ティーン・パニック

@hiro2003

第1話【差別】

1話【差別】


【ティーン人には近づいちゃだめよ。わかった?】

いつも出かけるときに母親にそれを言われる。

【・・・わかった。】

ユウタは返事をする。


学校へ通学している時、ユウタの弟であるタロウに言われたことがあった。

【お兄ちゃん、なんでティーン人の子と仲良くしたり友達になっちゃだめなの?】


【・・・それは】

ユウタは何かを言いかけた。


【それは?】

タロウはこっちをじっと見る。


【・・・簡単に言えば、俺たちがティーン人を差別してるんだよ。】

ユウタは言った。


【・・・なんで?】

タロウが即聞いてきた。


【・・・そもそも昔はティーン人も俺たちも全員同じ国民として共に働いたり、遊んだり、学校も同じだったけど、30年前に[ティーン]っていう薬を使って、この国や世界を支配しようとした人間が何人かいたんだ。それでその人間達との血縁者がティーン人と呼ばれて、今差別されてるんだ。ちなみに、ティーンを扱った人はもう全員処刑された。今のティーン人はその子孫だけしかいないらしいよ。】

ユウタはそう言った。


ドン!ドン!ドドン!


タロウはいきなり地乱打をしはじめた。


【・・・・そんなの、ひどいよ!!今を生きているティーン人は、なんにも酷いことはしてないのに!僕たちの方が・・・よほど酷いやつらじゃないか!】

タロウは泣いている。


【・・・なんで、泣いてるの?】

ユウタはおそるおそる尋ねた。


【なんでって、わからないの!?ティーン人は僕たちを見るといつもびくびくして怖がってるんだよ!?僕が話をかけようとすると、【ごめんなさい】って、何故か謝ってくる・・・そんなの可哀想だよ!】

タロウは言いきった。


【・・・お前、まさか、ティーン人とコミュニケーションをとろうとしたのか・・・?】

ユウタはタロウから一歩あとずさりをした。


【うん。】


【はあ!?お前、お母さんにいつも関わるなっていわれてるだろ!?その理由も知ってるだろ!?】

ユウタは怒鳴る。

【・・・いや、知らない・・・けど、僕はどのみち・・・】

タロウは何かを言おうとしたがやめておいた。


【まあ、とにかくティーン人とは関わっちゃダメなんだ。わかったな?】

ユウタがそう言うと、もう小学校に到着した。

【うん、わかった。】

タロウが返事をすると、学校の中でわかれた。

なぜなら二人は同じ小学校に通っているが、もちろん年齢がちがうのでユウタは小学6年生。タロウは小学2年生。だからだ。


ガラガラガラ・・・


タロウは教室の扉を開けた。

【お!タロウやん!お前、昨日ティーン人に話かけてたべ?マジでやべーな!お前もじつはティーン人なんじゃねえの?】

タロウのクラスメートのケンタが意地悪な口調で言ってくる。

【・・・うるさい。】

タロウはぼそっと言い返した、つもりだ。

【あ?ティーン人と一緒にされてそんなに悔しいのかー?】

ケンタが煽る。

【・・・・ティーン人が、可哀想だろ!!】

タロウはついに怒った。

【はあ?親もよく言ってんぞ、ティーン人は汚い人種だってね。】

ケンタがさらに言ったその瞬間───



【本当にすみません。医者料は払います。】

母親が学校で誰かの母親に謝罪しているところをユウタは見た。


【お母さん・・・?】

ユウタは背伸びして見た。

しかし、そこにはタロウの姿と、タロウぐらいの背の高さの少年がいた。

ユウタはなんとなく察した。

【・・・タロウのやつ、また他人を殴ったのかよ】

そう、タロウはケンタの顔を殴ってしまった。

でも、正直いつものことだとユウタは思い、普通に家に帰ることにした。


【あーあ、なんで俺にはあんなに面倒くさい弟がいるんだよ・・・】

ユウタがため息をついた時、


【そこの少年】

ふと、左の方から声が聞こえた。


【げ、マジかよ。】

ユウタは汚い物を見る目でその声の主を見た。


声の主はティーン人の老人だった。


【てゆーか、セーフラインギリギリだな・・・】

じつはティーン人の活動できる領域はユウタのいる街にある村のようなところだけである。しかも、その村は高さ15メートルぐらいの網みたいなフェンスで囲まれており、村の出口は[セーフライン]という1本の線である。しかし、ティーン人はもちろんセーフラインを越えてはならないのだ。越えた瞬間、警官に捕まる。場合によっては射殺される。セーフラインにはいつでもセンサーが張ってあり、触れると警報がなる。


【なんだよ、ティーン人。】

ユウタはにらみながら問う。


【やれやれ、ついに我々は子供にもそんな目で見られるのか。】

老人は落ち込んだ。

ユウタは老人の落ち込み具合を見たらふと弟の言っていた【可哀想だよ】を思い出した。

【人間様のお坊っちゃん、少しお願いがある。サブロウという警官をここまで呼んでくれないか?】

老人が急にユウタに頼んできた。

【は?ティーン人のお前のためにわざわざ警官が動くと思うか?てゆーか、なんで俺がそんなことやらなきゃいけねぇんだよ。】

ユウタは尖った口調で言い返した。


【おい、いいのか?お前の家族がどうなっても】


【・・・え】

急に老人が【家族】という言葉を使い脅してきた。それと同時にユウタはとてつもない恐怖を感じた。


【・・・わかったよ!呼んでくればいいんだろ?】

ユウタは焦って警察署へ走った。


【さっきの、なんか、とにかく怖かった。なんでだ?】


──つづく──



次回【症候群】

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