第2話 逆襲の小鬼

「ルンルルン~。」

 花は、軽やかなステップで家に帰ろうと向かっている。

「あなた、楽しそうね。」

「おまえ、僕たちを振り落とすなよ。」

 頭に妖精を乗せて、足には小人がしがみついている。

「だって、お腹が空いたから、お母さんが料理を作っているから、家に帰って食べるのよ。私のお母さんの料理は美味しいんだから。」

 人々を襲う鬼を退治した花はお腹が空いたので、家族の待つ家に向かうのであった。

「そうだ! あなたたちの愛称を決めましょう。」

「愛称?」

 現代でいうところのニックネームである。

「そうよ。私もあなたたちに「あなた」や「おまえ」で呼ばれたくないもの。なんだか他人行儀みたいじゃない。だって、私たち友達だもの。」

「と、友達!? 私が人間と友達に。これで私もセレブの仲間入り。」

「し、仕方がない。呼び方を決めよう。別に照れてないからな。」

 人間と友達になることが、妖精や小人の間では、セレブのステータスになっていたので妖精と小人はまんざらでもなかった。

「私は、美しい妖精のフェアリーよ。」

「フェアフェア。」

「そのままかい!?」

「じゃあ、正式名称はビューティフル・フェアフェア。」

「気に入った! それにしよう!」

「略すと、フェア2。」

「略さなくていい!?」

 こうして妖精フェアリーの愛称は、フェアフェアに決まった。

「僕は、勇敢な小人のホビットだ。」

「ホビホビ。」

「こら! 小人は勇敢な戦士なんだぞ!」

「じゃあ、ドラゴン・スライム・バルキリー・ファイター・アルティメット・リーサルウェポン・デス・ホビット。」

「長すぎる!? しかも死んでるし!?」

「略すと、ホビ2。」

 こうして小人ホビットの愛称は、ホビホビに決まった。

「フェアフェアと、ホビホビか・・・残念なネーミングセンスだ。」

「実に残念な名前だ。」

 妖精と小人は、カロヤカさんに名前を付ける才能がないことを知った・

「次は、花の番ね。ニヤッ。」

「素敵な名前をつけてやるから覚悟しろ。」

「お手柔らかに。アハハ。」

 妖精と小人の復讐が始める。

「あなたの名前は、お花畑蜜子!」

「許してください!? 何でも言うこと聞きますから!?」

「おまえの名前は、ルンルルン~だ!」

「やめて!? 鼻歌ですか!? せめて誰か分かるようにしてください!? 痛い!? もう、ぶたないで!?」

 フェアフェアとホビホビは、自分の名前で遊ばれたので仕返しをする。

「あなたたちには任せておけない! 自分の名前は自分で決める! 私の愛称は、カロヤカさんです!」

「尻軽女なのね。」

「そうそう、直ぐに男についていくのよ・・・ん? 違うわい!?」

「逆に男にナンパされるぐらい、自分のことをカワイイと思っているというのか!?」

「そうなの。私って罪な女ね。」

「そこは否定しないんだ。」

「「花は、ステップが軽やかだね。花を見ていると気持ちが良くなるわ。花は、みんなを幸せにする、カロヤカさんだよ。」って、お母さんが言ってくれたの!」

「良いお母さんね。良い話過ぎて、何も言い返せない。」

「家族愛か。おまえの愛称を花花にできなかったことは残念だ。」

「お母さん! ありがとう!」

 こうして軽井沢花の愛称は、カロヤカさんの決まった。

「さあ! フェアフェア、ホビホビ。ご飯に向けて出発よ!」

「おお!」 

 カロヤカさんたちは家路を進んでいく。

「待て! お父さんの仇!」

「な、なに!? 妖怪!?」

 カロヤカさんたちが和気藹々としていると妖怪が現れた。

「お父さんを返せ!」

 現れたのは、小さな小鬼だった。

「カワイイ! あなた、私の友達にならない? ちょうど弟が欲しかったのよね。」

「さっき倒した鬼の子供かしら?」

「小人の僕ですら、まったく怖くない。」

 カロヤカさんは、小鬼の頭をナデナデするなど可愛がってあげた。

「ウエエエ~ン! 馬鹿にするな! 覚えていろよ!」

 馬鹿にされた小鬼は、涙を流しながら走って逃げて行った。

「気をつけて帰るのよ! バイバイー!」 

「鬼も小さければ可愛いのね。」

「あ、コケた。あんなんで、この乱世を生きていけるのかね?」

 去って行く小鬼を笑顔で見送るカロヤカさんたち。

「いいのかい? 簡単に小鬼を逃がしちゃって。」

「誰!? そこにいるのは!?」

 そこに、今度は木陰から大人の鬼が現れる。普通の鬼とは違って、少しこじゃれていた。

「鬼!?」

「俺の名前は酒吞童子。鬼のラスボスだ。」

 現れた鬼は酒呑童子だった。

「ちょっと!? 鬼なんだからラスボスとか言わないで、頭領とか言ってよ!」

「そういう、おまえだって「バイバイー!」とか言っているではないか!?」

「知らない。」

「ああ!? 人間のくせにとぼけた!?」

「アッカンベー!」

「また横文字を言ったではないか! ヌヌヌヌヌー!?」

 カロヤカさんも酒呑童子も一歩も引かずに睨みあっていた。

「似た者同士ね。」

「同レベルだ。」

 人間と鬼の言い争いに呆れる妖精と小人。

「いいのか? さっきの小鬼を退治しないで。」

「小鬼一匹に何ができるっていうのよ。小鬼には罪はないわ。」

「その甘さを後で後悔するがいい。ワッハッハー!」

 酒呑童子は、笑いながら暗闇に消えていった。

「なんなのよ!? いったい。」

「花、お腹空いた。早く家に帰りましょうよ。」

「ご飯が食べたいぞ。」

「私も、お腹が空いて力がでないよ。ギュル~。」

 カロヤカさんたちは、お腹が空いたので家路を急いだ。

「ルンルルン~。」

 カロヤカにお任せあれ。

 つづく。

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