第6話 人魚の正体

「ルンルルン~。」

 カロヤカさんたちは、茶店で相席した男、大嶽丸と話をしていた。

「それにしても変わった生き物を連れていますね。妖怪ですか?」

「え? 違います。この子たちは私の友達の妖精さんと小人さんです。」

「妖精のフェアリーです。」

「小人のホビットだ。」

「外来種ですね。」

「外来種!? そう言われてみれば、そうね。」

 日本では、妖精と小人は異世界の生き物である。

「どうやら、今回の人魚も外来種のようですしね。」

「そうなんですか?」

「マーメードと言われているそうですよ。」

「マーメード!?」

 カロヤカさんは胸に心当たりがあった。

「やっぱり人魚を呼び出したのはカロヤカさんよ。」

「責任重大だな。人魚伝説を無事に収めないと。」

「どうせ私が原因です。」

 妖精と小人の言葉は、カロヤカさんの胸にグサグサ突き刺さる。

「それでは私は行きます。楽しいお茶でしたよ。お礼に良いことを教えましょう。人魚の正体は、茶店のお嬢さんですよ。」

「え!? 何ですって!?」

 カロヤカさんは、大嶽丸から人魚の正体を聞いて驚く。

「カロヤカさん。また会いましょう。」

「大嶽丸さん、さようなら。」

 大嶽丸は茶店から去って行った。

「何者だったのかしら? あの男。」

「胡散臭いな。人間ではない気がする。妖怪か何かか?」

「何言ってるの。大嶽丸さんは良い人じゃない。」

 カロヤカさんは、純粋なので大嶽丸を疑わなかった。

「さあ! 小鬼を探しに行くわよ! と言いたいところだけど!?」

「その前に、人魚伝説を解決しなくっちゃね!」

「その通り。」

「おお!? 茶店のお嬢さんが店の中に入っていくぞ。」

「行ってみましょう。」

 カロヤカさんたちは、店の中へ入っていく。

「キャアー!? 痴漢!?」

「ごめんなさい!?」

「ラッキー。」

 カロヤカさんたちが店の中へ入ると、茶店のお嬢さんが着替えをしている最中だった。

「あなたたちは何ですか!? 出て行ってください!?」

「トイレを探していまして。アハハ。」

「カロヤカさん! あれを見て!」

「ああ~!? あれは人魚の下半身!?」

 二本足の茶店のお嬢さんが、人魚の下半身を着ようとしている所だった。

「見たな~。」

「あなたが人魚になって、人間を驚かせていたのね!」

「違うわい! 私は、私は本物の人魚のマーメードだ! クスン。」

「え?」

 人魚は、カロヤカさんに詰め寄られて涙を流す。

「なに? なに? 私、泣かせるほど酷いことは言ってないわよ!?」

「何か人魚にも事情がありそうね。」

「聞いてくれるの? 聞くも涙、語るも涙の私の物語。実は・・・。」

 人魚は、カロヤカさんたちに自分の身の上話を始めた。

「私が中世ヨーロッパ風の人魚の湖で水浴びをして仲間と一緒に遊んでいたの。」

 人魚は、異世界にいた。

「すると「うわあ!?」いきなり別世界に飛ばされて、目が覚めたら、日本にやってきてました。」

 人魚は、異世界転移したのだった。

「犯人は、カロヤカさんね。」

「静かにして。」

「ギャア!? モグモグ!?」 

 カロヤカさんは、口の軽そうな妖精の口を手で防ぐ。

「右も左も分からない異界の地。家族も友達もいなくて寂しい。しかも人間は、人魚を捕まえれば高値で売れると襲い掛かってくる。日本は何て怖い国なのかしら。クスン。」

 涙を流しながら人魚は、不安な日々を過ごしていた。

「湖で魚を取って食べればいいんだけど、人魚の姿では人間に襲われてしまう。しかし私も生きていかなければいけない。そこで思いついたのが、人魚伝説です!」

 人魚は、拳を握りしめて力強く語り始める。

「人魚を釣りに来た人間に、茶店を開きお茶を売りつける! これで私の生活は安泰です! いえ! 大金持ちです! 人魚セレブ伝説!」

 人魚は、人間張りにお金持ちになることを計画を企てていた。

「同情して損した。私の心配を返せ。」

「人魚、最低。」

「おかげで良いものが見えました。」

 カロヤカさんたちは、人魚に呆れました。

「今から集客イベントで、人魚の泉で泳いでこようと、人魚に戻ろうと着替えていたの。」

 異世界から召喚された人魚の下半身の魚の部分は着脱式だった。

「いいの? 湖に人魚が出たら、人間に捕まってしまうわよ?」

「大丈夫。私の美貌で男客は、誘惑の妖術にかかっているし、女は妖術で水分を抜いてシワシワの婆にしてやるから。」

「危なかった!? 私も人魚を捕まえに行っていれば、今頃シワだらけのおばあちゃんにされていたのね。」

 恐るべき人魚の妖術。

「それに茶店のお茶には、下剤を入れているから、お茶を飲んだ人間は戦闘不能なのよね。」

「な、なに~!? 飲んじゃったじゃない!? 下剤入りのお茶!? うう!? お腹が!? ギュルルルルルル!?」

 カロヤカさんのお腹は下剤の効果が効いてきた。

「と、トイレ!? トイレはどこ!?」

「わ、私も!?」

「ぼ、僕も!?」

 妖精と小人もお腹をくだし慌てふためいた。

「ゲッ!? 大行列!?」

 トイレは、お腹を壊したお客さんで行列ができていた。

「それでは泳いできます!」

 着替えを終えた人魚は、伝説の人魚ショーのイベントに出かけた。


「大嶽丸様、よろしかったのですか? 人魚の正体を教えてしまって。」

 茶店を出た大嶽丸がお付きの者と帰路を歩いている。

「あいつらも生贄だ。鬼神とは、邪な人間の魂が生み出すもの。人魚伝説や鬼伝説に群がる欲望だらけの人間たちが、新たな鬼神を生み出すのだ。」

 大嶽丸は、鬼神の誕生秘話を語る。

「さすが大嶽丸様。そこまで先をお考えだったとは、私の知恵が及びませんでした。」

 お付きの者は、大嶽丸に感服する。

「ウウッ!? 腹が、腹が痛い!?」

 突然、大嶽丸は腹痛に襲われた。

「どうなさいました!? 大嶽丸様!?」

「私は用事がある、光秀、おまえは先に帰れ。」

「は、はい!?」

 もちろん人魚の効き目抜群の下剤の効果であった。

 カロヤカにお任せあれ。

 つづく。

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