第27話 四大妖怪

「ルンルルン~。」

 カロヤカさんたちは、繁盛している人魚の茶店でアルバイトをしている。

「いらっしゃいませ。」

「こちらの席をどうぞ。」

「マーメイド・ティー5つですね。」

「またお越しください。」

「ありがとうございました。」

 カロヤカさんたちは、忙しく茶店で働いている。


 カロヤカさんは、人魚に相談していた。

「異世界ファンタジーなのに、戦闘シーンを抑えたい?」

「そうなの、どうすればいい?」

「う~ん、無理。戦闘をしたくなければ異世界ファンタジーなんてやらなければいいのよ。派手な戦闘があって、悪い魔王を倒して、姫を救い出す。それが異世界ファンタジーの醍醐味だもの。」

「そうよね。異世界ファンタジーの戦闘シーンが暴力的だ、なんて言われても、それならネット小説投稿サイトで異世界ファンタジーのコンテストをするな! ってものよね。」

 カロヤカさんは、答えのない迷路を彷徨っている。

「でも、救いならあるわよ。」

「救い!?」

「そう、救い。戦わないまでも、訓練で誤魔化す。刀や忍術の稽古シーンで誤魔化す。あとはロボットを配備して、敵の侵略を抑制する。できるだけ敵に攻められないように抑止力ってやつね。」

「抑止力!? そうか! その手があったか!」

 カロヤカさんは、少しは迷路の出口が見えてきた。

さあ! 戦闘シーンから離れたいなら、バイトしろ! 茶店で働け! 連日満員御礼だ! うちのお客さんは人間だけじゃない! 鬼も妖怪も鬼神も来るんだからな!」

 前回、雑魚キャラを大量投入したために、人魚の茶店は、結果的に潤っている。


「戦闘をしないための抑止力か。」

 カロヤカさんは、アルバイトをしながら、どうすれば平和な世界になるか考えていた。

「みなさん! 人魚の湖、恒例のロボット・ショーが始まります! ぜひ! 楽しんでください!」

「ロボット・ショー? まさか!?」

 カロヤカさんの脳裏に、人魚が尻尾を装備している光景が目に浮かぶ。

「ロボット・ショー・スタート!」

 ザーっと湖の中から何かが登場する。

「ろ、ロボット!?」

 湖の中から花、水、火、雷、地、風をモチーフにした、巨大な、からくり日本人形ロボットが登場した。

「どう? 僕の作ったロボットは? 小人は、刀を作るだけじゃないのよ!」

 小人ホビットのホビホビは、カロヤカさんの刀を作り、妖精や小人の鎧化に伴い、男装趣味の女の小人にされたり、手裏剣や忍び刀も作ってみたが、なかなか使用されずにお蔵入り。

