Zと僕とゲーム
「麻雀はできないんだ」
Zは言った。なぜ、と僕は問う。
「ルールを知らないからさ」
「なぜ 、知らないの」
「調べたが最後、納得できるまで細部に渡って調べ続けてしまうからさ。時間の無駄というやつだ」
「そっか」
きみは知っているのかい、とZ。僕はううんと言って首を横に振った。
「みんながやっているのは見るけど、自分でやろうとは思わない」
「なぜだい」
「僕は凡人だよ……いや、凡人よりもひどい。僕は人よりゲームが下手くそなんだ」
ははあ、とZは顎に手をやった。
「負けるのが嫌とみた」
「ち、違うよ」
僕はうつむく。そんな僕をZはじっと見ているらしい。
「きみはゲームが嫌いかい?」
「どこが楽しいのかわからない」
「みんなでやれば、楽しいのかもしれないよ」
「そういうZだって、どこが楽しいのかわかってるの」
さあ、と首をかしげるZ。
「ただ、みんなは楽しそうにやっているじゃないか。一人でやる電子ゲームとは違った楽しさがあるんじゃないのかい。ぼくはそう思うけどな」
そう言って、僕の手にあった携帯ゲーム機を取り上げた。
「この中に広がる世界を、きみは信じているのかな」
Zはそれを太陽にかざす。
わからない、と僕は呟いた。
「凡人だから」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます