第11話 鬼神、人食い魚

「キャッハハハ! キャッハハハ!」

 カロヤカさんは、新しい刀を振り回して遊んでいた。

「カロヤカさん!? 危ないから止めなさい!?」

「お腹が空いたから、茶店に寄って帰ろう。」

 カロヤカさんたちは人魚の湖の畔にある、人魚マーメードの茶店を目指していた。

「マーメードだから、マーマー? それともママー? はたまたマメマメ?」

「相変わらず残念なネーミングセンスだわ。」

「これさえなければ、完璧なヒロインになれるのに。もったいない。」

 カロヤカさんに、ネーミングセンスはない。

「た、助けてくれー!?」

「何かしら?」

 前方から一人の野盗が慌てた様子で駆けてくる。

「助けてくれ!? 俺は死にたくねえ!?」

「どうしたんですか?」

「ば、ば、ば、ば、化け物だ!」

「化け物?」

 よっぽど怖いものを見たのだろう、野盗は気が動転している。

「人魚の湖に、人魚を釣りに行ったら、逆に湖から大きな魚が出てきて食べられちゃったんだ!?」

「なんですって!?」

 人魚の湖に巨大魚の化け物が現れた。

「それで人魚はどうなったの!?」

「知るもんか!? 人魚どころじゃねえ!? こっちは命かながら逃げてきたんだ!? 逃げろ!? 」

 野盗は、さらに慌てて逃げて行った。

「マーマーは大丈夫かしら!? 食べられてなきゃいいけど!?」

「大きな魚って、やっぱり鬼神のことよね?」

「嫌な予感がする。カロヤカさん! 急いで人魚の湖に行こう!」

「おお!」

 カロヤカさんたちは、人魚の湖を目指す。

「仕方がない。いでよ! 妖精の鎧!」

 カロヤカさんは、妖精の鎧を呼び出す。

「あれ? 呪いの鎧は着ないんじゃなかったの?」

「私だって着たくはないけど、鎧を着た方が移動速度が速いんだもの。」

 妖精の鎧は、移動速度を3倍にしてくれる。

「妖精の鎧! 装着!」

 カロヤカさんは、妖精の鎧を身に着ける。

「全部装着すると、動きづらいのよね。これとこれ、ここもいらない。羽があれば、それでいいのよ。」

 カロヤカさんは、鎧の一部を外し始めた。

「できた! 妖精の鎧! 軽装バージョン! 」

「おお! これなら通常の5倍のスピードは出そうだ!」

「おお! これなら肩が回せる! 私の鎧って感じ! 軽やかだわ! ルンルルン~。」

 カロヤカさんは、鎧の半分を脱いだ。

「これ、返すわ。」

「要らない!?」

 カロヤカさんは、脱いだ鎧を返そうとするが、妖精に断られる。

「フェアフェア! ホビホビ! 私に捕まって! 全速力でいくわよ!」

「おお!」

「キーン!」

 風のようなカロヤカさんが走り去った後には、きれいな花の道が出来ていった。 

「あれは!?」

 カロヤカさんたちは、人魚の湖にたどり着いた。

「ブオオオオオオオー!」

 巨大な魚が湖を水面をジャンプしていた。

「お・・・金・・・金・・・。」

「女・・・若い・・・女・・・。」

「人魚・・・人魚・・・。」

 巨大な魚には、人魚を捕まえに来た邪な人間の顔が大量にあった。

「うえっ!? 気持ち悪い!?」

「そこ違うでしょ。「あれは!? 鬼神!?」って驚くところでしょ。」

「そうでした。アハハ。」

 カロヤカさんは笑って誤魔化す。

「魚が鬼神ということは、人魚さんは食べられちゃったのね!?」

「そうね。人魚イベントをやるって言ってたもんね。」

「惜しい人を、いや、惜しい人魚を亡くした。」

 カロヤカさんたちは手を合わせて、人魚の成仏を祈った。

「こらー! 勝手に殺すな!」

 そこに人魚が現れる。

「ギャア!? 出たー!? お化け!?」

「幽霊よ!? 悪霊退散!? 悪霊退散!?」

 カロヤカさんたちは、人魚の幽霊に驚く。

「ちょっと待て!? この幽霊、足があるぞ!?」

「あ、本当だ。」

 カロヤカさんたちは、人魚の足を確認する。

「だから、私は生きていると最初から言っている。」

「マーマー! 無事だったのね!」

「マーマー?」

「許してあげて、カロヤカさんにネーミングセンスはないの。」

 人魚のマーメードは、カロヤカさんにマーマーと呼ばれる。

「でも、人魚イベントをやると言っていたので心配したんだぞ?」

「実は・・・人魚イベントはやってないの。正体不明の謎の腹痛に襲われてね。」

 人魚は親指を突き立てて、やってやったぜとサインを送る。

「自爆か!?」

「自分で作った下剤入りのお茶を飲んだのね。」

「違うわよ! 私は新メニューのマーメード・ティーを試行錯誤していたのよ。試しに飲んでみたら、ピーピーでね。」

「新作にも下剤を入れたのか!?」

「違うと言っているだろうが! マーメード・ティーは、体の不純物を体の外に出す便秘解消の成分が入っていて、美容に良いのだ。だから私のお肌はスベスベで、美しいのだ! ワッハッハー!」

 人魚の新しいお茶、マーメード・ティーは完成した。

「私、飲みたい! マーメード・ティー!」

「私も飲む! マーメード・ティー!」

「毎度あり!」

「ゴクゴク。美味しい! 私は美人になる!」

「これで便秘が治るのね。嬉しい。」

 カロヤカさんと妖精は、人魚からマーメード・ティーを貰って飲むのであった。

「ちょっと待って。人魚が食べられていないということ、湖のあいつは何?」

 小人は、湖の鬼神、人食い魚を指さす。

「ああ、あれは人魚イベントが行われないから、人魚を捕まえて一攫千金や不老不死になりたいという、邪な人間たちが騒ぎだしたの。とてもうるさかったので、湖の主が怒りだしたのよ。」

「そして、邪な人間、邪人の魂と、人魚の人気に嫉妬した湖の主の巨大魚の魂が共鳴して、鬼神を生み出しちゃったのね。」

 こうして鬼神、人食い魚は誕生した。

「こうなったら、私が鬼神を倒すしかない!」

 カロヤカさんは、鬼神、人食い魚と戦う決意をする。

「湖から主がいなくなれば、名実ともに湖は私のもの! リアル人魚伝説の始まりね! 人魚ショーでガッチリ儲けるわよ!」

 人魚もカロヤカさんが鬼神を倒すことを応援している。

「ルンルルン~。」

 カロヤカにお任せあれ。

 つづく。

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