ファンタジー・カロヤカさん

渋谷かな

第1話 侍デビュー 

 時は、侍が流行っている時代。

 世の中は魑魅魍魎が蠢めいていた。

 その魑魅魍魎に戦いを挑む、天下無敵の最強に強い侍がいた。

 世界を平和に導く正義の侍は伝説になる。

 伝説の侍の名前は、カロヤカ。


「あれ? ここはどこだ? 確か私はライト文芸部員だったはず?」

 一人の女の子が花畑で目覚める。

「まあ、いいっか。」

 彼女の名前は、軽井沢花。普通の16才の女の子である。

「ボケたの? さっきから独り言ばっかり。」

 彼女の目の前に羽の生えた小さな女の子が飛んでいる。

「え? ええー!? 大きな蚊!?」

 花は、小さな女の子を見て、大きな蚊が飛んでいると驚いた。

「失礼ね! 誰が蚊よ!? この美しい私はフェアリー! 妖精よ!」

 大きな蚊は、妖精のフェアリーだった。

「妖精!? どうして妖精さんが!?」

「何を言ってるの? あなたが呼び出したんでしょ!?」

「え? 私ですか?」

 花は、寝ている間の記憶を思い出してみる。

「スヤスヤ・・・スヤスヤ・・・よう・・・せい・・・なつが・・・しげきする・・・なまあし・・・みわくの・・・まーめーど。」

 花は、可愛らしい顔をしているが、寝言は独特だった。

「ああー!? 言った! 言ってる! 妖精って言ってる!?」

「でしょでしょ。」

 花は、自分が妖精を呼んでしまったことに気づいた。

「まさか!?」

 そして、花は周囲を警戒しながら見渡す。

「キョロキョロ。キョロキョロ。」

「どうしたの?」

「どこかにマーメードがいないか、探しているの!」

 確かに言った。花は妖精だけでなく、マーメードとも言っている。

「大丈夫よ。ここは花畑で水がないから。」

「なんだ。良かった。ふう~。」

 マーメードは呼んでないと安心する花。

「近くの湖にいるんじゃない?」

「ギャアー! やっぱり呼んじゃったのね!?」

 阿鼻叫喚する花。

「大丈夫よ。」

「妖精さん。」

「花、あなたは一人じゃない! 何かあったら、私たちが助けるから!」

「ありがとう。妖精さん!」

 花とフェアリーの間に友情が芽生えた。

「ん? んん? 私たち?」

 花は、フェアリーの言葉に違和感を覚えた。

「小人さんもいるわよ。」

「どうも、小人です。」

「ギャア!? 人形が喋った!?」

 花は、人形が喋って驚いた。

「出たな!? 呪いの藁人形!?」

「僕は呪いの藁人形じゃない! 小人だ! 小人のホビットだ!」

「つい日本だと小人は呪いの藁人形なのよね。アハハ。」

 花にとって、小人は呪いの藁人形に見えた。

「小人!? どうして小人さんが!?」

「何を言っているんだ? おまえが呼び出したんだろ!?」

「え? 私ですか?」

 花は、寝ている間の記憶を思い出してみる。

「こびと・・・もう・・・なもし・・・らぬ・・・だれか・・・あいしてるの。」

 花は、可愛らしい顔をしているが、寝言は独特で涎を垂らしていた。

「ああー!? まただ! また言ってる! 私が小人さんを呼び出したというのか!?」

「その通りだ。」

 花は、自分が小人を呼んでしまったことに気づいた。

「ということは!?」

 そして、花は周囲を警戒しながら見渡す。

「キョロキョロ。キョロキョロ。」

「どうした?」

「他に変な生き物を呼び出していないか、探しているのよ!」

 花は奇跡的に寝言で妖精と小人を呼び出す。あくまでも奇跡であり、そう何度も使える手ではない。

「安心して、他に変な生き物は呼び出してないから。変な。」

「ごめんなさい!? 怒らないでよ!? カワイイ妖精さん。アハハ。」

 花は、他に誰も呼び出していないと知って安堵する。

「僕もいるぞ。」

「はいはい、小人さんも。」

 世話が焼ける妖精さんと小人さんだった。

「へっへっへ。人間み~つけた。」

「お、鬼!?」

 花の前に、いきなり鬼が現れる。

「そうだ!? ここは日本だった!? 妖精さんと小人さんを見たら中世ヨーロッパかと思っちゃった。アハハ。」

「なんじゃそりゃ。」

 お花畑に鬼は似合わなかった。

「美味しそうな若い娘だ。」

「それほどでも。アハハ。」

「照れるな。褒められてない。」

「分かっているのか? おまえ、食べられるんだぞ。」

「いや~!? 食べないでください!? 美味しくありませんから!?」

 花は、やっと危険な鬼に出会ったことに気がついた。

「ああ~! 私は鬼に食べられて死んでしまうのね! お父さん、お母さん、先立つ親不孝をお許しください! 産んでくれてありがとう! 花は幸せでした!」

 花は手を合わせて、天に両親への感謝の言葉を投げかける。

「なんと悲観的な。仕方がない。私が助けてあげよう。」

「え? 助けてくれるの?」

「私を呼び出したあなたが死んだら、私も消えちゃうからね。」

「ありがとう! 妖精さん!」

 花と妖精は互いに絆を確かめ合った。

「これを使うといい。」

「これは? 刀?」

 小人さんは、花に刀を渡す。

「私が作ったの剣だ。この国では刀というのかな?」

 小人とは、剣を作るのが好きな種族らしい。

「軽い!?」

「その刀を、おまえにやろう。」

「ありがとう! 小人さん!」

 初めて握った刀は、花の手にくっつく様に馴染んだ。

「捕まえて食ってやる! お花畑を血に染めてやるぜ!」

 鬼が花に向かって突進してくる。

「かかってこい! どこからでも相手になってやる!」

 花の刀を持つ手は無意識に震えていた。

「えい。」

 小人が鬼の足を引っかける。

「ギャア!?」

 こけた鬼が地面に転がる。

「今よ!」

 妖精が花に攻撃の合図を送る。

「お父さんとお母さんの仇! 必殺! お花畑斬り!」

 花は倒れている鬼に刀を突き刺しただけである。

「ギャア!?」 

 鬼は倒された。

「やったー! 鬼を倒した! 私なんかでも鬼を倒せたんだわ!」

 花は、鬼を退治できて喜んだ。

「おめでとう!」

「ありがとう! 妖精さん! 小人さん!」

 人間の花と、妖精と小人との間に連帯感による仲間意識が芽生えた。

「あれ? あなたのお父さんとお母さんって、鬼に殺されたの?」

「両親は生きてるわよ。」

「でも、さっき「お父さんとお母さんの仇!」って、言ってたじゃない。」

「ああ~、あれはそう言った方が感情移入できて盛り上がるかなっと思ったからよ。」

「なんじゃそりゃ!?」

 花のお父さんとお母さんは無事に生きています。

「アッハッハッハ!」

 こうして花は妖精さんと小人さんと運命的な出会いを果たすのであった。

「ルンルルン~。」

 カロヤカにお任せあれ。

 つづく。

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