第13話 山が青く燃える

「そういえば、私、旅立つ時に家を焼いてきたから、帰る自宅が無いんだった。」

 カロヤカさんは、鬼神、人食い鳥を倒した。

「なら、うちに住めば。」

「いいんですか?」

「2階で私と一緒に住めばいいじゃない。」

「ありがとうございます。」

 カロヤカさんは、人魚の茶店に住まわせてもらうことになった。

「良かった。住むところが見つかって。」

「本当に野宿は嫌よ。」

「これで安心して眠れる。」

 カロヤカさんたちは、住むところが決まって喜んだ。

「やったー! タダ働きのアルバイトが3人も見つかった! クックック!」

「ウイン、ウインの関係ね。」

「どこがだ。」

「いいじゃない。おいしい三食付きの住み込みのバイトよ。マーメード・ティーも飲めるしね。」

「要りません!」

 人魚も、ブラック茶店のオーナーとして喜んだ。

「まさか茶店で働かせられるとは!?」

 カロヤカさんは、茶店でウエイトレスをさせられている。

「私の出番は、いつやってくるの?」

 妖精は、お皿を洗わされていた。

「僕もこんな仕事をしたくない。」

 小人は、お酒に下剤を仕込んでいた。


「いらっしゃいませ。」

 茶店に密猟者たちがやってきた。

「酒と食い物をたくさん持ってきてくれ! 金は弾むぞ!」

「まずは酒だ! 酒! 酒、持って来い!」

「俺たちは、金持ちになれるぞ!」

「ギャハハハハ!」

 密猟者たちは、とても上機嫌で金回りが良さそうだった。

「はい! どうぞ! 人魚の湖特産の、人魚の地酒と特製の新鮮な、お刺身です!」

「お! 豪華だな! いいね! 酒のつまみに刺身があるなんて!」

「このお刺身、プリプリだぜ!」

「うまい! うまい!」

「ギャハハハハ!」

「調子に乗っている奴は、お腹を壊してピーピーになれ。」

 カロヤカさんが運んだお刺身は、人魚の湖の主の魚の残りのお刺身である。

「コンコン。」

「んん?」

 その時、カロヤカさんは密猟者たちの荷物の小さな檻から鳴き声が聞こえることに気づいた。

「うわあー! カワイイ! 狐!」

 檻の中にいたのは、小さな狐だった。

「お嬢ちゃん、それは狐じゃないよ。」

「え? 違うの。」

「そいつは、妖狐だ。妖狐の子供だ。」

 密猟者たちがお金持ちになるために捕まえたのは、妖狐の子供だった。

「妖狐?」

「妖狐は、狐の化け物だ。俺たちは、妖狐の山で捕まえてきたんだ。こいつの毛皮は高値で売れるんだ。」

「妖狐1匹で1軒、家が建つと言われている。」

「これで俺たちも大金持ちだ!」

「ギャハハハハ!」

 密猟者たちは、金の生る狐を捕まえて笑いが止まらなかった。

「コン。」

 狐は、悲しそうに鳴く。

「おまえも食べるかい?」

「コン。」

「よしよし。」

 カロヤカさんは、寂しそうな子妖狐の頭をナデナデしてあげる。


「わ、た、し、の、ぼ、う、や、は、ど、こ、だ!?」

 妖狐の山に女のキレた声が聞こえる。

「み、な、ご、ろ、し、だ!」

 妖狐は青い炎の狐火を無限に出す。


「この子は、どうなるの? 殺しちゃうの?」

「毛皮を剥ぐ時に痛くないように殺すだろうな。」

「そんなの可哀そうよ! まだ子供じゃない! 逃がしてあげようよ!」

 カロヤカさんは、密猟者たちに嘆願した。

「ダメだ! ダメだ! 俺たちはお金持ちになるんだ! 絶対に逃がさないぞ!」

「いいぞ、妖狐を逃がしても。」

「いいの?」

「その代わり、お嬢ちゃんを売り飛ばすからな。どうだ?」

「それは無理です。」

