最悪のコンビ!1.200

大谷継おおたにけいだ、よろしく」

「平岩蒼汰。よろしく」

簡潔な自己紹介を済ませると、俺達は握手をした。


目の前にいるのはあの赤いヒーロイドこと、大谷継である。

矢面から聞いたところによれば俺と同い年らしいが、短い髪の下にある目はちょっと高校生らしくない。

なんていうか、殺し屋みたいな?

でもまあそれは俺に向けられた敵意故かもなぁ。


さて、場所はいつものMACTのあそこである。


初対面から数日後、MACT施設内の自室でくつろいでいた俺を脇坂が呼びに来た。

何かと思って来てみれば、こいつと矢面が待っていたのだ。


脇坂に促されて自己紹介を済ませ、前述の通り握手までした訳だが。


……痛いんだけど。

力入れすぎじゃないかなあ?ねえ?ちょっと?


「変し……」

「やめてください!!」

何故だ矢面。こいつは悪者だろ。


仕方ない。俺も力入れるか。

変身してなきゃ力は同じだろ。


「ほんとよろしくなあ?」

「そうだなコラ!」

「いい加減にしろお前ら」

……あ。


俺たちに声をかけたのは、いつの間にか部屋に入ってきていた沢渡さんだった。

真夏であるにも関わらずやはり青い上着を羽織っているが、汗ひとつかいていない。

そりゃ建物の中は冷房が効いているが、それでも長袖の上着なんかはちょっと遠慮したいと思うんだけど思うんだけど。


「沢渡さん……お久しぶりです!」

突然やってきたヒーロイド一号に最敬礼する大谷。

後輩に慕われるタイプなんだよな、沢渡さん。俺も尊敬してるけど。


てかほんとに久々に会った気がするな。


「ヒーロイド同士で喧嘩してどうするんだよ。協力しないといけないことだってあるんだぞ」

ド正論なので素直に反省しておくことにする。


「そうだ!二人は同い年だったよね?じゃあ親睦の意味も込めてこれからは二人で……」

「こいつは嫌だ」

「激しく同意」

「なんで!?」

脇坂の提案を見事にはねのける。


反省しても嫌なものは嫌なのだ!


そういえばこいつも脇坂にはタメ口なんだな。

ナメられすぎだろう。


「なんで!?いいじゃん、かっこいいでしょそういうの!!ライバル関係で互いを高め合って……」

……そりゃ舐められもするか。

最近段々と本性を表して来た命の恩人、もとい全ての元凶を冷めた目で見つめる。


「いえ、一緒に行動してください」

突如として聞こえてきた妙に懐かしい声。


そちらを振り向くと、やはり嫌な思い出しかない懐かしのあの人物が立っていた!!


……いや、待てよ?

見た目は確かにそうなんだけども……ある一部分に大きな違和感があり、どうも判断しかねる。


「あの、納豆はどうしたんですか」

「別に私は常に納豆をかき混ぜているわけではありませんよ」

ふむ、言われてみれば。

この人が納豆を混ぜていたのは、開いている手で効率よく物事を進めるためだっけ。


何故納豆なのかはいまだに謎だが、レレレの何とかみたいなもんだろう。

しかしそう考えれば、納豆をかき混ぜながら移動するのは速度が落ちて効率が悪いだろうなあ。


少し息が荒いところを見ると、ここまで走ってきたんだろうし。


「そんなことより!コマンダー、さっきの一緒に行動しろってのはなんだよ!?こいつと俺で一緒に行動しろって言ったのか!?!?」

「そういったんですよ」

ちょっと待て大谷、俺の疑問をそんなこととは何だ。


って、ん?


「一緒にって、こいつと組んでヒールと戦えってことですか?」

「嫌なんですか?」

「まあ、とてつもなく」


あ、睨まれてる。

なんだよ、お前だって嫌がってたクセに。


大体、初対面で殺意むき出しにして襲いかかって来たやつと組んで戦いたい訳が無いんだ。


「2人とも嫌なんですか?」

コマンダーの言葉に、揃って頷く。


黙ってこちらをじっと見るコマンダー。

……目が怖いんだけど。


「2人とも、北海道と沖縄どちらに出張したいか選んでください」

……あれれれ?


突然のことに場の全員が固まっている。

矢面と脇阪までリアクション取れないでいるぞ。


「ちょっと待てよ!!そんなこと……」

「私、司令ですからね」

「……」

そこで黙らないで!もうちょっと粘って!!

今だけは応援するから!!


「それくらいの権限はありますよ」


しばらくの間、沈黙が空間を支配した。

なるほど、この場合脅迫するのが一番手っ取り早いよな。


俺は黙って大谷の方にポンと手を置く。

人生諦めが肝心なのだ。

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