってしまったのだろうか。まぁ、こんなとこの人間関係なんてどうとでもなる。気にするな。
「はぁい、じゃあ日直さん?」
教室でバカなやつがやったらと言っていた「はぁい」はこれか。子供のセンスはよくわからんな。
「きをつけ!おねがします。」
「「「おねがいします。」」」
「はいじゃあ準備体操をしてください。」
あぁ、準備体操を前でする専用の係がいるのね。おれは絶対に選ばない係だな。俺は図書係をやっているらしい。どうやら科戸ちゃんと二人でやっているらしい。(これは予想だが、俺は一回も仕事をしていないと思う。)まぁ多分座っていりゃあいいからというので先生が選んでくれたんだろう。あの先生もまぁまぁ気が利くという純粋な捉え方で感謝しておこう。
「ちゃんと声出せよー」
「「「イッチニサンシー」」」
・・・・これ声出してたやつがより出してるだけだよなぁ。
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キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン
「はぁはぁ。お前強すぎだろ。」
「なんで今まで体育やってなかったんだよ。」
「さぼり野郎」
3点か。この体のスペックを調べるといえやりすぎたかもしれない。まぁ、この歳だとどんなスポーツでも(今回はサッカーだった。)多分ある程度の活躍ができるな。まぁ、4.5人やってる奴はいたからそんな奴らには負けるけど。
「お前こんだけ動けるんだなぁ。お前も放課後のサッカークラブに入ってみたらどうだ?」
「遠慮しときます。」
。俺は最低でも5年はやってる。才能はなかったけど初心者や未経験者には負けない。(弱い奴相手にイキる陰キャなんて思わないでくれ。)でもまぁ、
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体育の次の授業は音楽で、教科書の楽譜を鍵盤ハーモニカで弾くという授業だった。この授業だけは別のことが出来ないな。まぁでもとなりのふっくら科戸ちゃんにから教えてもらえるからいいかな(体の元持ち主も俺も鍵盤は弾けないから教えてもらっているのだ。)
曲名はあめふりだ。?思い出せないな。俺は確か雨が好きだったのだが・・・なんで好きなんだっけ・・・。深い意味なんてなかったんだっけ・・・・
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給食のじかんと言えばうるさくなるのが小学校。ここも例外ではなく
「「ジャンケンポン」」
「「あぁいこでしょ」」
「「あいこでしょ」」
「ウェーイ!」「ウワー」
うるせぇ!
「ねぇ、なんで急に元気になったの?」
「そうそう、なんでなの?!」
周りの女子もうるせぇ!が、しかしこれは答えなければならない。興味深そうに話を聞いてる科戸ちゃんのためにも適当な嘘をつくか。
「いや、ちょっとね。病気が治ったんだよ。」
「へぇー。そうなんだぁ。」
「どんな病気なのぉ?」
え!?う~ん。まぁちょっと小難しいこと言っとけばいいか。
「神経の病気なんだよ。」
「え~それは大変だね~」
「いやぁ、凄い大変だったけど今日からは頑張るよ。」
「へー、仮病じゃねーんだ。」
どかっと斜め前に座って納得してんのかしてないんかよくわからない声で話しかけてくる。ま、こいつは多分前の体育で点を取れなくて俺に食って掛かってきてるだけだろう。
「俺はてっきり事故で頭打っておかしくなったんだと思ったぜ。」
「え?いやまぁ、それもあるかもね。ハハハ。」
「なんだそりゃ。」
話は終わったとばかりにずずーと汁を飲みだした。ふ~ん事故なのか。じゃあいっか。母親は死因を隠していたみたいだけど事故ならそこまで隠す必要もないとおもうんだけどな~。まぁトラウマになって外を歩けないようになったらまずいか。
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昼休みか。図書室で過ごそうかな。いい本があるかもしれねぇ。えっと図書室は~っと
「ぬいー。ちょっときなさーい。」
楓詩か。
「おう。今行く。」
「いい夫婦だなー」
「「ギャハハハ」」
「そ、そんなんじゃないからー。ほら、行くわよ、ぬい。」
「え、ああ。」
人はいつでもこういう話題がすきなんだな~っとあきれていた。
楓詩は俺と手をつないで図書室に連れてきてくれた。そして席についた。ここが図書館か。良かった。俺は地図を読んだり知らない場所に行くのが苦手なのだ。
「どう?何もなかった?」
「うん。なんもなかったぜ。」
「そう。よかったわ。また何かあったら言いなさいよ。」
「うん。また言うよ。」
「みんなを悲しませるようなことしたら私許さないから。」
強い子だ。きっと死ぬ前の俺よりも強くて優しい心を持っている。でも、その心にいつまでも頼るわけにはいかないのだ。だからそのために、
「俺さ、放課後の剣道に参加してみようと思うんだ。」
結果が出せなくて辛くて、苦しくて、才能の差が悲しいぐらいわかってしまう。俺にとって剣道は苦しみと悲しみの塊でしかない。でもそれは勝利にこだわった過去の話だ。結果は出せなくていい。勝てなくてもいい。でもせめて、俺を心配してくれるような人を守りたい。そんな意思をもって俺は剣をもう一度握ることにする。
「そう。でも帰りが遅くなるんじゃない?それに道具のお金とかは?」
「大丈夫。道具は貸してもらえるらしいし、もう一人で帰れるよ。こんだけ動けるし。」
「そ、そう。そうね。ならいいんじゃない。私も友達と帰りたかったし。」
「うん。いままでごめんな。不自由ばっかりさせて。」
「あやまらなくてもいいわよ。」
「じゃあ、ありがとう。」
「そうね。ありがとうのほうがいいわ。」
「そうだね。気分もいいしね。」
「ぬいはポジティブにならなきゃね。」
・・・まるでカウンセリングのようだ、と会話を続けていて思った。俺はやっぱりこの強さと優しさに甘えてしまっている。ここらへんで打ち切らなければならない気がする。どんな生き物でも一度何かに甘えたら抜けれなくなってしまう。この二度目の人生でそれを繰り返してはならない。
「俺、疲れていた間の事とか曖昧だし掃除場所の確認とかやってたらちょうどいいぐらいだから行ってくるよ。」
「そ、じゃあいってらっしゃい。」
「おう。行ってくるよ。」
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掃除も終わり、5時間目の地獄の国語も耐えきった。剣道の練習は毎週水曜日のようだから今日はもう下校だ。早いね。想像はしていたがここまで小学校は楽だったのか。
・・・まぁでも今から俺はいじめがどのようになっているのか見に行かなければいけないからプラマイゼロか・・・・
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