第逸ワ 新学期の始まり
登校経路の桜並木。
桜が舞い散り、桜の花びらが僕の前を通り過ぎた。
花びらとすれ違うかのように彼女は僕の目の前にいた。
彼女は東條菖蒲。また学園内では『モザイクさん』と呼ばれている。
おいおい、まるで学校の七不思議みたいなあだ名だな。まぁ、正解と言えば正解だが、間違いと言えば間違いだ。
彼女の顔は『異常』だが、それ以外はただの女の子なのだ。
スタイル抜群、文武両道。先生からの信頼も厚く、友人にも恵まれている。
ライトノベルでのヒロインとしては充分な素質だ。
まぁそれが普通なのか異常なのかは人それぞれだろうけどな。
僕はこの物語のヒロインプロフィールをざっくりと見えない読者に伝え、彼女の隣に並んだ。
そして同じクラスの男の子が同じクラスの好きな女の子に好意を持っていると悟られないようにとても、すごく、めっちゃ普通な感じで声をかけた。
「お、お、お、おはよう、と、東條さん」
とても自然な感じだ。
さすが僕、とてもすごくめっちゃ自然だ。
彼女は少し驚きはしたが、そのあとに多分微笑みながら
『-おはよう、佐藤くん-』
と返してくれた。
彼女の表情は伺えないが、東條さんは多分微笑みながら返してくれた。
彼女が『異常』でも友達に慕われる理由がわかる。
僕たちは通学路を歩きながら日常会話をする。
大人が聞けば学生とすぐにわかるようなそんな会話だ。
『-今日の宿題ちゃんとやってきた?-』
げっ、そう言えば昨日宿題出てたな。
僕としたことが完璧に言うまでもなく忘れていたぜ。
『-もしかしてまた忘れたの?-』
出る言葉なく僕は俯く。
彼女は察したのか、ため息を吐き
『-私の写す?-』
さすが東條さん。スタイル抜群、文武両d以下略。
しかし、新学期早々に宿題を出すなんてうちの先生も酷いことをする。
今度先生に可愛いあだ名をつけて呼んでやろう。
何がいいだろうか、ここは先生が赤面して恥ずかしがるようなあだ名をつけたい
僕はそんなちょっとしたいたずらを考えながら東條さんの方を見た。
・・・まぁ東條さんに免じて許してやるか
僕も甘い。
新学期早々好きな子と肩を並べながら登校する。
僕は上を見上げ、桜の花びらを見るたびに思い出す。
1年生の頃に彼女、東條菖蒲に告白した日のことを
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