第20話 修正ではなく、あくまでも進化です

「ルンルルン~。」

 カロヤカさんの世界平和のための鬼神退治は続いている。

「カロヤカさん。」

 妖精さんがカロヤカさんに話を持ち掛けてくる。

「なに?」

「敵の鬼神も、人食いシリーズから、過去の歴史上の人物の邪な魂が現れて、強敵になってきたわ。」

 鬼神、織田信長。鬼神、明智光秀。この辺はネットの検索対策的な、実名使用である。

「そうね。強い敵は困っちゃう。」

「そこで、私たちもパワーアップしましょう。」

「パワーアップ!? 横文字なのね!?」

 妖精は異世界の住人なので、横文字でも不思議ではない。

「嫌よ!? 命がけの激しい修行は!?」

 不信感漂うカロヤカさん。

「違うわよ。修行なんてやってる時間はないわ。」

「ホッ~、良かった。じゃあ、どうやってレベルアップするのよ?」

「カロヤカさんも横文字を使っているじゃない。」

「まあまあ、細かいことは気にしちゃダメよ、ダメダメ。」

 話は、元に戻る。

「私、自身が鎧になるの。鎧を貸すではなく、私が鎧になって、カロヤカさんと一体化して一緒に戦うの。」

「おお! それいいね! カッコイイ! わざとダメージを鎧で受けようっと。」

「こらー!? 私を殺す気か?」

「冗談ですよ。冗談。オッホッホ。」

 妖精の鎧化は承認された。

「ん? んん!? ちょっと待って!」

「どうしたのカロヤカさん?」

「ホビホビは、「僕」だから男よね? 私は嫌よ! 男の小人の鎧を装着するのは!」

 小人さんは、男設定だった。

「フッフッフ、フがいっぱい。甘いわね、カロヤカさん。」

「どういうこと!?」

「ホビホビは、女よ! 正確にいうと、宝塚歌劇〇よ!」

「なんですとー!? ホビホビは、男装だというのか!?」

「その通り!」

「なんて強引な苦しい言い訳なんだ!?」

「これは修正ではない。進化だよ。進化なのだよ! ワッハッハー!」

 ただ細かく決めていなかっただけである。

「さらに特典があるのよ!」

「特典!? 変な設定を追加しないでよね!?」

「安心してよ。大型アップデートよ!」

 かろやかさんには疑いの気持ちしかない。

「ちょっと来て、みなもちゃん。」

「なに? 妖精さん。」

「ちょっと、これを台本通り読んでちょうだい。」

 妖精は、水花に台本を渡す。

「鬼神! おまえみたいな悪党は許さない! みなもちゃんをなめるなよ! 水のアイリス!」

 ナルシスは、水仙。蓮でいきたかったが、ロータスで、ちょっと、しょぼい。菖蒲は、アイリス。花水木は、フラワー・ウォーター・ツリー。ドック・ウッドでは使い物にならない。「水のウンディーネ・アイリス!」でもいいかもしれない。

「うわあ!? 必殺技が新しくなった!?」

「どう? これで、あと3個くらいは新必殺技に困らないわよ。」

「ありがとう。妖精さん。」

 水花は、必殺技のネーミングが手抜きでなくなったことを喜んだ。

「ズルイ!? 水花だけ!? 私もパワーアップしたい!」

 そこに嫉妬に燃えている火花がやってきた。

「ちょうど今、あなたを呼びに行くところだったのよ。ここを呼んで。」

「ほうほう。」

 火花は、台本をチェックする。

「聖なる夜を邪魔する鬼神よ! せいかの炎をなめるなよ! 炎のチューリップ!」

 火の花、炎の花、赤い花は特別調べていません。だって新必殺技の発想は「火のチューリップ!」から始まったので。オッホン。「火のサラマンダー・チューリップ!」も捨てがたい。

「ありがとう! 妖精さん! 私! これからも美少女侍を頑張るよ!」

「どういたしまして。私は永遠の妖精さんです。ワッハッハー!」

 火花は、パワーアップをとても喜んだ。

「あの? 私は? 私? ワクワク。ワクワク。」

 カロヤカさんも二人のパワーアップに、自身のパワーアップにも期待している。

「ありません。」

「え? どうして!? どうして私はないの!? 私も、みんなと一緒に強くなりたいよ!?」

 カロヤカさんのパワーアップは完成していなかった。

「カロヤカさんは、水や火のような自然属性ではありません。どちらかというと、無属性です。しかし、無の属性は、どちらかというと悪い暗黒の全てを無くしてしまうという、無になってしまいます。」

「私って、魔性の女だったのね!?」

「それは違うと思う。」

「カロヤカさんは、カロヤカさんが頑張っている姿で、誰かに元気を与えられる存在になれると思う。カロヤカさんが元気を与えることができれば、元気をもらった人も、頑張って生きていける。笑顔で頑張って生きていけると思うの。」

「え? ええー!? なんだか背中が痒いんだけど!? しかも痒い所に手が届かないんだけど!? なに!? それは!? 私にアンパンマ〇になれってこと!?」

「そういうこと。まあ、正義のヒーローなんて、最終的に名前とジャンルが違うだけで、なんでも同じよ!」

「マジか!? それを言っちゃう!?」

 カロヤカさんに求められている者は、誰かに元気や勇気を分け与え、前向きな気持ちにすることだ。

「私にどうしろという? 私のジャンルや属性は何?」

「勇気とか、元気? ああー、気でいいんじゃない。気を分け合ったり、気なら溜めれば、かめはめ〇や元気〇のような必殺技。気を集中して、戦闘力を高めることもできる。顔を千切って、分け与えることはカロヤカさんには無理だもの。」

「私にできること、私にしかできないこと。」

 カロヤカさんは、頭の中で試行錯誤を繰り返して、一つの答えを出す。

「物語の主人公は、悪者を倒す、正しいことをする、決してくじけない、見ている人々に、夢と希望と勇気を与えられる存在でなければいけない。」

 カロヤカさんは、物語の主人公論を述べる。

「私にできるかしら?」

「できるわよ。カロヤカさんなら。私やみんながカロヤカさんを応援しているんだから。」

「ありがとう。みんな。」

「カロヤカさんは、人に元気を与える存在にならなければいけない。しかし、逆にカロヤカさんも、人から元気をもらっている。元気は与え与えられ、上手に循環している。きっとカロヤカさんなら、この閉塞感の漂う時代に元気を与えてくれるはず。」

 妖精は、カロヤカさんの成長に期待している。

「冒険を通じて、不幸が起こる度に、強敵が現れる度に、強くなり諦めないで問題を解決していく。普通でいいのよ。普通に物語がカロヤカさんを強くしてくれるわ。」

 問題は、毎回、何らかの不幸が起こったり、強敵が現れるということである。主人公とは、不幸を呼ぶ存在、なのかもしれない。

「みんな! いくわよ! 富士山に山登りよ!」

「おお!」

 カロヤカさんの旅は続いていく。

「ルンルルン~。」

 カロヤカにお任せあれ。

 つづく。

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