第12話 魚、陸を進む

「ギュルルルルルル!? い、痛い!? お腹が痛い!?」

 突然、妖精がお腹を抱えて苦しみだした。

「下剤が効いてきたんだわ!?」

「大丈夫!? 急にどうしたんだろう?」

「犯人は、マーメード・ティーです。」

 腹痛の原因は、人魚の作ったお茶が原因だった。

「あれ? それならお茶を一緒に飲んだカロヤカさんもお腹を壊すはずだ。」

「ほれ! 見ろ! 私は無罪よ!」

 人魚は、無実を主張する。

「きっと妖精の方が体が小さいから、お腹が壊れるまでに時間差があるんだわ。」

「ガーン!」

 やっぱり人魚は有罪で撃沈した。

「人魚も面白い性格をしているわね。」

「そりゃそうよ。カロヤカさんが呼び出したんだもの。」

「私ですか? アハハ。」

 召喚された伝説の生き物は、呼び出した飼い主に似るみたいだった。

「私にも腹痛がやってくる!?」

 カロヤカさんにセットされた、下痢という時限爆弾。

「一刻も早く鬼神を倒さなければ!」

「ごめん! 私、トイレ!」

「なんですと!?」

 妖精は、耐えきれずにトイレに駆け込んだ。

「ああ!? 妖精の鎧が消えていく!?」

 妖精がカロヤカさんの側から離れたからなのか、妖精の鎧が消えてしまった。

「ギャアアアアアー!?」

 妖精の鎧が外れたことにより、カロヤカさんの体の負担から激痛が走る。

「毎回、このパターンなの!? なんとかして体を鍛えなければ、死んじゃうわ!?」

 カロヤカさんは、生死の境を彷徨う。

「どうするのよ!? 鬼神は!? お腹が治るまで、あいつを野放しにするの!?」

 その時、カロヤカさんは何かに気づいた。

「あ、そうしよう。湖に誰も近づかなかったら、実害はないんだから。私も休憩できるし。ルンルルン~。」

 カロヤカさんは、鬼神を放置しようとした。

「キラーン! ギョギョギョギョギョー!」

 鬼神、人食い魚の目が光ると、魚なのに湖から陸に上がって地面を耕しながら突進してくる。

「さ、魚が陸を進んでくる!? うんな、アホな!? せめて魚に羽が生えて、空を飛ばさしてよ!? 面白ければ何でも許されると思うなよ!?」

「さすが鬼神!? 恐るべし!?」

「あんなのに衝突されたら、私の茶店が潰されちゃう!?」

 カロヤカさんたちは、初めて見る陸を進む魚に恐怖した。

「ギョギョギョギョギョー!」

 鬼神、人食い魚は、止まることなく、カロヤカさんたちのいる人魚の茶店に迫ってくる。

「何かないの!? この窮地を脱出する方法は!? ホビホビ!? あなたも異世界から来たんでしょ!? 小人の鎧とか出しなさいよ!?」

「出しても良いけど、怒るなよ。いでよ! 小人の鎧!」

 小人は、小人の鎧を出す。

「小さい!? 小っちゃい!? こんな小さくて、どうやって戦えというのよ!?」

「怒るなって言っただろう。僕の鎧は小人サイズだ。ごめんなさい。」

 小人の鎧はとても小さく、鬼神と戦うことはできなかった。

「お・・・か・・・ね・・・。」

「お・・・ん・・・な・・・。」

「に・・・ん・・・ぎょ・・・。」

「ギョギョギョギョギョー!」

 邪な人間、邪人の魂と湖の主の集合体である鬼神、人食い魚が地面を突き進んでくる。

「もう!? ダメだ!? フェアフェア!? 早く!? トイレから出てきなさいよ!?」

 コンコン。トイレから入っていますと、ノックが帰ってきた。

「う・・・う・・・う・・・。」 

 カロヤカさんにも腹痛が始まった。

「フッフッフ。」

 その時、人魚が突然笑い出した。

「こうなったら仕方がない。私の美しい人魚の鎧を貸してあげよう!」

「あるなら最初から出せ!」

「フギャ!?」

 カロヤカさんの右フックが人魚に決まった。

「それとも、こっちがいいか? ほれ、ほれ。」

 人魚は、着脱式の人魚の尻尾をカロヤカさんにチラつかせる。

「やったー! これで私もマーメード! って、なんでやねん!」

「ウギャ!?」

「カンカンカーン! KO! 勝者! 赤コーナー、カロヤカさん!」

