第19話 普段着は

「ルンルルン~。」

 カロヤカさんたちは、当てはないけど富士山を目指して旅をしている。

「まあ、きれいな着物。」

 道中、街によって見たりした。

「カロヤカさん、これなんかどうですか? きれいな花柄ですよ。」

「みなもこそ、この菖蒲や水仙の模様のきれいなこと。あなたに見合いそうよ。」

「オッホッホー!」

 カロヤカさんと水花は、おしゃれな着物選びに仲良くなるのであった。

「妖精さんも、この着物はどうですか?」

「そういう精霊さんも、異世界じゃなくて日本何だから、和モノを着ましょうね。」

「どこかに伝説の生き物の着物着付け教室はないかしら?」

 妖精と水の精霊も、女性が好きそうな、おしゃれな着物のガールズトークで仲良くなる。

「剣客の服の名称は、着物でいいらしい。昔は、女性に下着があったのかな? ふんどし1枚? 着物の下は裸なのかな?」

 小人のちょっと勉強になるワンポイント情報である。

「ルンルルン~。」

 戦闘用の鎧だけでは華やかではないので、時代物的に女性の登場人物の服装は、質素から色鮮やかな着物であろう。痛い車(イタシャ)のように、痛い着物(イタキ)として、グッツ販売されるだろう。

「下駄に、かんざし、口紅、白粉、忍び刀なんかも揃えなくっちゃ。」

「美容業界と、刃物業界に参入ですね。」

「なんなら町ごと作っちゃう?」

「ワッハッハー!」

 カロヤカさんたちは、格闘ゲーだけでなく、箱ゲーにも手を広げる。もちろん着せ替え機能も充実。男主人公ではない、時代劇モノの特権である。


「カロヤカさん、今日は町で花火大会があるんだって。」

「そうなの! せっかくだから、花火を見ていこう!」

「やったー! 花火! 花火!」

 カロヤカさんたちは夜に町で花火を見ていくことにした。

「んん? あれは!? そうだ! カロヤカさんだ! カロヤカさんじゃないですか!」

「あ、大嶽丸さんだ!?」

 カロヤカさんは、鬼神の頭目の大嶽丸と再会する。

「大嶽丸さんも花火を見に来たんですか?」

「え? 違います。この辺りに人間の欲望が集まっているので、新しい鬼神が出没しないかと心配で来てみたんです。」

 大嶽丸は、鬼神の頭目なのだが、最近、鬼神は大嶽丸の言うことを聞かないで暴走している。

「そうなんですね。そちらの方は?」

「彼も鬼神です。紹介します。明智光秀です。」

「光秀と申します。大嶽丸様が、いつもお世話になっております。」

 大嶽丸は、過去の英雄の魂を鬼神として自分の部下にしていた。

「鬼神を管理するのも大変なんですね。」

「本来は、鬼神とは過去の歴史に名を残す者が、世の中を見守るという存在だったのですが、最近は、死しても、なお、暴れるという不逞の輩が、たくさんいて困っております。若しくは他の何者かに操られているのでしょう。」