「ほら、口では可哀そうというが、自分の利益と比べると、やっぱり自分の方が可愛いだろ。俺たちも、こいつを売ってお金を得るんだ。」

「キャハハハハ!」

 密猟者たちは、妖狐の子供を逃がす気はなかった。

「う・・・何も言い返せない。」

 カロヤカさんは、密猟者たちに口では勝てなかった。

「おまえたち、茶店のお嬢さんの言う通り、その妖狐の子供を逃がした方がいいぞ。」

 その時、茶店の一人の客が口を挟む。

「あなたは!? 大嶽丸さん!?」

「また会いましたね。カロヤカさん。」

「大嶽丸さんは、どこか遠くに行かれたのでは?」

「あの後、ちょっとお腹が痛くなりましてね。」

「アハハ。」 

 カロヤカさんは、大嶽丸も下剤入りのお茶を飲んだと知っている。

「なんだ!? てめえは!?」

「俺たちは女には優しくても、男には怖いぞ!」

 文句を言われて密猟者たちは機嫌が悪い。

「あれを見なさい!」

 大嶽丸は妖狐の山の方を指さす。

「な、なんだ!? や、山が青く燃えている!?」

 山が山火事で赤く燃えるのではなく、山が青く燃え上がっていた。

「青い!? どうして山が青く燃えてるの!?」

 カロヤカさんは、青い山火事を初めて見て、謎だらけで衝撃を受けた。


「み、つ、け、た、ぞ! わ、た、し、の、ぼ、う、や!」

 カロヤカさんたちは気づいていない。青い炎が茶店に近づいていることに。


「コンコン。」

 妖狐の子供は嬉しそうに明るく鳴く。

「母親の妖狐が、子供が見当たらないから探しているのでしょ。子供の妖狐を早く母親の元に返さないと大変なことになりますよ。」

 大嶽丸は、山が青く燃えている理由を述べる。

「コンコン。」

 妖狐の子供は嬉しそうに明るく鳴く。

「そんなこと俺たちの知ったことか!」

「そうだ! そうだ! この妖狐は捕まえた俺たちのものだ!」

「売ろうが焼こうが俺たちの自由だ!」

「ギャハハハハ!」

 密猟者たちは、子供の妖狐を手放そうとしなかった。

「ワッハッハー!」

 その時、カロヤカさんが笑い出す。

「じゃあ、力尽くで奪えば文句はないのね。」

 カロヤカさんは、密猟者と戦う気満々であった。

「ギャハハハハ!」

「やめとけ、やめとけ。俺たちは天下の密猟者だぞ。」

「そうそう。お嬢ちゃんが戦って勝てる相手じゃないぞ。」

「それとも俺たちが勝ったら、お嬢ちゃんも連れてっていいんだな?」

「ギャハハハハ!」

 密猟者たちは、自分たちが、たかが茶店の若い娘のアルバイトに負けるとは、これっぽっちも考えていなかった。

「いいわよ。もし私が負けたら、なんでもおじさんたちの言うことを聞きましょう。」

 カロヤカさんは、自分の刀を持つ。

「やったー! 若い娘、もらったぜー!」

「盆と正月が一度にやってきたようだー!」

「キャハハハハ!」

 密猟者たちもカロヤカさんと戦う気である。

「ちょっと!? 茶店を壊したら弁償してもらうからね! カロヤカさんもアルバイト代から引くわよ!」

 人魚は、カロヤカさんよりも自分の店が大切であった。

「それは困る!? 表に出ましょう。」

「いいだろう。へっへっへ。ん? んん? ギャオオオオオオオー!?」

 その時、密猟者の一人が青い炎に包まれて苦しみだした。

「か、え、せ! わ、た、し、の、ぼ、う、や!」

 怒り狂う狐の尻尾が九尾ある女が現れた。

 カロヤカにお任せあれ。

 つづく。

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