十円玉を拾った秋の日、お茶会があった

「友人関係を解消しましょう」

 とMが言ったのは、Bが道で十円を拾う1ヶ月前のことだった。Mの言葉を受けたBはわかったと言って頷いた。それからしばらく二人の間に交流はなかった。

 Bが道で十円を拾った日はよく晴れた秋の日だった。Bが十円を手に持ってじっと眺めたとき、携帯電話がMからの着信を告げた。

『いい紅茶が手に入ったの、お茶会をしましょう。友人じゃなくてもお茶会はするわよね』

 Bは十円をもとのところに戻し、お茶会の誘いを受けた。

 玄関先でBを出迎えたMは、ジーパンにTシャツというラフな格好であった。

「いらっしゃい、上がって」

 MとBはテーブルに座り、煎れてあった紅茶を飲み始めた。

「バイトを始めたのよ。働くっていうのもなかなかいいものね」

 Bは紅茶を飲みながら、頷く。そして、

「友達は、できた?」

 と訊いた。

「ええ、できたわ。こんな私と仲良くしてくれるなんて、奇特な人もいたものよね」

 Mはスプーンで紅茶をかき混ぜながら、あなたはどう、と訊いた。

「当分いいかな。ちょっとそういうのに疲れてしまったんだ」

 Mはカチャン、とスプーンを取り落とす。

 それに気付いているのかいないのか、Bは黙って紅茶の水面を見つめていた。

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