「イエーイ!」

 カロヤカさんの左アッパーが人魚の顎にヒットする。

「い・・・いでよ・・・私の・・・鎧・・・バタ。」

 人魚は、鎧を呼び出すと力尽きた。

「なんて美しいの!? これが人魚の鎧!?」 

 カロヤカさんは、人魚の姿をしている鎧に目を奪われる。

「こい! 人魚の鎧! 私の身にまとえ!」

 カロヤカさんは、人魚の鎧を装着する。

「動きにくいから半分返すわ。」

「失礼な。」

「だってフル装備だと重いんだもん。」

 カロヤカさんは鎧の半分を人魚に返す。 

「瑞々しく力が漲ってくるわ! よし! これなら戦える!」

 カロヤカさんは、人魚の鎧の恩恵で体力を回復した。

「ねえねえ、マーマー。何か人魚の鎧には特殊能力はないの?」

「水中でも機動力が落ちないことかな。」

「それなら魚との水中戦でも互角に戦えるわね。って!? 相手、魚なのに陸に上がってるじゃない!?」

「大丈夫! 人魚の鎧は水陸両用よ。キラーン。」

 人魚の鎧は、水中の方が威力を発揮する。

「ギョギョギョギョギョー!」

 遂に鬼神、人食い魚がカロヤカさんたちの目前までやってくる。

「来るぞ! カロヤカさん!」

「カロヤカさん! 私の茶店を守って!」    

「私に任せなさい!」

 ここで「カロヤカにお任せあれ。」に続くような言い回しが入る。

「ふざけるなよ! 鬼神! 魚は水の中にいるから魚っていうんだ! 天地自然の理をなめんなよ!」 

 カロヤカさんは、自分の刀、花の刀を鞘から抜いて構える。

「うん、いい香り。」

 カロヤカさんの刀から花の香がする。

「ギョギョギョギョギョー!」

 鬼神、人食い魚がカロヤカさんに大きな口を開けて牙で襲い掛かる。

「花が香り、花が舞う! 百花繚乱! 咲き乱れろ!」

 いつの間にかできた必殺技のフレーズ。

「必殺! お花畑斬り!」

 カロヤカさんが刀を振ると無限の花が舞い、鬼神、人食い魚を切り裂いていく。

「ギョー!?」

 カロヤカさんは、鬼神、人食い魚を倒した。

「お金・・・。」

「女・・・。」

「人魚・・・さようなら。」

 鬼神に取り込まれていた邪な人間、邪人の魂が、あの世に成仏していく。

「食べる?」

「食べません! そんな気持ち悪いの食べません!」

「おろし立てで新鮮なのに。」

 カロヤカさんは、湖の主の魚を三枚におろす。

「良かった! 私の茶店は無事だ! わ~い!」

 人魚は、茶店が無事で喜んだ。 

「ああ~スッキリした! 気分爽快!」

 そこに何も知らない妖精がトイレから出てくる。

「あら? 美味しいそうな、お刺身?」

「食べる?」

「食べていいの!? いただきます! モグモグ。美味しい!」

 妖精は、美味しそうに刺身を食べた。

「この刺身は、なんていう名前の魚なの?」

「人魚の湖の主よ。」

「え!?」

 お刺身の盛り合わせの正体を聞いた妖精の時間が止まった。

「オエー!? トイレ!? トイレ!?」

 妖精は、吐き気を催して、またトイレに駆け込み籠城した。

「ああー!? ちょっと待ってよ!? 私もトイレに行きたいんだから!?」

 カロヤカさんのお腹も限界が近づいていた。

「人魚の鎧を脱がなくっちゃ。」

「待って、カロヤカさん。」

「なによ?」

「陸を行く魚が現れたということは。」

「まさか!?」

 カロヤカさんは、人魚の湖の方を見る。

「ギャオオオオオオオー!!!」

「水の中を進む鳥!?」

 湖には、新たな鬼神が現れていた。

「ウオオオオオー!? もうどうなっても知らないからな!?」

 カロヤカさんは、水の中なら誰にも見られないと覚悟を決めるのだった。

「水に咲く花を咲かせて見せましょう! 水中もお花畑斬り!」

 カロヤカさんは、鬼神、人食い鳥と戦うのであった。

「ルンルルン~。」

 カロヤカにお任せあれ。

 つづく。

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