第2話
帰りの電車の中で、修二と出会った頃の事を思い出していた。
高校時代、修二と初めて出会った頃。
一年生の時に同じクラスになって、隣の席になって、話すようになった。
修二の印象は、明るくて軽いやつ。
それでも、よく見ているのか話したくない気分の時に話しかけてくることはなかった。
どうせ、席替えをするまでの、長くても進級するまでの付き合いだと思って接していた。
本当に、その通りだった。
二年生になって、クラスが別れると話すことも無くなった。
クラスが遠かったから、会うこともなかった。
三年生で、また同じクラスになった。
同じクラスになってすぐ、修二から話しかけてきたのを覚えている。
「あ、また同じクラスじゃん」
一年生の時に少し話したくらいの自分を覚えていることに驚いた。
「柳瀬、だっけ」
あまり覚えていない振りをしたら、修二は嬉しそうに笑って「名前覚えていてくれたんだ。深川は絶対忘れるタイプだと思ったのに」と言ったのだ。
それから、また話すようになった。
連絡先も交換して、一緒に帰ることもあった。
そんなある日、修二に聞かれたことがある。
「なんで、自分からメールとかしてこないの?」
連絡はいつも修二からばかりで、俺から送ることは一度もなかったのだ。
それを指摘された。
「……ごめん」
思わず謝ると、修二は真剣な顔で「理由を聞いてるんだけど」と言ってきた。
「何て送ればいいか解らないから」
そう答えて、また謝った。
その答えに修二は大笑いして「コミュ障かよ」と言っていた。
それ以来、修二の中で“仲良くなったらコミュ障を発揮する変わった子”になってしまったのだ。
修二とは、それから随分と仲良くなった。
面倒見がよくて、俺のことも気にかけてくれていた。
甘えすぎは良くないと思って、離れようとしたこともあるが、修二に怒られた。
「一樹は遠慮しなくていい。面倒くさくなったら、勝手に疎遠になるから。わざわざ自分から疎遠になる必要はない」
そういって修二は相変わらず仲良くしてくれていた。
卒業してからもそれは変わらなくて、忙しくて中々会わなくなった時期でも、時々連絡をしてくれていた。
違う大学に進学したのに、俺の面倒を見ようとしてくる修二が嫌になったこともある。
初めて喧嘩をしたのが、その頃だった。
―――なんで、喧嘩をしたんだっけ。
昔の事を思い出しながら自宅へと帰った。
修二に指定された本は、紙媒体でも持っている。
音読をする前に、読み直さないといけないな。
そう思って、部屋についたらすぐ本棚を探した。
目的の本はすぐに見つかった。
ページを開いて、読み始めると、すぐに本の中へ引き込まれていく。
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