憤怒のヒーロー
あ、どうも皆さんお久しぶりです。
覚えていますか、コマンダーです。
覚えてないならそれでもいいです。
あ、番外編とかじゃないんで安心してください。
そんなことよりこのモニターを見てほしいんですよ。
ほら、これ。
いや、納豆はいいのでモニターを。
良いでしょう、別に。
見るだけなら手は使わないんですから。
部屋が暗いのでちょっと眩しいかもしれませんが。
ヒーロイドが変身するとそれを感知してドローンが様子を見に行く、というのは以前説明したとおりですけど。
ここにその様子が映されてるんですよ。
これをもとに現場のヒーロイドに指示を出すんですね。
あんまり聞いてもらえませんけど。
さっきまで平岩君がヒールと戦ってたんですがね。
ヒールも倒して一件落着かと思ったら、すぐに次の映像が来てですね。
誰かと思ったら出張に行ってた大谷君だったんですよ。
しかも場所はこの近く。
丁度平岩君がいたところですよ。
この前出てきたヒールが目の前にいますね。
体中から大きなツノが生えている大きい奴。
平岩君の報告ではゼロフォーと名乗っていたとか。
……まああれが本当にゼロフォーかどうかは置いておいてですよ。
路地裏みたいで薄暗いですけど、よく見てみてください。
これ、よく見ると後ろに平岩君もいます。
それでカメラを引くと、ほら。
矢面さんとヒールが倒れています。
……これは一体どういう状況でしょうかね。
しかも大谷君も平岩君も話聞いてくれない人ですし。
これは少々困ったことになりましたよ。
二人は面識がなかったと思いますが……うまく連携してくれるといいんですけど。
何か話してるみたいですね。
……え!?
ちょっと!何やってるんですか大谷君!!
なんで平岩君に殴りかかってるんですか!?
早く連絡……出ませんね。
はあ、仕方ないですね。
ちょっとそこにあるスイッチを押してもらえませんか?
緑のやつです。
そう面倒がらないでくださいよ。
ちょっと手伝ってくれるだけでいいんです。
私はちょっと、しばらく手が離せなくなりそうなので。
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あ、視点戻りました。
ここからはいつも通りの進行です。
うーん、初めての別視点があの人で良かったのかなぁ。
さて、それはともかくとして。
早速、前前前回の答え合わせと行こうか。
矢面とヒールが倒れてて、ゼロフォーがいる。
そして目の前ではヒーロイドが、まるで壁ドンでもするみたいに俺の背後の壁を殴っている。
何がどうしてこうなったのか。
正解は、俺がヒールを倒したらゼロフォーが現れて矢面がやられ、さらにいきなり現れたヒーロイドに俺が襲われた。
でした。
うーん、最後だけどうしてもわからない。
なんでヒーロイドに攻撃されてるんだ?
ゼロフォーを倒すのはちょっと待てって言っただけなんだどなぁ。
「お前、何者だ?どうしてあいつを庇おうとするんだ!!」
話が通じなさそうで怖いんだけど。
すごく怒ってるし。
「待って、待って、俺ヒーロイド。別にあいつのこと庇ったわけじゃない!あいつからは聞けそうなことがあるからちょっと待ってほしかったんだよ!」
ダメだ、言葉がまとまってない!
「あ?お前なんか知らんぞ」
「そう言われてもな。そこに矢面もいるぞ」
意外と素直に聞いてくれた。
両手を挙げたまま顎で矢面の方を指すと、またしても素直にそちらを向いてくれる。
「矢面!?おい、何があったんだよ!?」
なんだ、やっぱり気付いてなかったのか。
俺たちを助けに来たんじゃないってことは、ここに来たのは偶然か。
おい、目の前にヒールがいるんだぞ。
ほっといてそっち行くな。
「うわ、なんだこの蚊みたいな奴!?」
今気づいたのか……。
ゼロフォーは……あ、ちゃんと待ってくれてる。
まあ積極的に攻撃してくるタイプじゃないけど。
「なあ、ちょっと……えーーーっと、」
「平岩蒼汰」
「蒼汰、ちょっと相談なんだが」
ゼロフォーがなんかフランクに話しかけてきた。
仲良くなれそうとか言ってたけど、本当に友達にでもなる気か?
さっきちょっと怒ってたけど。
「今回はお互い手を引かないか?あいつとお前にかかってこられたんじゃ分が悪そうだし、前回も今回も寿命が縮まるのは御免だ」
「ああ、なるほど」
確かにそれはそうだな。
こいつにしたら今の状況は心臓に悪くて仕方ないだろうし。
「賛成。こっちもタダじゃ済まなそうだ。これ以上白い壁は見たくない」
「じゃあ、そういうことで」
「おう」
背を向けて颯爽と去っていくゼロフォー。
トゲの生えた大きな背中が段々と小さくなっていく。
……のを見ていて気がつくのが遅れた。
「よくも……貴様……」
後ろでつぶやく声が聞こえたと思った途端に、
「逃がすかァァァァァ!!!」
異形の巨体へと突っ込んで行く赤い光。
もといヒーロイド。
とてつもなく騒がしく、激しく、恐ろしい勢いで飛んでいく。
光ってるし、レーザービームみたいだな。
しかしゼロフォーは反応しない。
距離もあるし、こんなにも音を立てているのだから気付かないはずはない。
振り向く必要は無いってことか。
なーんか、見透かされてるみたいで嫌だなぁ。
俺は反射的に手を伸ばし、両手のワイヤーを発射した。
狙いはもちろん、赤いヒーロイド。
「うわ!?なんだ!?」
ワイヤーに足と腕を絡め取られ、地面に倒れ伏すヒーロー。
これじゃほんとにどっちが悪役だかわかりゃしない。パートツー。
「おや、これは気が付かなかった。助かったよ蒼汰」
全部お見通しのくせに、嫌味な奴だな。
顔は見えないが、装甲の下で笑ってそうだ。
「なんだ!?やっぱりお前あいつの……」
「落ち着け、今やり合っても分が悪い。無駄死には絶対に御免だ!」
「うるさい!!クソ!!待て!!待てよ!!!!……くぅっ……」
尚も突っ込んで行こうとするヒーロイドを、手綱のようにワイヤーを引っ張って制止する。
でも待って、普通に力負けしそう。
仕方ない。
「おい、こっち見ろ!」
「ああ!?」
「変身!」
はい、お約束。
「うああああ!!」
いつもの目つぶし。もとい初見殺し。
目元をおさえるヒーロイド
これでゼロフォーを追いかけるのを諦めてくれるといいんだけど。
「うう……」
目元をおさえるゼロフォー。
いや、お前は二回目だろ。
「こっち見ろって……お前……」
「もういいからさっさと行けよ!」
あれで今まで会った中で一番強いヒールなんだから気が滅入る。
ふらふらと去っていくゼロフォー。
そして……
「うおおおおおお!!!」
力任せにワイヤーを引っ張る赤いの。
いや、ちょ、待っ……これはああ!?
目が見えないからってヤケになってらっしゃる!?!?
体が、持ち上がる。
風を切る音が聞こえる。
ブウンッ、と思い切り振り上げられ、吹っ飛ばされる。
「うああああああ!?」
ドガッ!とも、ゴンッ!とも傾倒しがたい鈍い音がしたかと思うと、全身に衝撃が走る。
いたたたたたあああああ!!!
……壁に打ち付けられたのか……?
周りが建物だらけだからどの辺にぶつかったのかよくわからん。
漫画のように体が壁にめり込むことも無く、もう一度硬いところに打ち付けられる。
今度は地面か。
どのくらいの高さから落ちたのかわからないが、動けないくらいの高さなのは確かだ。
へるぷみー。
「クソ!!どこだあの野郎!!」
ああ、まだ叫んでる。
でもまだ視力は戻って無いみたいだな。
いやはや、直前で変身しといてよかった。
光は鎧代わりになるからな。
これがなかったら改造人間でも死んでたかもしれないぞこれ。
「どこだああああああ!!」
ああ、体に続いて耳が痛い。
でもまあ、ゼロフォーもどっか行ってくれたみたいだし、とりあえず危機は去ったか。
俺はいったん目を閉じて、助けが来るのを待つことにした。
三メートルほど前方で何かが爆発するような音が聞こえた気がしたが、気のせいだと思うことにする。
俺にはもう何もできない。
だってあれはさすがに、ねえ?
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