「ヨイショ、ヨイショ。」

 しかし、それでも小人は諦めなかった。昼夜、休むこともなく、酸素ボンベを装着して湖の中で、6体もの巨大からくり日本人形ロボットを作ったのである。

「きれいなロボット。」

 カロヤカさんも小人が作った、きれいなロボットに見とれていた。

「おお!? あれは何だ!?」

「なんて恐ろしいものを作ってくれたんだ!?」

 鬼、妖怪、鬼神たちも小人の巨大なロボットに恐怖を感じていた。

「鬼たちが、巨大ロボにビビっている!? はあ!? これが抑止力というやつなのね!?」

 カロヤカさんは、戦わないでも戦闘を止める方法を肌身で感じる。

「張りぼてだけどね。」

「はい? 張りぼて?」

「カロヤカさん、ちょっと休憩して、ロボットの裏側を見ておいでよ。」

 人魚が、カロヤカさんに休憩を与える。


「どういうことかしら?」

 カロヤカさんは、人魚の茶店の対岸まで歩いていく。

「なんじゃ!? こりゃ!?」

 カロヤカさんが見た物は、ただの大きな木だった。

「あちゃ~!? 正面は、からくりロボットの絵。裏面は、ただの木なのね!?」

 小人と時代設定に、巨大からくり日本人形ロボットを動かす、科学力も予算も無かった。

「木だな。」

「そうね。ただの木だわ・・・って!? 酒呑童子!?」

 その時、現れたのは鬼の頭目、酒呑童子だった。

「なぜ!? あなたがここにいるの!?」

「なぜって、ここで日本三大妖怪の会議を行っているからだ。」

「日本三大妖怪会議!?」

 そう、酒呑童子は会議に出席しているのだった。

「あ、うちの坊やの嫁だ。」

「あ!? お母さま!? これが本当の狐の嫁入り、なんちゃって。」

 妖怪の総大将、九尾の妖狐、玉藻前がいた。

「カロヤカさんではありませんか!?」

「大嶽丸さん!?」

 最近、暴走しまくっている鬼神の管理者の大嶽丸。

「あなたたちが日本三大妖怪!?」

「その通りだ。」

 酒呑童子、玉藻前、大嶽丸の三人が日本三大妖怪であった。

「どうした? 我々が日本三大妖怪と聞いてビビったのか?」

「どうしよう!? みんな茶店の常連客だわ!? そんな偶然ってあるのね!?」

「そっちかよ!?」

 カロヤカさんは、日本三大妖怪の三人と顔見知りである。

「会議の議題だが、どうやって、人間を絶滅させるかを話し合っていたところだ。」

「人間を絶滅させるですって!?」

「そうだ。鬼、妖怪、鬼神にとって、人間だけが敵なのだ。」

「誰かさんは鬼神の管理もできていないけどね。」

「それを言わないでくれ。人間を滅ぼしたら、暴走する鬼神を止めるから。」

 日本三大妖怪は、完全に人間を滅ぼすつもりだった。

「安心しろ、カロヤカ。おまえは友達だから見逃してやる。」

「うちの坊やの嫁には手を出させないわよ!」

「カロヤカさんは、私が守ります!」

「良かった。私は死ななくていいんだ・・・って、おい!?」

 カロヤカさんは、気さくな性格で誰からも好かれていた。

「ちょっと待ってよ!? 人間と鬼と妖怪と鬼神が仲良くなれる方法は何かないの!?」

「ない。見つけられたら襲ってくるのは人間だ。」

「人間は坊やをさらう悪い奴だ! 皆殺しにしてくれる!」

「我々は邪な人間の生れの果ての姿。邪な人間は死ななければいけない。」

「そ、そんな!? そうかもしれないけど、人間と鬼と妖怪と鬼神が分かり合える世界を作る方法は何かないの!?」

「ない!」

 カロヤカさんは、世界が平和になる方法を暗中模索する。

「ぼ、ぼ、ぼ、ぼ、ぼ、ぼ、チーン! 閃きました! グット・アイデア!」

「そんなものあるものか。まあ、いい。聞くだけ聞いてやろう。」

 カロヤカさんは、覚悟を固めて語りだす。

「私も大妖怪になる! そうすれば人間は、鬼とも、妖怪とも、鬼神とも戦わないで済むから!」

 カロヤカさんの秘策は、自分が大妖怪になり、日本四大妖怪にしようというものであった。

「悪い人間は、私が懲らしめるわ! 人間に鬼と妖怪と鬼神を襲わせない! そのために私、がんばるから! 私が大妖怪になることを認めて頂戴! 私は平和な世界を築きたいの!」

 カロヤカさんは、世界に生きとし生けるものの幸せを願っている。

「いいだろう。やれるものなら、やってもらおうか。」

「将来は、うちの坊やと結婚するんだし、好きにすればいいんじゃなかい。」

「カロヤカさん、私が、あなたをお手伝いします。」

「ありがとう! みんな!」

 カロヤカさんが大妖怪になることは認められた。

「日本四大妖怪! カロヤカにお任せあれ!」

 新たなカロヤカさんの戦いが始まる。

 つづく。

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