03と06
背後から届いた閃光と爆音に、とっさに振り返る。
どうやら始まったらしい。
戦っているのはゼロサンとゼロロクか。
ゼロロクが付きだした拳を、ゼロサンが受け止めている。
近くで状況を見つめている大谷とゼロフォーは動かない。
ゼロロクに協力する意思がない以上、三つ巴の混戦になる危険性が高いからな。
とりあえずダウンしてしまったゼロゴーを矢面と直江さんに任せ、俺もいつでも戦闘に加われるよう準備を整える。
そうだ、今のうちに何かしら小細工を仕込んでおくか。
いつも通りの卑怯な手段だ。
こうでもしないと勝ちようがないからな。
そんなことを考えていると、再び轟音が倉庫中に響いた。
攻防の衝撃で、古い建物が大きく揺れる。
おいおい、このままぶっ壊れるんじゃねえだろうな。
倉庫の崩壊を恐れながら、あちらこちらに積まれたコンテナに、慎重に上っていく。
上の方にワイヤーを引っかけ、引っ張りながらよじのぼる。
なんか昔こういう遊具で遊んだ気がするなぁ。
その間も攻防は繰り返されているようで、一定のリズムでコンテナが揺れた。
「先輩!!」
コンテナを上りきったところで、矢面が戦闘を横目に、下から呼びかけてきた。
「なんだ?」
「これを!」
矢面が投げてよこしてきたのは、念のため持って来ておいたゼロニーの愛刀だった。
倉庫の後ろに置きっぱなしにしておいたのを持って来てくれたらしい。
あまり使う機会は無いかと思っていたが、状況が変わった今なら何かに使えるかもしれない。
「サンキュー!」
怪人たちに気付かれないくらいの声量で礼を言った瞬間、コンテナの上に爆音が届いた。
小細工のために、良い場所を探しながらコンテナの上をひょいひょいと渡り歩く。
コンテナとコンテナの間を飛び越えながら、ちらりと戦況を見やると、さっきとは一転して静かに固まっている。
ゼロロクが劣勢、か。
「お前はずっと隠れて、我関せずって顔してただけだからなぁ!!ずっと戦ってきた俺に勝てるわけねえだろ!!」
ゼロロクを組み伏せながら、怪人が吠える。
確かにアイツの言うとおりだ。
ゼロニーを倒していたり、普通のヒールを一撃で粉砕したり、ゼロロクの持つ地力は計り知れない。
しかい、いざ戦いとなると、力だけで押し切れるものではない。
そういえばヒールを倒した時も、大振りのパンチを一発繰り出しただけだった。
技も無い、経験も無い。
一方のゼロサンは、どれだけ戦ってきたのかは知らないが、相手の動きを読んで的確に対応するセンスがある。
とまれ、結果は分かっていても下手に手を出すことはできない。
問題は脇坂が倒れた後どうするか、だ。
あるいは、戦いを中断させる?
だがどうやって?
丁度ゼロサンの後ろにあるコンテナの上にしゃがみ込み、機を窺う。
刀を鞘から抜き、目一杯後ろに引いて構えた。
同時に、状況が動き出す。
「ああ?」
突如、ゼロサンに抑え込まれていたゼロロクの体から強烈な光が放たれた。
なんだ?何をするつもりだ?
エネルギーを凝縮?
もしかして……。
次の瞬間、再度の爆発が起こり、視界が光と煙に満たされた。
要するに、ヒーロイドの必殺技と同じ。
集めておいた光を一気に爆発させ、体の周りに放出したらしい。
様子は見えない。
だが、おそらく。
「あー、これでオバヒか?」
やはり、というべきか。
平然と立っているゼロサン。
その足元には、身動きが取れなくなった乱入者。
多少は効いているはずだが、全く厄介な相手だ。
最初の必殺技もほとんど平気な顔をしていたし。
あの光には、ヒーロイドのものと同様自身を守る働きがあるんだろう。
奇襲の時にも咄嗟に光を纏ったか。
ということは、あの光を取っ払うためにエネルギーを消耗させないといけないのか。
攻略法は見つかったが、ほとんどゴリ押しだなぁ。
まあ、今出来ることをするだけだろう。
刀を持ったまま後ろに引いていた腕に、グッと力を込める。
ゼロサンをよく見て。
見て。
見て。
そして思い切り。
力の限り、刀を投げる。
「うおっ!?」
真っ直ぐに飛んでいった切っ先は分厚い装甲に命中し、高い音を立てて跳ねた。
「……そこにいたのかぁッ!!」
こちらに気が付いた怪人は弾き飛ばされた太刀を掴もうと手を伸ばす。
「……ッ!?」
しかし、その手は宙を搔くに留まった。
予め刀の柄に巻き付けておいたワイヤーを巻き取り、俺はさっき投げたばかりの獲物を素早く手に取った。
そして、それと同時に。
ガラ空きになっていたゼロサンの背中に、大谷が渾身の跳び蹴りを叩き込んだ。
「ナイッスー!!」
「一気に叩くぞ!!」
大谷の掛け声とともに、俺、ゼロフォーは士気を上げ、最後の戦いの為構える。
……あれ?
久しぶりに主人公取られそうになってないか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます