第弐ワ 彼女の噂
彼女、東條菖蒲の噂は絶えない。
僕のクラスにいる東條菖蒲は『異常』だ。
その見た目から、いろんな噂が彼女に対し常につきまとっている。
僕の知っているものだと彼女のモザイク処理はやはり顔を隠すものだと言う人が
多い。
ある人は『彼女は人知を越えた美貌の持ち主。その美貌故に見たものは石化される。だから神は彼女の美貌をモザイクで隠したのだ』と
またある人は『彼女はSAN値が下がるほど醜い顔だ。その醜い顔を隠すために超常的な力が働き顔にモザイクがかかった』と
どれも確証はない。
何人かが彼女に直接聞いたこともあるらしい。だが、彼女は答えなかった。答えることがなかった。
彼女はまるで美術館に飾られた絵画のようにただただこちらを見るそうだ。
彼女に対し、質問者側はまさに無言の圧力をかけられたらしい。
それ以降彼女は一部の人からこう呼ばれるようになった。
『異常』と。
誰しも聞かれたくないことのひとつやふたつはあるだろう。しかし、彼女の場合はそれが冗談で聞くようなことではないことは確かだ。
彼女の秘密は神のみぞ知る。
そんな彼女を僕は・・・
「おい、佐藤。さーとーう」
「あ、え、なに?」
「何?じゃねーよ。もうみんな移動したぞ」
「あ、次移動教室だっけ?」
「そーだよ。たくっ、どうしたんだよボーッとして」
僕に話しかけて来たその童顔過ぎる見た目と年齢が合わないこいつは橘桜太。
中学からの付き合いで、同じ高校に進学した。
「早く行こうぜ」
「おう」
俺は次の授業で必要なものを机から取り出した。
するとパサっと何かが床に落ちた。
見るとそれは手紙だった。携帯が普及され、SNSを使って連絡を取ることが多くなった今の世の中には珍しいと僕は思った。
僕は床から手紙を拾い差出人を見たが何も書いてはいなかった。
でもいつ入れたのだろうか?
朝は入っていなかった。
僕はその手紙が気になり封を丁寧に開け、中身を見た。
その手紙内容に僕の体は辛いものを食べた時のように急な汗に襲われた。
文面はこうだ
『私は東條菖蒲の秘密を知っている』
モザイクな彼女に僕は恋をする 赤坂知葉也 @mash_0
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