第4話笑顔のための命

 エレベーターには乗らずにマンションの2階に上がる。確か死ぬ前は何かに恐れていたのか、何に勝とうとしていたのかわからないが、ただただ強くなりそうなことをやっていた。その影響でエレベーターを使うことがなくなったのだ。今思うと死ぬ前は本当に余裕が無かった。あんなのでは一生あいつには勝てないだろう。まぁ、あいつの名前ももう思い出せないのだが。ふぅ。せっかく二度目の人生が俺にやってきたのだ。死ぬ前のことで一々悩むのはやめよう。夕焼けが綺麗だ。きっと明日は晴れるだろう。

 階段が終わった。ふぅ。体が小さくなったせいか、一段一段が大きく感じる。結構疲れてしまった。もしかしたら、色々あって精神的な疲れもたまっているのかもしれない。そう自覚すると涙が止まらなくなってしまった。涙で霞んで扉の鍵が開けられない。

「あれ、つむくんどうしたの?なんで泣いてるの?」

急に回り込まれて抱きしめられてびっくりはしたが、すごく安心する暖かさだ。

「お母さん。」

「どうしたの?何があったの?」

すごく真剣な表情で俺を見るのは母親だ。こんな優しさと無償の愛を感じる機会なんて死ぬ前にあっただろうか。あぁ、死ぬ前のことで悩むのはやめようと決めたばかりなのに。

「何でもないよ。ほんと、ちょっと疲れただけだから。」

「本当?何かあったらすぐ言ってね。」

そう言ってぎゅううっと抱きしめた。この苦しさはなんだろう。

「じゃあ、お家に入ろうか。」

「うん。」

母が鍵を開けて家に入り、俺は自分の部屋に入った。色々心の問題を解決し終わる頃に

「ごはんできたよ~。」

と部屋の扉を開けた。

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今日の晩御飯はハンバーグだ。

「美味しい!」

「それは良かった~。今日はね、ひき肉が安かったからの。つむくん喜んでくれてお母さんも嬉しい。」

そう言って笑いあった。俺はそのタイミングでも泣きそうになってしまったが、心配はかけたくなかったのでぐっとこらえた。

「お母さんね。つむくんがいま元気にしてくれていることが本当にうれしいの。」

ん?どういうことだ?こういうことを子供に言うのは不思議ではないと思うが、何か引っかかる。

「病院に運ばれた時は、本当に死んじゃうかもしれないってお母さん怖かったの。それに、手術がうまくいったのに今まで二、三か月元気がなくてふらふらしてたのも本当に悲しかったの。でも、今日は急に元気になってくれて不思議だけど嬉しいわ。」

・・・話を聞いているとなんとなく、俺がこの体に転生した理由、きっかけ、意味が分かった気がする。この子死因はわからないが、この子はもう死んでいる。しかし、この子の魂はギリギリまで体に張り付いていた。しかし、魂は今日どこかへ行ってしまった。そこでさまよっていたのかどうかはわからないが俺がこの子の体に乗り移ってしまったようだ。まだこれが真実と断定できたわけではないが、きっとこんなところだろう。なるほど・・・・・よし、今この瞬間俺は覚悟を決めた。俺は転生したことを永遠に隠し続ける。そう、俺は白南風 縫結だ。俺にかかわってくれている人たちの笑顔を守る。それがこの命の理由、意味だ。

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食器も片付き、布団が敷けたころには物凄く眠たくなっていた。

「お風呂に入ってから寝なさいよ~」

「う~ん」

眠たい。いま風呂に入ったら。風呂で寝てしまう。

「お母さん明日も仕事だから早く寝たいし一緒に入ろっか」

え!?どうしようか。なんて考える暇もなく

「さ、脱いで脱いで。」

人に脱がされるなんてこと多分今までないのではないか。物心がついたときには一人でやっていたし、俺はむしろ世話をするために服を脱がせる側の人間だった気がする。感傷に浸っていると生まれたままの姿になっていた。ストッキングをぬいで、そして、ボタンを外し、一糸まとわぬ姿になっていくのを見ていると、

「なによぉ。エッチな子ねぇ。」

なんて言われてしまった。まぁたぶん冗談だったのだろうが、俺はかなりドキッとした。

「ほ~ら。風邪ひくわよ~。」

という声で我に返り、ふろに入ることにした。

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エロゲになるとしたらここはCGが入るとこですね。

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髪を洗ってもらっている間はなにか家族らしさを感じていたが、途中で流れが変わった。

「あわあわあわあわ~」「にゅるにゅる~」

IQの下がりそうな掛け声で楽しそうにしている母。俺はヤバイと思っております。そう、この家のふろの入り方が異様なのだ。なんでこんな事になるのかどうかわからないが、あかすりで全身洗った後に全身を全身でこすりつけあうという行為に入ったのだ。ヤバイ。にゅるにゅるという洗剤の感覚と自分より一回り大きい体で後ろからムチムチとしたふとももに挟まれたり、たれ気味のおっ〇いや、お腹の柔らかい肉感を感じさせられている。あれ、なんかこれやばいことしてないか?そんな気はしているが快楽に飲まれてしまって止める気になれない。というか、これを止めるのは野暮な気がする。そう、止める方が野暮なのだ、という言い訳も頭から消え去るぐらい気持ちいい。そして姿勢を変えて、お互い前から抱き合って全身をこすりあっている。ヤバイ。気持ちいい。なんかだめだと思うんだけど、なんでダメなのかとかが分からない。なんだろう、下半身から何かがこみ上げてくる。く、ふぅ。何かが出てしまったような気がするが、風呂場で尿を出すのは確か禁止されていた気がする。今出たのが何なのかわからないがこれは黙っていよう。

そうこうしているうちに、全身洗い終わったのか、シャワーからお湯を出し全身の泡を洗い流した。

「さっぱりした?」

「うん。」

「よかった~」

もう無気力でうんとしか言えない。

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おれはそのまま、寝ようとしていた。が、

「ほら~、眠いならお母さんが磨いてあげるから。」

と言って正座し、太ももをポンポンと叩いた。・・・甘えてしまっていいのだろうか?よくない気がするが・・・・今日ぐらいはいいか。そう思って太ももに頭をのせて歯を磨いてもらった。

「甘えん坊さんのつむく~ん」

と言われてちょっと恥ずかしかった。まぁ、今日はいいのだ。明日、明日は全部ひとりでしよう。

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いよいよ本当に眠くなり、お母さんと一緒の布団で寝た。どうやら家のルールで自分の部屋には布団がないのだ。どうやら勉強中に寝るのを防ぐためらしい。なるほど一理ある。まぁ、布団は3個あって一緒に寝る必要はないのだが。そこを追及するのは野暮な話だ。おやすみと言い合って寝る。いい夢見れそうだ。

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