 鬼神は、かつて人々の憧れだった。

「きっと花火大会で金儲けしようという邪な人間、邪人がたくさん集まってくると思います。」

「そこで新しく生まれた鬼神を私が倒せばいいんですね。」

「やってくれますか? カロヤカさん。」

「カロヤカにお任せあれ。」

 こうしてカロヤカさんは、鬼神退治を引き受けた。


「わ~い! きれい!」

 バーン! バン! バン! 夜になり花火大会が始まった。

「カロヤカさん、花火はきれいですね。」

「クスクス。」

「何か、おかしなことを言いましたか?」

「いいえ。大嶽丸さんは鬼神なのに、花火をきれい、って思うことができるんですね。そう思ったら、人間も鬼神も同じなんだな~と思って。」

「そうですね。きれいなものは、きれいです。」

 なんだか良い雰囲気のカロヤカさんと大嶽丸は、花火を楽しんだ。

「キャー! たまや! かじや!」

「おお!」

 大勢の町の人々も打ち上げ花火のきれいな演出を歓声を上げながら楽しんでいた。

「グオグオグオ!」

 その時、きれいな花火を見せないように遮るみたいに暗雲が立ち込める。

「どうしたの!? 急に花火が見えなくなっちゃった!?」

「あれは!? なに!?」

 暗雲から何者かが舞い降りてくる。

「我は鬼神、織田信長! 死しても、なお、天下統一を狙う者である!」

 現れた邪な人間、邪人の魂は、過去の歴史上の人物、織田信長であった。

「織田信長よ! 鬼神なら私の言うことを聞け!」

「誰が私を殺した明智光秀を、お供にするような者の言うことを聞くものか!」

 鬼神、織田信長は大嶽丸の言うことを聞く気はなかった。

「大嶽丸さん、ここは私に任せてください!」

 カロヤカさんが前に出る。

「いくわよ! みなも!」

「はい! カロヤカさん!」

 カロヤカさんと水花が一緒に戦う。

「いでよ! 妖精の鎧! 装着!」

「いでよ! 水の精霊の鎧! 装着!」 

 カロヤカさんたちは、それぞれの鎧を身にまとった。

「いくぞ! 鬼神!」

「こい。小娘に何ができるものか。ワッハッハー!」

「小娘をなめるなよ!」

 カロヤカさんと鬼神、織田信長の戦いが始まった。

「花が香り、花が舞う! 百花繚乱! 軽やかに咲き乱れろ! 私の花! 必殺! お花畑斬り!」

「水が潤い、水が弾ける! 明鏡止水! 生き物のように激しく流れ溢れろ! 私の水! 必殺! 花水斬り!」

 カロヤカさんと水花は、必殺の一撃を同時に放つ。

「そんなものが鬼神に効くものか!」

 鬼神、織田信長は、カロヤカさんと水花の攻撃を片手で受け止めようとするのだが、少し様子が変だ。

「な、なに!? 小娘の攻撃なんかが私を倒すというのか!? ギャアー!!!」

 カロヤカさんと水花の攻撃が、鬼神、織田信長を倒した。

「やったー! 鬼神を倒したわ!」

「やりましたね! カロヤカさん!」

「ありがとう! カロヤカさん!」

 カロヤカさんたちは、鬼神を倒して喜んだ。

「でも、花火大会が台無しになっちゃったわね。」

「残念ね、みんな楽しみにしていたのに。」

「申し訳ない。鬼神の性で。」

 花火の打ち上げが中止になり、みんな、ガッカリしていた。

「火が輝き、火が躍る! 活火激発! 全てを燃やし尽くせ! 私の火! 必殺! 花火斬り!」

 その時、声と共に夜空に花火が打ち上げられた。

「なになに!?」

 一人の女の子が現れる。

「花火は私にお任せあれ!」

「あなたは誰?」

「私は、美少女侍、火花せいか!」

「カロヤカさん!? あの子です!? 私を茶店から追い出したのは!?」

「あんたも私を茶店から追い出したんだけど?」

「え?」

 現れたのは、新しい美少女侍、火花せいかだった。

「カロヤカさん、これから仲良くしましょう!」

「どうして私の名前を知っているの!?」

 カロヤカさんは、嫌な予感しかしなかった。

「実は、人魚さんに「こちら新しいアルバイトの雷花いなりさんよ。あなたはクビ!」って、追い出されたんです!? 酷い話だと思いませんか!?」

「毎回、このパターンでお友達を増やしていく気ね。」

「分かります! あなたの苦しみ! 同じクビになった者同士、仲良くやっていきましょうね!」

「ありがとう!」

「何か共感と絆と感動をはき違えているような気がするのは私だけ?」

 新しい仲間、火花せいかが仲間に加わった。

「ルンルルン~。」

 カロヤカさんの旅はつづく。

 カロヤカにお任せあれ。

 つづく。

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