ヒーロイド1.2

非日常的な日常

「お前、ほんとに1.2倍しか力がないのか！？ヒーロイドなんだろ！？」

「体質に合わなかったんだよ。それにな、この1.2倍っていうのは常人がどうやっても越えられない壁の1.2倍なんだからな」

「マジか」

「俺はそうだと信じてる。お前は何倍なんだよ」

「知らん。でも強いことだけは確かだな」

「……」

　--------------------

｢喋らない奴だしあんま強くなさそうだな｣

｢じゃあ俺がやる」

｢サポートするぞ。目潰ししといてやる。変身！！｣

｢うぎゃあああああ！！｣

｢なんでお前が引っかかってんだよ！？二回目だろ！？｣

　--------------------

｢苦戦してるじゃねえかよ！！｣

｢ちょっ！？なんで俺にワイヤー当てるんだよ！？｣

｢お前が邪魔するからだろうが！！｣

　--------------------

｢痛っ！？その銃すごい痛いんだけど！？ちゃんとヒールに当てろよ！！｣

｢あ、すまん。……そういえばこれ普通の銃より全然強いんだっけ……｣

｢その割には全然効いてねえじゃねーか！！｣

｢いやー、装甲が分厚すぎるんだよなぁ……だから牽制にしか使えな……ん？お前それよく平気だな。いくら光で体が守られてても怪我ぐらいしそうだけど……｣

｢強いからな！！｣

｢……敵、来るぞ｣

　--------------------

｢あのさ、あの必殺技みたいなの使おうぜ｣

｢ああ、ブラスト・レイか｣

｢え？そんな名前なの？｣

｢脇坂が言ってた｣

｢……｣

　--------------------

｢雑魚ヒール一体にどんだけ時間かかってんだよ……｣

｢お前が邪魔するからだろ！？｣

｢待て待て、そもそもお前があんなに苦戦するのがおかしいんだって。やっぱりヒールが強くなってるってことだぞこれ｣

｢いや、お前が邪魔したからだ！！｣

　--------------------

｢え？ここに住んでるのか？｣

｢そうだな｣

｢なんで？｣

｢家が燃えたから｣

｢燃えた！？｣

｢そうだな｣

｢家族は？どうしてるんだ？｣

｢……｣

｢てかそもそもお前学校どうしてるんだ？｣

｢……｣

　--------------------

｢……よく食うなお前｣

｢ヒーロイドならこれくらい普通だろ｣

｢は？｣

｢知らないのか？ヒーロイドは普通よりエネルギーを消費するからよく食うんだ｣

｢なるほど、道理で最近腹減るのが早いと……｣

｢出張してた時は九州の飯が美味くてめちゃくちゃ食費がかさんだ｣

｢待てよ？でも俺はお前ほど食わないぞ？｣

｢1.2倍だからだろ？｣

｢あー……｣

　--------------------

｢お前……ズルいぞそれ……｣

｢なんだと？｣

｢ワイヤーとか目くらましとかやり方が陰湿なんだよ！！試合くらい正々堂々とやれ！！｣

｢そんぐらいのこともせずに1.2倍でどう戦えって言うんだよ！？強い力で一方的に捻り潰すのが正々堂々か！？｣

　--------------------

｢だからなんでお前はヒールを庇うんだ！！……やっぱり……お前は俺たちの敵なのか……？｣