第3話赤島 奉ルートその1 急な変更があるかもしれません。ご了承ください。(;^ω^)

「はう?」

 ヤバイ。鏡をみる一瞬前に想像をしていたがやはり受け入れがたいものがある。恐怖を感じる。鏡を見たら本来見えるものとは違うものがみえるということ。しかし、顔をじっと見ていると前からこんな顔だったような気もしてくるという矛盾した感覚に体が震え上がるのを感じる。

「というか、なんで鏡がいるの?別に顔にはなんもついてないよ?」

「いや、何でもないよ。いま俺どんな顔してんのかなーって。ははは、あっ鏡ありがとう。」

「ふ~ん?」

 どうにかなかったことにはしたが、これからどうしようか。こんな事態を誰が信じるのだろうか。このことを誰かに相談するのはとりあえずやめて今の自分がどんな存在なのかの情報をあつめることにしよう。しかし、どうやって情報を得るというのか?今の俺は誰だ?今のこの体の名前は?いや、俺は何でショタになっているんだ?この体の持ち主はどうしたのか?入れ替わったのか?いや、それはない。あの体は心臓を突かれているから多分助からない。ならどうして?この体は死んだときにできたものなのか?こうしてパニック状態になっていた俺に

「ねえ、キミの名前教えてよ」

 と、問いかけた。その瞬間。とても焦ったが、7文字の言葉が浮かび上がってきた。

「しらはえ?つむぐ?」

「なんで疑問形なの?」

「やっぱり我ながら漢字が分かりにくい名前だな~って。ははは。」

「なんか君変な子だね。まぁいいけど。それで、どういう漢字なの?」

 まぁいいけどで済ませてくれたことが本当にありがたいが、本題は漢字だ。えっと?俺が一番知りたいのだが・・・・・何だか勝手に頭に浮かんでくるな。この何かが自分の中から沸き出てくる感覚。今はありがたいが、金輪際味わいたくない感覚だ。でもまぁしかし、これではっきりしたことがある。この体はもともと誰かが使っていた。それに乗り移ったような感じだと思う。まぁこのことはじっくり後で考えるとして

「えっとね、白色の白に、東西南北の南、花鳥風月の風で白南風

しらはえ

。裁縫の縫うっていう漢字に結ぶって漢字の2文字で縫結

つむぐ

って読むんだよ。」

「確かに分かりにくいね。」

「紹介するたびに大変なんだよ。」

「大変な紹介をしてくれてありがとう♪」

 そう言って手を伸ばして髪をわしゃわしゃしてくる。何だかとても恥ずかしい。

「やめて、やめてよ。」

「ふふ、顔すっごくああかくなってる赤くなってるよ~」

「そ ん な こ と よ りお姉ちゃんの名前教えてよ。」

 お姉ちゃんと呼ぶのが恥ずかしいからというのと、このわしゃわしゃを止める為にも名前をきくことにする。

「そうだね~。ふふふふふ。私の名前は凪

なぎ

花芽李

かがり

だよ。」

 俺は人の名前を覚えるのが苦手なのだが、覚えやすそうな名前で良かった。

「凪さんね。よろしく凪さん。」

「なんか、距離を感じちゃうなぁ。」

「じゃあ、花芽李さん?」

「う~ん。もう一声」

「か、花芽李ちゃん?」

「よろしく縫結くん♪」

 これ・・・大丈夫だろうか・・・・


______________________________________________________________________________________

「私たちね、もう幼稚園からの付き合いで結構長いんだけどこんなことになったのは最近のことなんだよ。小学生の時なんか・・・」

 俺は時がたつにつれて嫌な感覚を味わいながらこの体の持ち主の情報を少しずつ引き出していった。その情報の中に住んでいる家の場所があり、どうやらお互いの家の距離が割と近いことから一緒に帰ることになった。そして、その間に一番聞きたかったいじめていたやつの話を聞いた。そいつの名前は『赤島

あかしま

まつり

』というらしい。幼稚園からの幼馴染で今までは仲良くやっていたそうだ。だが、最近になって関係が急に悪化したらしい。暴力をふられたのも今日が初めてで、心底ショックを受けたらしい。もっと知りたくなってきた。

「なんか原因とか心当たりとかないの?」

「そうだよね~。あることにはあるんだけど・・・怪しいかな~これなのかな~ぐらいのが一つあるぐらいなんだよね。」

 どうやら確信は持てない程度の心当たりがあるようだ。

「それぐらいでいいから教えてよ、花芽李ちゃん。」

「えへ、えへへへへ。なんかやっぱり照れちゃうな~。」

 今からでも遅くない。俺も恥ずかしいからやめないか、と言いたい。が、女の子をちゃんづけで呼べるの機会は俺みたいな陰キャにはもうないかもしれない。これがジレンマというやつか。

「えっとね。まっちゃんね。あ!まっちゃんっていうの奉ちゃんのことね。で、まっちゃんは1ケ月ぐらい前に一緒に高校に行こうとして家の前で待ってたら凄い暗い顔してたんだよね。」

「ふ~ん。失恋とか?」

 こういうのはズバスバ聞くのが一番だ。

「それはないと思うよ。ずっと一緒にいたけどそんなことなかったよ。」

「じゃあ家族の問題とかかな?」

 だとすれば俺は介入しにくい問題だ。

「それもないと思うよ。家族ともめた話は今まであったけどそのときは私に相談してくれたから。」

 なるほど。それもそうか。まぁ俺には家族の話をするような友達もいなかったけど。

「じゃあ、環境の変化でイラついてるとかかな?花芽李ちゃんは高校1年生だよね。」

「え!よくわかったね。」

 自転車の後ろのステッカーを見ると学年とクラスと出席番号が書いてあるからな。それに、正確な日時はわからないが、この暖かさと涼しさの感じからして今は春だ。

「じゃあ、1年生になって1ヶ月ぐらいで情緒不安定になっているだけなんじゃないかな?」

「情緒不安定って、君結構難しい言葉色々知ってるよね。」

 た、確かに。この年で使わないような言葉を今までも使ってきてしまっているかもしれない。まぁ、これぐらいの年だと難しい言葉を好んで使いたがるヤツなんて一定定数いるし、変だと思ってもだからどうしたという話である。たぶん大丈夫だろう。

「はぁ、私なんてその年の頃なんか二桁の割り算もできなかったのになぁ」

 こいつはいつのまにか黄昏ている。やっぱり大丈夫だろ。うん?引き出した記憶が正しければあれは

「マンションクロクロってあれのことかな?」

「うん。あそこの203号室だよ。」

 たぶんな。

「そっか。今日は本当にありがとう。またね。縫結くん♪」

「バイバーイ」

 俺は子供のようにいや、子供らしく手を振った。花芽李ちゃんも子供のように振り返してくれた。

 花芽李ちゃんはちょっとキョロキョロして、自転車に乗って目に見えるぐらい近くにある2階建ての家に入っていった。

 はぁ、さて、俺もお家へ帰ろう。

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