第25話 妖精の休日

「ルンルルン~。」

 カロヤカさんたちは、富士山から下山して、道を歩いている。

「なんで!? カロヤカさんが出てくるのよ!?」

 妖精は、なぜか怒っている。

「なんでって、この物語は、私の物語だからよ。」

 もちろん主役はカロヤカさんである。

「今回は違います。今回は主役は私たちです。」

「そうだ! そうだ!」

 妖精と精霊3人と小人がアピールしてくる。

「なんでよ!? なんで、そうなるのよ!?」

「最近、カロヤカさんの話が長い! 戦闘だけでも、変身と斬撃と忍術だけで1000字はいってしまう! ということは、物語の内容を1000字位で納めないといけない! それなのに全話なんて、約4000字いったのよ! しかも私たち妖精の出番は、予告だけよ!」

 妖精たちの扱われようでは、怒るのも無理はない。

「そ、そ、そんなこと言ったってしょうがないじゃない!? これも鬼神を倒すためよ!」

 カロヤカさんの苦しい言い訳である。

「却下。カロヤカさんは、少し黙って反省していなさい。」

「はい、すいません。」

「困ったら、呼んであげるから。」

 大人しくなるカロヤカさん。

「さあ! これで今回は小さくてカワイイ生き物の目線で語るわよ!」

「おお!」

 妖精たちは、やる気で燃え上がっていた。

「アッチチチチチチチチ!?」

 飛び跳ねて喜んでいた。

「サラマンダーのバカ。」

「ごめんなさい。」

 サラマンダーは、やる気になると火力が暴走する。 


「それでは、カロヤカさん軍縮会議を行います!」

「おお!」

 この会議は、文字数は稼げるが毎回同じなので、戦闘シーンを大幅にカットするための会議である。

「第1に、カロヤカさんたちが着物から、鎧・忍び装束に着替える視聴者サービスシーン。」

「カット! カットですわ! 女の子の着替えシーンなんて、PTAから苦情が殺到します!」

「そうだ! そうだ! エロいおっさんが喜ぶだけだ!」

「美少女侍忍者の数が増えるだけ、変身シーンも長くなってしまいます。」

「まとめてしまおう。」


「出たな! 鬼神! みんな! 変身よ!」

「おお!」

 かろやかさんたちは、着物から美少女侍忍者に変身した。


「なんか、最終回で尺が無いから変身シーンをカットしました状態ね。まあ、いいわ。採用!」

 こうして、カロヤカさんたちの変身シーンはカットされる。

「第2に、カロヤカさんたちの斬撃の必殺技シーン。」

「カット! カット! 暴力シーンは、いじめを誘発して、PTAから苦情がきてしまいます!」

「そうだ! そうだ! 顔はやめときな、ボディ、ボディだった人が、今じゃ国会議員だぞ!」

「美少女侍忍者の数が増える度に、斬撃の必殺技シーンも長くなってしまいます。」

「これも、まとめてしまおう。」


「くらえ! 鬼神! みんあ! 力を一つにまとめるのよ!」

「おお!」

 カロヤカさんたちは、気持ちを一つにして、攻撃を繰り出す。

「夢と水と人と雷と小人の愛と友情の、カロヤカ斬り!」

 カロヤカさんは、みんなの夢と希望の斬撃を放つ。

「ギャアー!?」

 カロヤカさんたちは、鬼神を倒した。


「不思議とスムーズにまとまったわ。斬撃の必殺技シーンも合体技でカット成功!」

 こうしてカロヤカさんたちの一人一人の斬撃の必殺技シーンはカットされる。

「第3に、カロヤカさんたちの忍術シーン。」

「カット! カット! 我々をカットし過ぎです! ミナモが私を呼び出したなら、そこで会話が私にバトンタッチされて、私がセリフを話すべきです! そうすれば精霊さんたちにも劇中でセリフが生まれます!」

「そうだ! そうだ! セイカは忍術なんか使えないんだ! 火の精霊の私がいるから火遁の術が使える。正確には、私が火を操っているだけじゃないか!」

「これは美少女侍忍者の数が増える度に、紛糾しますね。もう無理。1話5000字で頑張りましょうよ。」

「まとめました。」


「くらえ! 鬼神! みんあ! 力を一つにまとめるのよ!」

「おお!」

 カロヤカさんたちは、気持ちを一つにして、攻撃を繰り出す。

「夢と水と人と雷と小人の愛と友情の、忍法! カロヤカ!」

 カロヤカさんは、みんなの夢と希望の忍術を放つ。

「ギャアー!?」

 カロヤカさんたちは、鬼神を倒した。


「斬撃だけでなく、忍術も1つにまとめちゃった。確かに素晴らしいカットといえばカットなんだけど。OKとしとこう。」

 妖精たちは、会議が長くなってきたので疲れた。

「人魚の茶店に寄って、何か飲んでいきましょう。」

「賛成!」

 こうして妖精たちは、人魚の茶店を目指す。


「いらっしゃいませ。あら? カロヤカさんたち。久しぶりね。元気だった。」

 出迎えてくれたのは人魚だった。

「相変わらず繁盛してるのね。」

「そうなのよ。これ、うちの新商品、タピオカ・マーメイド・ティー。便秘が治るって、高齢者から子供の女性に人気なのよ。」

「ちゃっかり便乗している!?」

「長いものに巻かれている!?」

 人魚は、商売上手だった。

「紹介するは、今度、新しくアルバイトで雇った。風花フウコちゃん。」

「フウコです。よろしくお願いします。」

「こちらこそ、よろしく。」

 新人のアルバイト、風花フウコを紹介される。

「ん? なにか、おかしいような?」

 カロヤカさんは、なにか違和感を感じた。

「ああ~!? 前のアルバイトの子はどうしたの!?」

「そうです! 私がクビになった時は、地花チホという新しいアルバイト・ガールがいたはずです!?」

 そう、雷花は地花が来たから、人魚の茶店をクビになったのである。

「いるじゃない? 目の前に。」

「え!?」

 カロヤカさんたちは、ふと振り返る。

「どうも、地花チホです。よろしくお願いします。ニコッ。」

「うわあー!? いつの間に!?」

「お前は忍者か!?」

「私たちは忍者じゃないですか。アハッ。」

 5人目の美少女侍忍者、抹茶娘アイドル、地花チホが現れた。

「今日から皆さんと一緒に集団行動させていただきます!」

「いや!? まだ仲間になるとは認めていない!?」

「そんな冷たいことを言わないで下さい!? 人魚の茶店をクビになって行く所が無いんです!?」

「無理だ!? 我々も、1話の文字数が多いと、カット会議が行われているんだ!?」

「そんなこと言うなら、学校の屋上から飛び降りますよ!? 電車に飛び込んでミンチになりますよ!?」

 地花は、命がけの訴えをする。

「死ぬって言ってるよ!? フェアフェア!? どうしよう!?」

「もうー!? しょうがないわね! 入隊を認めます!」

「やったー! ありがとう。」

 新しい仲間、地花チホが仲間になった。

「あれ? 戦闘をしなくても、問題が解決した? ということは、戦闘シーン自体が要らないのでは!?」

「カット! カット! 戦闘シーンをカットしましょう! 円盤が売れないなんて知りません!」

「そうだ! そうだ! 戦闘シーンを無くして、現代ドラマに変えてしまえ! 実写ドラマ化だ!」

「美少女侍忍者の数が増えたので、次回の戦闘シーンは、もっと長くなります。」

「まとめない。」

 こうして妖精さんたちの戦闘の無い休日は無事に終わった。

「ルンルルン~。」

 カロヤカにお任せあれ。

 つづく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る